覚の住む山(1)
文字数 609文字
出発の土曜日、神津さんは予定の時間前に現れている。これは正直、僕には意外なことで、僕は彼がこのまま逃亡し、二度と僕らの前に姿を見せることはないと思っていた。
恐らく彼は何かを隠している。
だが、それが何か?
僕には分からないし、耀子先輩も気付いてないのか、あるいは、大したことではないと高を括っているらしく、敢えて彼を問い詰めようとはしていない。
だが、何 れそれはハッキリする筈だ……。
このフィールドワーク……いや、覚 の説得に向かうのは、僕と耀子先輩、染ノ助君に神津さんで、一つ目鴉は海妖樹の監視の為、甘樫さんと留守番になっている。
今回、耀子先輩の乗ってきた車は、彼女の愛車のタイカン4Sではなく、多分、藤沢家の家族旅行用であるランドクルーザー。
耀子先輩は、染ノ助君を助手席に、僕と神津さんを後部座席に乗せると、直ぐにランドクルーザーを発車させた。
とは言っても、彼女の到着が遅れた為、発車は予定より30分も後のことではあったのだが……。
さて、僕たちの行く先、それは、美濃か飛騨の山奥ではないかと思われている方も多いのではなかろうか?
確かに、柳田国男師は『山の神のチンコロ』と云う話で(講談社学術文庫『妖怪談義』より)、サトリの別名、攫 は『飛騨美濃の奥山の中に物あり』と和漢三才図会巻の四十に書かれていると書いている(僕は不勉強なので、和漢三才図会までは確認していない)。
勿論、その手の話は多く、山童 、山
恐らく彼は何かを隠している。
だが、それが何か?
僕には分からないし、耀子先輩も気付いてないのか、あるいは、大したことではないと高を括っているらしく、敢えて彼を問い詰めようとはしていない。
だが、
このフィールドワーク……いや、
今回、耀子先輩の乗ってきた車は、彼女の愛車のタイカン4Sではなく、多分、藤沢家の家族旅行用であるランドクルーザー。
耀子先輩は、染ノ助君を助手席に、僕と神津さんを後部座席に乗せると、直ぐにランドクルーザーを発車させた。
とは言っても、彼女の到着が遅れた為、発車は予定より30分も後のことではあったのだが……。
さて、僕たちの行く先、それは、美濃か飛騨の山奥ではないかと思われている方も多いのではなかろうか?
確かに、柳田国男師は『山の神のチンコロ』と云う話で(講談社学術文庫『妖怪談義』より)、サトリの別名、
勿論、その手の話は多く、