第35話 六人のきょうだい

文字数 1,252文字

唯斗(ゆいと)です。十四才。中三です。二番目の父親の子供です。俺の父はこの家から徒歩で行き来できるところに住んでいて、私塾を経営してます。母とは随分前に離婚してるけど、近所なのでよく遊びに来ます」

葉月(はづき)です! 小六です。隣に座ってる、この、晴太(はるた)と双子です。三番目のお父さんの子供で、本当のお父さんのことは覚えてません。でも二番目のお父さん……ジロパパって皆呼んでるんだけどね。ジロパパと叔父ちゃんがいるから、あまり気にしてないんだ」

「晴太でーす。葉月と双子なので小六でーす。ゆーりちゃん、よろしくー」

「……えっと………美琴(みこと)です…………えっと、えっと……小四、です…………あ、十歳です……えっと、四番目のお父さん…………は、たまに、ちょっとだけ、遊びに来ます……」

理乃(りの)! 五歳‼ あのねー、あすか幼稚園に通ってる!」

「…………」
「この子は、一番下の真麻(まあさ)です。ちょっと人見知りです。先月三歳になったばかりで、理乃と同じ幼稚園に通ってます。理乃は五番目の父親の子で、真麻は六番目の父親の子です。二人の父親がどこの誰なのか、俺たちもユカも知りません」

 真麻ちゃんの紹介をしてくれたのは、彼女を膝に乗せている唯斗くんだ。穏やかな雰囲気で細身の唯斗くんは、顔立ちは全然似ていないけど、声は少し秋月くんに似ている。歳が近いからだろうか。

 秋月家の六人きょうだいの自己紹介が終わった。
……一度聞いただけでは、ほとんど頭に入って来なかった。後で秋月くんが書いてくれた名簿を見直さなきゃ。何番目の父親ってのが、パワーワードすぎる。

「じゃー、次ゆーりちゃんの番!」
「えっ‼ あ! はい‼ わわわ渡邉悠里です! 十八歳ここ高三です! い、い犬飼ってます!」

 咄嗟に振られたことによって、吃り過ぎな自己紹介になってしまった。しかし子供たちはワッと湧いた。

「ワンちゃん飼ってるの? いいなあ。名前なんていうの?」
「……犬種は……何ですか?」
「今度来る時、連れてきてよー‼」
「理乃もわんわん触りたい!」
「あっ、うん! 餅太郎って言ってね、ポメラニアンと柴のミックスだよ。今度連れてこようか」
「やったー!」

 一際大きな歓声が上がったところで、ピンポーンという、インターホンの呼び出し音が鳴り響いた。

「宅配届いたかな」

 ユカちゃんが立ち上がるのと同時に、晴太くんがヒュー‼ と器用に口笛を鳴らした。

「よっしゃ‼ 待ってました‼ ピザ!」

 どうやら私が来るというので、宅配ピザを注文してくれていたらしい。そう教えてくれたのは唯斗くんだった。

「あ、違った。ジローだ。はいはい。あーそう。おっけー」

 玄関に立つ人物と会話を交わしたユカちゃんが、インターホンの終話ボタンを押した。

「ジロパパから飲み物とお菓子の差し入れだよ。この後授業あるから、すぐ戻るって」

 ユカちゃんは子供たちにそう告げると、玄関に向かった。

「二番目の父親だ」 

 秋月くんが私にそう耳打ちしたので、私達二人もユカちゃんに続いて部屋を後にする。ジロパパなる人にも、会っておきたかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み