第14話

文字数 3,978文字

☆14



 このエッセイは、「☆4」の項で一部をペーストした、僕の『成瀬川るるせ短編手帖』にいただいたレターの、変則的な返信、という意味合いも含まれている。「『成瀬川るるせ短編手帖』第92話、刺激的なテーマを取り上げておられて、とても面白く拝読しました!」とおっしゃっていただき、とても力と勇気が湧いた、という事情もある。

 許可を取る時間がないので勝手にペーストしてしまって申し訳ないのだが、
「成瀬川さんはフーコーをお読みになっているから、フェミニズム理論にも興味を持たれた感じでしょうか?
 クィア理論と言うと、ジュディス・バトラーなどが有名ですよね。
 アドリエンヌ・リッチの「強制的異性愛」と「レズビアン連続体」という用語も興味深いなぁと思っています。(言い得て妙と言うか、パワーワードですよね)
 リッチのような、シスターフッド的な理想を掲げるレズビアン・フェミニストの論者がいる一方で、成瀬川さんが本文中で書いておられるような、「反フェミニスト」に見える当事者たちがいるのは事実ですよね。
 SM・ポルノVSコミュニティ論争と言われて、フェミニズムでは昔から議論されてきたテーマですね。
 当事者の数だけ考え方の違いがあるので、LGBTQとひとくくりに語るのは無理があるなと思っています」
 ……と、いう意見をいただいたのだった。
 それに続いて、
「「オタク的記号だけで拒絶反応を起こすひと」というのは実際おられますが、多くの場合、単に絵柄の好みの問題だったりしますよね。
 カバネル の「ヴィーナスの誕生」やマネの「オランピア」は芸術に分類されますが、あれらがOKで、現代日本のポルノイラストがなぜダメなのかを理論的に説明するのは、困難を極めると思います」
 と続く。
 このレターをくれた方の、このレター内での結論部では、
「ポルノアニメを規制すべきかどうかというテーマは、わたしも以前考えたことがありますよ。
 生身の人間が演じるポルノと違い、現実に加害者も被害者もいないポルノアニメの場合は、フェミニズム(被写体の人権)の問題ではなく、自由の問題(観る自由、愚行権)なのかなとわたしは思っています。
 アメリカでは、コムストック法というポルノ雑誌規制法があった時代がありました。当時は産婦人科の医学書も「猥雑物」とみなされ、規制されて違反すると処罰される対象でした。
 コムストック法の背景には、「性的不品行や不道徳を排して、健康で道徳的な国民を育てるべき」といった、国家的パターナリズムがあると言えますね。
 同様に、売春や同性愛を法律で規制すべきかどうかを議論した、イギリスの哲学者ハートと裁判官デヴリンの論争も有名ですね。
 都の有害図書条例も意図するところは同じなので、モラル(私的な道徳/不道徳)の問題にどこまで国家が干渉するのかは、パターナリズムと自由のせめぎあいだなと思います。
2024/06/05 00:26」
 と書かれていている。
 この帰結部分は、僕がこのエッセイの「☆4」にペーストした内容の、割愛した「前半部」にかかっている。

 前の「☆4」ではペーストしなかったので、このレターの「成瀬川さんが本文中で書いておられるような、「反フェミニスト」に見える当事者たちがいるのは事実」がなにを指すかこのわからないと思うので、僕のその投稿(『成瀬川るるせ短編手帖』第92話、の「前半部」)も、ペーストしておきたい。


   **********


 第92話 僕はコミティア同人や美少女ゲームつくるお姉さんを支持する【増補】

 NOVELDAYSで僕はチャットノベル『早退届』第503話 美少女ゲームメーカーの会社員は女性の割合が高い、を更新した。ちょっと、その内容について語り直したい。

 僕は美少女ゲームメーカーの会社が普通に勤務時間のときに、なかに入ってゲームメーカーの社長と一時間、がっつり話をしたことがあり、その待ち時間にオフィスを観ていたりやりとりもしたからわかるけど、美少女ゲームの会社の社員はほぼほぼ女性で、いわゆる〈女の職場〉なんである。普通のひとがイメージしている美少女ゲームの職場(キモい男がうじゃうじゃいそう)とはだいぶ違う。それに、普通の会社の事務所よりとても華やいでいた。とても素敵な職場であった。

 この回の『早退届』はどうして書いたかというと、「美少女ゲーム」のゲーム会社は女性がとても活躍出来る職場だし雇用機会均等っていうならかなり進んでいる業界であるのだが、知られていなくて仕方なく書いたのであった。書くとさらに混乱を招く可能性があり、それは避けたいから書きたくなかったのだが、仕方なし。
 そもそも、僕はコミティアでも同人誌描いている女性の、美少女ゲームの原画家さんのイラストを中心にTwitterでRTするので、その理由が何故だかわからないだろうし「助平心だけの人間」だからだろうという、確かに僕は助平ですけど、そうじゃなくて、それだったらRTなんかしないで個人だけで鑑賞するよ、ということで、それにはちゃんと〈理由〉があるので、それを書いたことが今回の『早退届』の話につながるのである。

 あらためてTwitterXから抜粋しよう。


成瀬川るるせ【小説アカウント】
@rulerse
(昔の話だが)流通センターのコンビニに行くとき例によってダサいダサい言われしにそうなとき別の建物でコミティアやっててそこから来たお姉さんたちがダサくないよ格好いいよと慰めてくれたので僕はXでコミティアで裸の女の子描く女性絵師さんたちのイラストをリポストするんです。経緯はそういうことです。
午後8:55 · 2024年6月3日


 このツイート(ポスト)にある、流通センターとは東京都の倉庫街で、全国にある靴屋の「靴流通センター」ではないので注意だ。
 流通センターで文学フリマ(文学的なものの一次創作同人誌即売会)が行われて、そこでボコボコにされたときに声をかけてくれて、死にそうな僕を慰めてくれたのが同日、隣でやっていたコミティア(萌え系一次創作同人誌即売会)のお姉さんだった、という話なのである。これはこれで書くと敵(特に男性)を増やしそうなのでもちろん書かないで黙っていた方がいいのだが、書くしかなかった。そういう経緯があり、僕はコミティアや美少女ゲームのお姉さんの描いた絵をリツイートするのである。男性クリエイターの絵も、もちろんRTすることもあるが、ややこしいのでお姉さんのエピソードだけTwitterXに書くにとどめた。

 女性が男性向けのえっちぃ絵を描くカルチャーがあるの、未だ知られていないところがある。そして、男性向けとは言うけど、男性向けは受け手(読者、ユーザー)も女性が占める割合が高いの、知られていない。僕は現実の人間関係でも、だいぶ男性向けの美少女ゲームユーザーの女性たちと出会ってきたので、僕の妄想ではないのを付け加えよう。

 僕は「裸の女の子を描く女性絵師さんたちのイラスト」をリツイート(リポスト)する。
 基本的には女性が描いた女性をリツイートしていて、一部のひと(特に、認知バイアスがかかってしまって、たとえフェミニズムの本やクィア理論を読んでいたとしてもオタク的記号だけで拒絶反応を起こすひと)は、男性ではなく女性が、男性が観て可愛い女の子のイラスト、それもえっちなイラストを描いている、というのを知らないで批判する。批判の論拠が「これはキモい男性が描いたイラストである」っていう決めつけであることが異様に多い。辟易する。



   **********


 引用、抜粋を一気にすればよかったのに飛び飛びになってすまない。また、僕のこんな文章に、いただいた大切な、素敵なレターを引用して使用してしまって僕は申し訳ない気持ちでいっぱいです。すみません、しかし許してください。

 ……東京都で有害図書指定されると、例えばKindleを更新したときにデータが抹消されるので、あとにはなにも残らない。形跡がなにも残らない。作者側や筆者側からすれば「なかったことにされる」「人物もいなかったことにされる」のである。これは怖い。
 いただいたレターにある「都の有害図書条例も意図するところは同じなので、モラル(私的な道徳/不道徳)の問題にどこまで国家が干渉するのかは、パターナリズムと自由のせめぎあいだなと思います」の、この全国にある有害図書条例のなかで特に「東京都の条例で有害判定をされる」と、著者の存在もそのひとが書いたということも抹消されるのである、一瞬で。ちょっとあたまを巡らせないとこの「消される」のがどのくらいの干渉であるかはわからないと思う。逆を言えば、たぶん、ひとりひとりが〈薄い理解〉または〈なんとなくよくわからないまま〉で賛成してしまっている可能性が高い。

 このレターはそういう意味でも物凄い問題提起をして終わるのだが、今回は正面からはその問題は扱わない。
 関係なさそうだが、実はKindleの規定で「美少女」という「単語」を小説の説明文にKindleの作家が入れることは出来なかったはずである。ある作家の話だが、「美少女」と説明に入力したら「訂正しろ」と言ってきて、そのままでは出版出来なかったことがあるらしい。電子書籍とダイレクトパブリッシングでは使用できない言葉は変わるし時の流れで変わるので、そういうことがあった、というだけの話である。
 なので、美少女をはじめとしてKindleの規定に反した言葉を文中に入れていて、そのうえで「教育に悪い」、言い換えると「モラル(私的な道徳/不道徳)」の問題に素人考えの徒手空拳でぶっ込んでいく僕のスタイルは、このままでは問題を複数抱えている状態に違いない。

 が、話が逸れすぎるので、戻していこう。


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