第9話:リーマンショック、四川大地震、暴動、テロ

文字数 1,679文字

 リスクに対する警戒感が急速に高まり、8月以降、信用の収縮、株価急落、ドル安などが一気に加速した。ローン債権を証券化した金融商品に投資していたヘッジファンドや金融機関は相場の急落で巨額の損失を計上、資金繰り難に直面し、一部は破たんに追い込まれた。米国や欧州の中央銀行は市場に巨額の資金を供給。米国は利下げ、英国は住宅ローン会社への緊急融資に踏み込み、事態の沈静化を図った。

 これまで、実体経済に大きな影響はないもののサブプライム問題を発端とした市場混乱を理由に2008年の景気見通しは米国、欧州、日本いずれも下方修正された。これに対し、伊勢昭二が、経済は、数年に一度、必ず、大きな経済のひずみが起きる。小さいのは,景気後退で、大きなのがショックと話した。

 しかし、こういうのを体験することも重要な事だと語った。今回の場合は、問題が大きいから、不景気の期間も長くなるかもしれないと予測していた。この頃、伊勢昭二が、大学を出たら最初に日本の大手商社に入社し、アメリカ出張の時に
アメリカの金融機関の人と関係を深めてからアメリカで働きたいと述べた。

 チベット動乱から49周年を迎えた3月14日、チベット自治区ラサでチベット人僧侶らが中国による「圧政」に抗議、大規模暴動に発展した。中国側は武装警察などを動員、双方に多数の死傷者が出た。ラサの暴動は、四川省や甘粛省、青海省などのチベット人居住区に飛び火。

 中国政府は「北京五輪破壊を狙ったダライ・ラマ一派による謀略・扇動だ」と強硬姿勢を強めた。国際社会は中国による鎮圧を批判し、欧州の一部首脳からは五輪開会式ボイコット論が浮上。聖火リレーもチベット支援者らがロンドンやパリなどで妨害するなど混乱し、中国は「五輪の政治化」に神経をとがらせた。

 その後、5月12日、中国四川省を震源とするマグニチュード8大地震が発生。死者・行方不明者が8万人超の大惨事となり、北京五輪を控えた胡錦濤指導部に大きな衝撃を与えた。最も大きな被害を受けたのは、当時授業中だった子供らで、校舎倒壊で6500人以上が死亡。原因は、校舎建設費の手抜き工事だった。

 温家宝首相が迅速に被災地で陣頭指揮を執ったほか、震災直後には内外メディアの自由な取材を認めるなど異例の政府の対応に注目が集まった。さらに日本の国際緊急援助隊が他国に先駆けて駆け付け、中国の対日感情好転につながった。政府は復興に全力を挙げているが、被災地が負った傷跡は大きい。

 2008年になっても米国の住宅バブルが、崩壊し低所得者向け高金利型「サブプライム」住宅ローンの焦げ付きが多発し、米欧金融機関の経営が急速に悪化、世界的な金融危機に発展した。9月、遂にリーマン社が、経営破綻。アメリカ議会で金融安定化法案が否決されると、米株価が、大暴落。

 ダウ工業株30種平均は史上最大の下落幅777ドルを記録。10月に修正後の法案が成立したものの、株価は約4年ぶりに1万ドルを割り込んだ。危機は新興国にも波及。主要中央銀行による同時利下げ、金融機関への公的資金注入、市場への資金供給など措置が,実行された。

 金融サミットで、景気てこ入れ策が合意されたが、世界経済は「大恐慌以来」の深刻なリセッション「景気後退」に陥ると思われた。その後、11月26日、インド西部ムンバイの高級ホテルや鉄道駅を狙って、銃乱射や爆発を伴う同時多発テロが発生。武装した男らがホテルを2日超にわたり占拠。

 治安部隊が鎮圧するまでに160人以上が死亡し、日本人の津田尚志さんも犠牲になった。パキスタンのイスラム過激派ラシュカレトイバや同国の情報機関、三軍統合情報局の関与が疑われ、インドのムカジー外相が「パキスタンの一部分子の犯行」と激しく非難するなど核保有国同士の緊張の高まりに懸念が広がった。

 そのため、インドとパキスタン関係の悪化が、ひどくなった。これは、米国がアフガニスタンで進める「テロとの戦い」に影響を与えかねず、事件後直ちにライス国務長官が両国を歴訪。インドに自制を促し、パキスタンには捜査への協力を求めた。
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