怪しい迷い家(1)
文字数 1,697文字
僕たち9人は、何一つ纏わぬ姿で深夜の山中に取り残された。
これが露天風呂ならば、あくまで旅館の敷地内であり、管理されていない山中に見せていても、結局、そこは整備された箱庭の中の一画に過ぎない。
だが、今、ここが本当に旅館の敷地内である保証はない。寧ろ、降って行った山道の感じからして、ここが未整備の山中である可能性の方が高いと考えて間違いないだろう。
となると、柵やネットなどの設備は期待できないだろうから、熊や猪などの野生動物に襲われる危険もゼロではない。そして、それ以上に恐ろしいのが虫などの攻撃だ。
カやダニなどの昆虫や、ヤマビルなどの吸血生物。蛇やツチハンミョウなどの有毒生物。それに、ここは異世界かも知れない。だとすると、僕たちの知らない危険生物が存在したとしても不思議なことではないのだ。
僕はひとつ、提案をする。
「取り敢えず、火を起こしましょう。少なくとも、それで野生動物は近付かない筈だし、それを見た誰かが、助けに来てくれるかも知れないですから……」
「コーシロー、どうやって火を起こすの? 私たち、道具も何も持っていないのよ……」
藤沢さんの言う通りだ……。
いつもの耀子先輩なら、不思議な手品や超能力で、こんな時でも何とかしてくれるのだが、今はそれが出来ないらしい……。
「あそこに灯りが見えます……」
え~と……、彼女は……、アルキュオネさんだったかな……? 短髪の彼女が、山の上の方を指してそう言った。
ウン、確かに、オレンジの淡い光が、時に明るく時に暗く輝いているのが見える。
「ターユゲテー、確かに光は見えるけど、星の瞬きじゃないかしら? あるいは、梟など、野生動物の眼が光っているとか……」
彼女はターユゲテーさんだった……。
「でも、アナト。このまま、こうしている訳にも行かないわ……」
「こう云う時、下手に動くのが一番危険な行為よ。ここは、朝が来るまで、ここで待つべきだわ」
「でも、今は月が出ているから明るいけど、月が沈んだら、ここだって、真っ暗になっちゃうわよ」
ターユゲテーさんの指摘に、一堂は恐怖で顔を引き攣らせる。彼女の言う通り、もし月が沈んだりしたら、何も見えない山の中で、身動きが取れなくなってしまう。
「ほら、あそこに道がある。あそこから行けるんじゃない?」
メロペーさんの云う通り、確かに道らしきものが見える。道があると云うことは、先に何かあると云うことだ。但し、頂上の碑があるだけと云う場合もあるが……。
なお……、エレクトラさんと、メロペーさんは、オッパイが可愛かったので、何となく僕は彼女らの名前を覚えている。
「コーシローさんは、どう思います?」
突然、僕に振られた……。
「ここからでは、はっきりしませんね。僕が近くまで登って、見て来ましょう」
そう、ここは僕が行くしかない!
藤沢さんが反対しても、彼女たちは一刻も早くこの状態から逃れたいのか、自分たちだけで登って行きそうな勢いだ。これ以上、抑えきれはしないだろう。
だが、山道である以上、危険は付き物だ。熊に遭わなかったとしても、転んで怪我をしたり、藪に突っ込んで棘に引っ掻かれないとも限らない。僕たちは、情けないことに全裸なのだ。恥ずかしい以前に、身を守る物が少な過ぎる。
そうなると、無駄に若い女性たちを行かせる訳には行かないし、藤沢さんは何故か、普通の女性になってしまっている。
ならば……、役に立つかは分からないが、ジジイの僕なら、多少身体に傷が付いても、大した問題ではないだろう……。
「じゃあ、あなた。悪いけどお願いするわ。危なくなったら、直ぐに戻るのよ……」
藤沢さんも僕の提案に同意している。
もう、行くしかないだろう!
全員の期待の視線を受けた僕は、掛け流しのお湯の排出口に当たる岩を登り、その向こう側へと降りた。
ふむ、少し登った先に、上へと続く道らしきものが見える。僕は雑木林の斜面を登って、それらしき場所に出てみた。
そこは確かに、整備された小道と、丸太を並べた階段がある普通に良く見かけるハイキングコースだった。
これならば、女の子たちでも歩けないことはないだろう……。
これが露天風呂ならば、あくまで旅館の敷地内であり、管理されていない山中に見せていても、結局、そこは整備された箱庭の中の一画に過ぎない。
だが、今、ここが本当に旅館の敷地内である保証はない。寧ろ、降って行った山道の感じからして、ここが未整備の山中である可能性の方が高いと考えて間違いないだろう。
となると、柵やネットなどの設備は期待できないだろうから、熊や猪などの野生動物に襲われる危険もゼロではない。そして、それ以上に恐ろしいのが虫などの攻撃だ。
カやダニなどの昆虫や、ヤマビルなどの吸血生物。蛇やツチハンミョウなどの有毒生物。それに、ここは異世界かも知れない。だとすると、僕たちの知らない危険生物が存在したとしても不思議なことではないのだ。
僕はひとつ、提案をする。
「取り敢えず、火を起こしましょう。少なくとも、それで野生動物は近付かない筈だし、それを見た誰かが、助けに来てくれるかも知れないですから……」
「コーシロー、どうやって火を起こすの? 私たち、道具も何も持っていないのよ……」
藤沢さんの言う通りだ……。
いつもの耀子先輩なら、不思議な手品や超能力で、こんな時でも何とかしてくれるのだが、今はそれが出来ないらしい……。
「あそこに灯りが見えます……」
え~と……、彼女は……、アルキュオネさんだったかな……? 短髪の彼女が、山の上の方を指してそう言った。
ウン、確かに、オレンジの淡い光が、時に明るく時に暗く輝いているのが見える。
「ターユゲテー、確かに光は見えるけど、星の瞬きじゃないかしら? あるいは、梟など、野生動物の眼が光っているとか……」
彼女はターユゲテーさんだった……。
「でも、アナト。このまま、こうしている訳にも行かないわ……」
「こう云う時、下手に動くのが一番危険な行為よ。ここは、朝が来るまで、ここで待つべきだわ」
「でも、今は月が出ているから明るいけど、月が沈んだら、ここだって、真っ暗になっちゃうわよ」
ターユゲテーさんの指摘に、一堂は恐怖で顔を引き攣らせる。彼女の言う通り、もし月が沈んだりしたら、何も見えない山の中で、身動きが取れなくなってしまう。
「ほら、あそこに道がある。あそこから行けるんじゃない?」
メロペーさんの云う通り、確かに道らしきものが見える。道があると云うことは、先に何かあると云うことだ。但し、頂上の碑があるだけと云う場合もあるが……。
なお……、エレクトラさんと、メロペーさんは、オッパイが可愛かったので、何となく僕は彼女らの名前を覚えている。
「コーシローさんは、どう思います?」
突然、僕に振られた……。
「ここからでは、はっきりしませんね。僕が近くまで登って、見て来ましょう」
そう、ここは僕が行くしかない!
藤沢さんが反対しても、彼女たちは一刻も早くこの状態から逃れたいのか、自分たちだけで登って行きそうな勢いだ。これ以上、抑えきれはしないだろう。
だが、山道である以上、危険は付き物だ。熊に遭わなかったとしても、転んで怪我をしたり、藪に突っ込んで棘に引っ掻かれないとも限らない。僕たちは、情けないことに全裸なのだ。恥ずかしい以前に、身を守る物が少な過ぎる。
そうなると、無駄に若い女性たちを行かせる訳には行かないし、藤沢さんは何故か、普通の女性になってしまっている。
ならば……、役に立つかは分からないが、ジジイの僕なら、多少身体に傷が付いても、大した問題ではないだろう……。
「じゃあ、あなた。悪いけどお願いするわ。危なくなったら、直ぐに戻るのよ……」
藤沢さんも僕の提案に同意している。
もう、行くしかないだろう!
全員の期待の視線を受けた僕は、掛け流しのお湯の排出口に当たる岩を登り、その向こう側へと降りた。
ふむ、少し登った先に、上へと続く道らしきものが見える。僕は雑木林の斜面を登って、それらしき場所に出てみた。
そこは確かに、整備された小道と、丸太を並べた階段がある普通に良く見かけるハイキングコースだった。
これならば、女の子たちでも歩けないことはないだろう……。