第1話 第一章 概論

文字数 1,402文字

 この文章は死ぬ前にどうしても語らねばならいことの一端を、なんとかかたちにしようと試みたエッセイになる予定だ。
 先だって構想メモをつくったのだが、自分の手首をナイフで切るくらいの痛みがメモ段階ですでに発生し、こころは血ににじんでいる。
 でも、こういう機会がないと、僕はたぶん、胸にしまったまま、死ぬことになるだろう、本当は話さなければならないことの数々を。
 とはいえ、名誉毀損だの誹謗中傷だの言われない程度には手法を考えて書くし、「まだ書く時期ではない」ことは書かない。じゃあ、「書ける時期」ってのが存在するのかということに関しては、「書いてそれが信用される時期になった」ということは往々にしてあるし、書いた文章が信用されない、「時機が熟していない」こともまた、よくある。
 具体的にはどういうことかは、徐々に触れていくことになるだろう。

 この作品、現段階ではタイトル案は『眠れないのは誰のせい』となっている。安心して眠れない、その蓄積されて肥大化していく「ひとには話せない内容」をこれから語っていくことになる。「出落ち」と呼ばれるかもしれないが、眠れないのは「自分のせい」であり、他人のせいではない。だから、この文章は本当は他人への攻撃ではない。だが、様々な他者への攻撃に思えるかもしれない。
 内容はあっちこっち跳びながら書いていくので、テーマに沿って書いていくつもりだが、ひとによっては断章形式の亜種のように感じて読みにくさがあるかもしれない。
 だけど、ひとつの作品としてパッケージングをするには、ぶつ切りにしてでも「それっぽく」まとめるしかなかったんだ、という僕のわがままに付き合っていただけるとありがたい。


 現在の僕の「身体」の話を、先に触れておいた方がいいように思われるので、しよう。


 実は最近、手足の震えが酷くなって、なにもしないで座っていると本当にガクガク震えてしまうときが多い。
 投薬を二十数年間続けており、今、一日二十錠近く精神薬を投与されていて、その関係だと思う。病人の大半は病気だからガクガク震えているとは一概に言えなくて、副作用でそうなってしまっている、というパターンは病棟などでよく観てきた。精神を保つはずの処方薬がひとの身体をダメにして生活を出来なくさせて一生檻の中に閉じ込められるパターンだ。
 治すはずの投薬により社会生活が出来なくなることはよくあることなのだ。
 一度に処方できる薬の種類には法律により限度があり震え止めが出せず、また震え止めの薬自体が僕には効かないこともあり、震えを止めるために、医者と相談してやっと減薬が始まった。
 が、一錠ですら処方薬を減らし慣れるまでは、精神的危機に直面する事実はあまり知られていない。

 僕はここのところ、事務仕事で座っているだけで足がガタガタ震えて、外を歩くとすべてに敵意があるように見えるという誇大妄想に近い状態にもなっている。
 そんななかで小説で〈成功〉する〈明るい未来〉という名前の〈保身〉は、ある程度やめたほうがよく思えたのは事実で、それが僕を今回、このエッセイを書くことに向かわせている。保身を考えず、書きたいことを書きたい。タイムリミットを予感して、駆り立てられている。

 内容についてだが、このエッセイは、僕の〈性〉にも、かなりスポットをあてている。
 不愉快な話題が多いだろうことも予測されるが、お付き合い願えると嬉しい。


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