eスポーツ法務その2「著作物の利用についての許諾の要否」

文字数 1,596文字

前回の投稿に続いて、
eスポーツに関連する法律に関する見解ブログ。

今回は、前回の営業許可の話に続いて、
今回は著作権についての議論。

以下の議論は下記の論考を抜粋。
高木智宏=松本祐輝「著作権を含むeスポーツの法的課題の論点整理」
(パテント2020, Vol. 73, No.9, p.33-p.40)
なお、当ブログでは、ゲームをプレイすることに焦点を当てて、議論を行う。

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① e スポーツビジネスにおいては,ゲームをプレイさせる,大会を開催する,映像を配信するといったように様々な形で著作物たるゲームを利用することになる

② 現在では、ゲームを動作させるプログラム自体はプログラムの著作物として,ユーザーがゲームをプレイする際に画面に表示される映像は映画の著作物として保護されるとの見解が,実務上確立されている。

③ e スポーツタイトルの利用形態が「ゲームのプレイ」である場合、私的利用の範囲においては
著作権を侵害しない。

④ ゲームのプレイの法的な評価
 著作権者は,その著作物を公に上映する権利を占有する(上映権:著作権法 22 条の 2)。ここでいう上映とは,著作物を映写幕その他の物に映写することをいい,「公に」とは,公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とすることをいう(著作権法 22 条)。
 ゲームにおいては,ディスプレイを用いてゲーム映像を表示させることが上映に当たると解される。もっとも,ゲームを購入したユーザーが個人で楽しむためにゲームをディスプレイに表示してプレイする場合には,公衆に直接見せることはなく,「公に」の要件を満たさないことから,ゲームメーカの上映権は侵害しないと考えられる。

⑤ (・・・中略・・・)近年は,日本でも,e スポーツカフェといった業態で,ゲーミング PC 等を設置してゲームをプレイさせる,e スポーツのためのコミュニティスペース・ジムのような施設の営業が拡大している。
 このような業態においては,営業者が用意した機器を用いて,不特定多数の来場客がゲームをプレイするものであるが,営業者が不特定多数の来場客に対してゲームをプレイさせていると判断される場合には,「公衆に対して見せ」ることを目的として上映しているものとして,上映権の侵害に当たる可能性がある。

⑥ 家庭用ゲーム機及びゲームソフトの著作権保護を行う一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会は,自らのウェブサイト等において,顧客がゲームソフトを持ち込まない形でゲームをプレイさせる形態の営業行為に対しては,上映権の侵害行為に該当するものとして告発する旨を表明している。
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上記①~⑥の指摘を総合すると、
オンラインゲーム等をダウンロードしたPCを店舗等におき、
来場者に料金を支払った対価としてゲームをプレイさせる(=業としてプレイさせる)場合は、
原則どおり、著作権者(ゲームメーカ)に無断で利用することはできず、
ゲームメーカから、ゲームの利用について利用許諾を得る必要がある、
と判断することになる。

なお、インターネットカフェ等の業界団体では、
加入団体が営業する店舗におけるゲームソフトの利用について、
すでに著作権者から包括的に利用許諾を取得する取組みを進めているとのことだが、
新興のeスポーツカフェでは、そこまでの取り組みは進んでいない模様。

ただ、今後の議論次第では、
eスポーツにおけるオンラインゲーム等の業としての利用についても、
規制が厳しくなることも考えられるため、
今後、ビジネスを考えている事業者は一層この点に留意する必要があると考えている。
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