橿原由貴子(4)
文字数 1,911文字
耀子先輩……。
先輩が言った「う~ん、やっぱり無理だったわね」って、どう云う意味なんだ?!
耀子先輩は、僕の心の疑問に答える。
「幸四郎だって、言ってたじゃない? 『手加減して生きてくなんて、面白くも何ともない』って……」
でも、そうじゃないですよ!
無理だと、どうだと言うんです!!
「由貴子、学校は諦めるしかないわね」
耀子先輩は由貴子に冷たく言い放つ。しかし、そんなの認められない!
「先輩、そんなの身勝手じゃないですか! 『学校に行け』と言ったり、『行くのを止めろ』と言ったり……」
「ええ、幸四郎の言う通りよ。でも、だったら、どうしたら良い?」
そうなのだ……。
身勝手は分かっている。
「学校に行け」と言ったのは、耀子先輩だけじゃない、僕だってそうだ。その僕も『学校は行けない』と言っているのだ。
身勝手なのは僕もだ……。
でも、どうにも出来ない……。
「残念だけど、由貴子。矢張り、貴女は人間としては生きられないわ」
「……」
「その代わり、私のオリジナル能力をあげる。私の力があれば、取り敢えず、由貴子は悪い人間に負けることはなくなるわ。強敵の位置も分かるし、罠があっても、その罠の場所も種類も分かるから……」
「おばさんの?」
「あなたが大人になって、自制心がついたら、私の全ての力をあげる。魔法も教えてあげるわ。そうなったら、由貴子は殆ど無敵よ。貴女に勝てるのは、修君か有希ちゃん位なものでしょうね……」
由貴子は何も答えなかった。
由貴子がそれを喜んでいるのか、将又、悲しんでいるのか、それすらも僕には読むことは出来ない……。
由貴子は、結局、元の山に戻り、そこで暮らすことに決まった……。
山までは、耀子先輩の車で送ることとなり、由貴子の見送りには、僕と染ノ助君が同行する。この為、甘樫夫妻や一つ目鴉とのお別れは、家を出る処で行わることとなった。
甘樫さんは黙って涙ぐんでいただけだったが、奥さんは由貴子の手を両手で固く握って、別れを惜しんでいる。
「由貴子ちゃん、ごめんね。子供を小学校に行かせないと、先生、虐待してると疑われちゃうのよ……」
「おばあちゃん、ありがとう……。大丈夫だよ。心配しないで……」
一つ目鴉は少し離れた枝に留まり、クールに決めていた。
「じゃあな、元気でやれよ……」
だが、止めておけ、お前が何を言っても、由貴子は読心術で、お前がどう思っているか全部読んでんだからな……。
「うん、鴉も元気でね……」
ドライブは無言で葬式のようだった。
無言で目を閉じていた為か、僕はまた座席で寝てしまう。起きた時、隣の由貴子は起きていたのだが、助手席の染ノ助君も寝ていたので、まぁ勘弁して貰おう。
そして、今度は、崖の所まで昇らず、車を降りた場所で僕らは由貴子との別れの言葉を交わすこととなった。
耀子先輩は不思議なマジックで、少女の幻覚を作り出す。彼女はそれを『思い出』と呼んでいた。
先輩は『思い出』の少女を紹介する。
「私の小さい頃の思い出よ……。この娘の能力なら、貴女が扱うに丁度良いわ……。
さ、この琰を『思い出』の額に宛てて、この娘の力をコピーしなさい……」
そして、由貴子に水晶玉を手渡した。
由貴子は言われた通り、『思い出』の少女の額に水晶玉を宛がう。すると、『思い出』の少女と水晶玉が一瞬光り、由貴子が水晶玉を離すと、光は治まった。
突然、由貴子が苦しみだし、道の脇の茂みの中に嘔吐しに行く。
「フフフフフフ」
耀子先輩は笑っている。耀子先輩は一体何をしたんだ?!
「これが今の貴女と私の差よ。だから、私への警戒心は解きなさい。私を敵と考えていると、脅威が無くならないわよ。
感じるでしょう? 外にも沢山ある、強い脅威を……。今は自分より強いものからは逃げなせい。そう云う経験が、最強になった時に、絶対生きてくるから……」
先輩から能力を貰った由貴子は、兄代わりの染ノ助君と……、そして、父親代わりの僕と、別れの挨拶を交わす。
染ノ助君は由貴子の手を握って、涙ぐんでいた。それにしても不思議なものだ。僕たちは、ほんの数日間しか一緒にいなかったと云うのに……。
そして、最後に僕の番。
染ノ助君に『涙の別れ』をされてしまったので、同じことは、しにくいなぁ……。
「パパ、ありがとね……」
由貴子はそう言った……。
一つ目鴉の様に、クールに決める筈だったのに、完全に染ノ助君と行動がかぶってしまった。おまけに、由貴子に言葉のひとつも掛けられないなんて……。父親として、あまりにも情けない……。
こうして、由貴子は山に戻った。
由貴子は、妖怪『覚 』として、人から恐れられて生きて行くのだろう。
攫 や山童 、山
先輩が言った「う~ん、やっぱり無理だったわね」って、どう云う意味なんだ?!
耀子先輩は、僕の心の疑問に答える。
「幸四郎だって、言ってたじゃない? 『手加減して生きてくなんて、面白くも何ともない』って……」
でも、そうじゃないですよ!
無理だと、どうだと言うんです!!
「由貴子、学校は諦めるしかないわね」
耀子先輩は由貴子に冷たく言い放つ。しかし、そんなの認められない!
「先輩、そんなの身勝手じゃないですか! 『学校に行け』と言ったり、『行くのを止めろ』と言ったり……」
「ええ、幸四郎の言う通りよ。でも、だったら、どうしたら良い?」
そうなのだ……。
身勝手は分かっている。
「学校に行け」と言ったのは、耀子先輩だけじゃない、僕だってそうだ。その僕も『学校は行けない』と言っているのだ。
身勝手なのは僕もだ……。
でも、どうにも出来ない……。
「残念だけど、由貴子。矢張り、貴女は人間としては生きられないわ」
「……」
「その代わり、私のオリジナル能力をあげる。私の力があれば、取り敢えず、由貴子は悪い人間に負けることはなくなるわ。強敵の位置も分かるし、罠があっても、その罠の場所も種類も分かるから……」
「おばさんの?」
「あなたが大人になって、自制心がついたら、私の全ての力をあげる。魔法も教えてあげるわ。そうなったら、由貴子は殆ど無敵よ。貴女に勝てるのは、修君か有希ちゃん位なものでしょうね……」
由貴子は何も答えなかった。
由貴子がそれを喜んでいるのか、将又、悲しんでいるのか、それすらも僕には読むことは出来ない……。
由貴子は、結局、元の山に戻り、そこで暮らすことに決まった……。
山までは、耀子先輩の車で送ることとなり、由貴子の見送りには、僕と染ノ助君が同行する。この為、甘樫夫妻や一つ目鴉とのお別れは、家を出る処で行わることとなった。
甘樫さんは黙って涙ぐんでいただけだったが、奥さんは由貴子の手を両手で固く握って、別れを惜しんでいる。
「由貴子ちゃん、ごめんね。子供を小学校に行かせないと、先生、虐待してると疑われちゃうのよ……」
「おばあちゃん、ありがとう……。大丈夫だよ。心配しないで……」
一つ目鴉は少し離れた枝に留まり、クールに決めていた。
「じゃあな、元気でやれよ……」
だが、止めておけ、お前が何を言っても、由貴子は読心術で、お前がどう思っているか全部読んでんだからな……。
「うん、鴉も元気でね……」
ドライブは無言で葬式のようだった。
無言で目を閉じていた為か、僕はまた座席で寝てしまう。起きた時、隣の由貴子は起きていたのだが、助手席の染ノ助君も寝ていたので、まぁ勘弁して貰おう。
そして、今度は、崖の所まで昇らず、車を降りた場所で僕らは由貴子との別れの言葉を交わすこととなった。
耀子先輩は不思議なマジックで、少女の幻覚を作り出す。彼女はそれを『思い出』と呼んでいた。
先輩は『思い出』の少女を紹介する。
「私の小さい頃の思い出よ……。この娘の能力なら、貴女が扱うに丁度良いわ……。
さ、この琰を『思い出』の額に宛てて、この娘の力をコピーしなさい……」
そして、由貴子に水晶玉を手渡した。
由貴子は言われた通り、『思い出』の少女の額に水晶玉を宛がう。すると、『思い出』の少女と水晶玉が一瞬光り、由貴子が水晶玉を離すと、光は治まった。
突然、由貴子が苦しみだし、道の脇の茂みの中に嘔吐しに行く。
「フフフフフフ」
耀子先輩は笑っている。耀子先輩は一体何をしたんだ?!
「これが今の貴女と私の差よ。だから、私への警戒心は解きなさい。私を敵と考えていると、脅威が無くならないわよ。
感じるでしょう? 外にも沢山ある、強い脅威を……。今は自分より強いものからは逃げなせい。そう云う経験が、最強になった時に、絶対生きてくるから……」
先輩から能力を貰った由貴子は、兄代わりの染ノ助君と……、そして、父親代わりの僕と、別れの挨拶を交わす。
染ノ助君は由貴子の手を握って、涙ぐんでいた。それにしても不思議なものだ。僕たちは、ほんの数日間しか一緒にいなかったと云うのに……。
そして、最後に僕の番。
染ノ助君に『涙の別れ』をされてしまったので、同じことは、しにくいなぁ……。
「パパ、ありがとね……」
由貴子はそう言った……。
一つ目鴉の様に、クールに決める筈だったのに、完全に染ノ助君と行動がかぶってしまった。おまけに、由貴子に言葉のひとつも掛けられないなんて……。父親として、あまりにも情けない……。
こうして、由貴子は山に戻った。
由貴子は、妖怪『