覚の住む山(3)
文字数 1,900文字
少女は先ず染ノ助君に襲い掛かる。
だが、その2人の間に瞬間移動でもしたかの如く、一瞬で耀子先輩は移動し、少女が振り上げた両手の手首を掴んで少女の動きを封じた。
早い!!
助かった染ノ助君は、腰を抜かして尻餅を搗いた。その染ノ助君の身体は、僕は先輩が少女を抑えている隙に、2人から離れた場所まで引き摺って移動させる。
「おばさん、だれ? なんで、生気が吸い取れないの?」
あ、先輩に「小母さん」なんて言ったら、子供でも只じゃ済まないぞ……。
と思ったら意外と怒っていない。
「だって、本当に叔母さんなんだもん。仕方ないのよ……」
耀子先輩は相手の動きを封じながら、僕の心の疑問に答えてくれる。
でも、「本当におばさん」って、どう云う意味なんだ?
少女は、力ずくで手を外そうと両手を動かす。だが、所詮は小さな女の子。そんなんで先輩の掴んだ手を振りきれるもんじゃない。
「それに、おばさん、なんで、おばさんの心が読めないの? なんで、ずっと歌を歌っているの?」
「貴女 の能力は相手の心を読むこと。でも、表面的な、口に出さずに喋ったことをただ聴くだけ。だから、心の中で歌を歌うと、其方 ばかりが聴こえてきて、心の声を上手く聴くことが出来なくなる……」
少女は自分の能力を封じる方法を示されたので、癇癪を起こし一層激しく暴れだす。
「それも駄目……。力は私の方が強いし、スピードも遥かに速い。貴女 が石を持って私を叩いても、私なら石より硬くなれる……」
そして、耀子先輩は少女の腕を前で交差させ、自分の位置を少女の背に来る様に移動させる。
「歌なんか歌わなくても、貴女 の能力は前方45度圏内だけ……。こうすれば、心を読むことも出来ない」
少女は足をバタバタさせ、何とか脱出しようと試みる。だが、どう見ても逃げ出せそうにない。と言うか、何か、耀子先輩が駄々を捏ねる娘をあやす母親の様に見えてきた。
それにしても、先輩が叔母さんってことは、この子、先輩の姪ってことなのか?
だが、先輩の兄弟は鉄男さんだけの筈。そして、鉄男さんの子供は二十歳 近いお嬢さん1人の筈だ。じゃ、この子は一体?
ま、まさか……!
鉄男さんとシラヌイちゃんの子供……?!
「違うわよ……。この子は兄の子の有希ちゃんよ。と言っても、有希ちゃんの劣化版だけどね……」
「劣化版?」
「私たちって人間離れした再生力があるでしょう? その上で金丹って薬を飲むと、プラナリアレベルの再生力になるのよ。いいえ、もう、プラナリアだって敵わない。だって、再生速度は化け物並みよ」
「???」
「そんな状態で腕とかを斬られると、直ぐ再生して困らないんだけど、問題は斬られた方の腕なのよ。幸四郎はプラナリアって見たことある?」
「プラナリア?」
「頭だけじゃなくて、足の方も再生するのよ1個の生物に……」
ま、まさか……。
ユキンコと名乗った少女は暴れ続けている。だが、逃げられそうには見えない。
「分かったでしょう?貴女 は私に敵わないのよ。先ずそれを納得しなさい!」
先輩は、ユキンコ少女に対し、そう恫喝する。だが、少女はそれに脅えはしなかった。
「皆 、助けて!」
ユキンコ少女の声に、毛むくじゃらの猿の様な奴らが何十匹と現れる。だが、日本猿より遥かに手足が長く、サイズも人間並みだし、顔も何か変な感じだ。
「成程、狒々の類……。有希の身体だけでなく、こいつらの一匹が有希の一部と合成した半妖怪と言う訳だったのね……。
それで、人の死を予見する能力や、それを人に与えるなんてことが出来たのか……」
なんだか、先輩は、また訳の分からないことを言っている。
だが、それよりも、神津さん……、いや、神津の奴が麓の方に逃げていく。あいつを捕まえなくては……。
しかし、先輩は少女を抑えて両手が使えない。その状態で化け物猿と戦わなくてはならないのだ。
「そうね……。この子も仲間を呼び出したんだから、私もここは召喚魔法でも使って、強力な召喚獣でも呼び出しましょうか……」
耀子先輩はブツブツと、何やら呪文の様な言葉を呟いている。確かに先輩は西洋の呪術にも詳しく、召喚魔法くらい使えても不思議ではない。だが、先輩はどんな召喚獣を呼び出そうと云うのだろうか?
召喚獣バ○ムートか? それとも、召喚獣リバ◯アサンか?
「我が呼び出しに応えよ。サモン、召喚獣ユッキー!!」
その魔法に応えて召喚されたのは、カジュアルな服装の1人の若い女性……。
それ以上の突っ込み所は、右手にスプーン、左手に皿を持っていることだ。皿の中身は定番のカレーライスらしい。それも半分食べかけの……。
「もう……、誰が召喚獣ユッキーよ!!」
だが、その2人の間に瞬間移動でもしたかの如く、一瞬で耀子先輩は移動し、少女が振り上げた両手の手首を掴んで少女の動きを封じた。
早い!!
助かった染ノ助君は、腰を抜かして尻餅を搗いた。その染ノ助君の身体は、僕は先輩が少女を抑えている隙に、2人から離れた場所まで引き摺って移動させる。
「おばさん、だれ? なんで、生気が吸い取れないの?」
あ、先輩に「小母さん」なんて言ったら、子供でも只じゃ済まないぞ……。
と思ったら意外と怒っていない。
「だって、本当に叔母さんなんだもん。仕方ないのよ……」
耀子先輩は相手の動きを封じながら、僕の心の疑問に答えてくれる。
でも、「本当におばさん」って、どう云う意味なんだ?
少女は、力ずくで手を外そうと両手を動かす。だが、所詮は小さな女の子。そんなんで先輩の掴んだ手を振りきれるもんじゃない。
「それに、おばさん、なんで、おばさんの心が読めないの? なんで、ずっと歌を歌っているの?」
「
少女は自分の能力を封じる方法を示されたので、癇癪を起こし一層激しく暴れだす。
「それも駄目……。力は私の方が強いし、スピードも遥かに速い。
そして、耀子先輩は少女の腕を前で交差させ、自分の位置を少女の背に来る様に移動させる。
「歌なんか歌わなくても、
少女は足をバタバタさせ、何とか脱出しようと試みる。だが、どう見ても逃げ出せそうにない。と言うか、何か、耀子先輩が駄々を捏ねる娘をあやす母親の様に見えてきた。
それにしても、先輩が叔母さんってことは、この子、先輩の姪ってことなのか?
だが、先輩の兄弟は鉄男さんだけの筈。そして、鉄男さんの子供は
ま、まさか……!
鉄男さんとシラヌイちゃんの子供……?!
「違うわよ……。この子は兄の子の有希ちゃんよ。と言っても、有希ちゃんの劣化版だけどね……」
「劣化版?」
「私たちって人間離れした再生力があるでしょう? その上で金丹って薬を飲むと、プラナリアレベルの再生力になるのよ。いいえ、もう、プラナリアだって敵わない。だって、再生速度は化け物並みよ」
「???」
「そんな状態で腕とかを斬られると、直ぐ再生して困らないんだけど、問題は斬られた方の腕なのよ。幸四郎はプラナリアって見たことある?」
「プラナリア?」
「頭だけじゃなくて、足の方も再生するのよ1個の生物に……」
ま、まさか……。
ユキンコと名乗った少女は暴れ続けている。だが、逃げられそうには見えない。
「分かったでしょう?
先輩は、ユキンコ少女に対し、そう恫喝する。だが、少女はそれに脅えはしなかった。
「
ユキンコ少女の声に、毛むくじゃらの猿の様な奴らが何十匹と現れる。だが、日本猿より遥かに手足が長く、サイズも人間並みだし、顔も何か変な感じだ。
「成程、狒々の類……。有希の身体だけでなく、こいつらの一匹が有希の一部と合成した半妖怪と言う訳だったのね……。
それで、人の死を予見する能力や、それを人に与えるなんてことが出来たのか……」
なんだか、先輩は、また訳の分からないことを言っている。
だが、それよりも、神津さん……、いや、神津の奴が麓の方に逃げていく。あいつを捕まえなくては……。
しかし、先輩は少女を抑えて両手が使えない。その状態で化け物猿と戦わなくてはならないのだ。
「そうね……。この子も仲間を呼び出したんだから、私もここは召喚魔法でも使って、強力な召喚獣でも呼び出しましょうか……」
耀子先輩はブツブツと、何やら呪文の様な言葉を呟いている。確かに先輩は西洋の呪術にも詳しく、召喚魔法くらい使えても不思議ではない。だが、先輩はどんな召喚獣を呼び出そうと云うのだろうか?
召喚獣バ○ムートか? それとも、召喚獣リバ◯アサンか?
「我が呼び出しに応えよ。サモン、召喚獣ユッキー!!」
その魔法に応えて召喚されたのは、カジュアルな服装の1人の若い女性……。
それ以上の突っ込み所は、右手にスプーン、左手に皿を持っていることだ。皿の中身は定番のカレーライスらしい。それも半分食べかけの……。
「もう……、誰が召喚獣ユッキーよ!!」