第5話:奈良の眼光と死亡の連絡

文字数 1,653文字

 熱中症などで病院に運ばれる人が続出。夏から秋にかけて日本に10個の台風が上陸、浸水や土砂災害が起きた。2004年8月、伊勢夫妻は、避暑をかねて北海道の奈良隆次に電話し、8月8~10日、訪問した。

 8月8日、早朝、家を出て10時の飛行機で昼過ぎに千歳空港に到着し、昼食後、13時半、札幌について、すぐに、ホテルにチェックインして荷物を置いて、大通公園や狸小路を散歩した。

 その晩は、すすき野の魚のあぶり焼きで有名な店を調べて、出かけ、その旨い魚をたべながらサッポロ生ビールを飲み、過ごした。何故か、札幌で飲む生ビールは、東京で飲む生ビールよりも断然、旨い。これは、不思議だが、事実だ。22時頃まで飲んでホテルに戻り床についた。

 翌日、10時にホテルを出て、地下鉄と市電を乗り継いで奈良君の入院している大きな病院にお見舞いに出かけた。病室に入ると、奈良君は、喜んでくれ、遠い所、悪いなと笑顔で語った。

 具合はどうだと聞くと、今年の春までは、体調が悪くて、困ったが、6月下旬の頃から体調が,不思議なくらい良いと言った。1時間くらい、会話を交わして、じゃー帰ると、伊勢が、言うと、病院の出口まで送ると、奈良が言い出した。

 その日の奈良は、目が不思議なくらい生気に満ちていた。病人は、見送らなくて病室で静かにしるものだと言うと、駄目だ,どうしても行くと言うので一緒にエレベータに乗り送ってもらった。そのぎらついた目に光が、伊勢には、忘れられないほど、眼光が鋭かった。

 それを見て、伊勢の心の中では、別れが近いと言う、不吉な気分が消えずにいた。そして、何故か、市電の途中で降りて、豊平川を歩きたいという衝動にかられて降りて、川沿いの道を歩き始めると、潮の香りがするではないか。

 奥さんに聞いても確かに,潮の香りが、かすかにするわと語った。しばらく歩くと、汗をかいて、少し先に古めかしい感じの喫茶店が見えてので入ることにした。入ると、クラシックな感じの店で、何にしましょうか中年の男が、中もを取りに来た。

 そこで、奥さんが、ウインナー珈琲、伊勢は、モカを注文。少しして珈琲が出てきたので香りをかぐと、旨そうで、飲んでみると,間違いなく旨い。思わず、美味しいと奥さんが言うと、嬉しそうに、店主が、ありがとうございますと告げた。

 ここの珈琲は、昔、懐かしい味で、香りも素晴らしいと伊勢が褒めた。この前の豊平川は、潮の香りがするねと言うと、そうですかと答えた。しばらくの間、奥さんに伊勢が、奈良との出会いについて詳しく説明し始めた。

 奈良は、T自動車の同期入社で、彼は大学の新卒で、俺が、高専出て3年してから社会人を経験し2週間の研修を受けたと語った。何故か、うまの合う奴で、親しくなったのだと説明。すると、奥さんが、全く違うタイプですものねと薄笑いを浮かべて話した。

 その後、気分が良いので、地下鉄の駅まで20分、歩いて行き、ホテルに16時前についてシャワーを浴びると眠気が起きて1時間ほど昼寝。その後18時に、今晩は、ラーメン横丁へ行こうといい、歩いて15分くらいで着いて本場の札幌ラーメンを食べたが、旨い。

 その後、すすき野の繁華街を歩いて、奥さんの実家と子供達へのお土産を買って、ホテルに帰って、買ってきたビールを飲んで、床について。翌日、朝8時にホテルを出て、9時頃、列車に乗って10時頃に空港のカウンターについて、搭乗手続きを開始。

 そして、搭乗口の近くに移動して11時過ぎの飛行機に乗り込んだ。13時過ぎに羽田空港に到着して、新宿経由で高田馬場へ行き、西武新宿線に乗り換え、15時近くに自宅に戻った。夕方、奥さんの両親と子供達にそれぞれ、北海道のお土産を渡した。

 その年の10月が過ぎ11月下旬となり2004年11月22日、奈良の奥さんから奈良隆次の死亡の電話が入った。冷静を装ったが、電話の声は、涙声。葬儀の日程が、わかり次第連絡しますと言われた。それに対し、伊勢が、絶対に行きますというと言い、泣き出した。
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