第3話:奈良と伊勢が病気で早期退職

文字数 1,688文字

 こうしてプーチン大統領が誕生した。日本では、大手百貨店そごうが7月、民事再生法の適用を東京地裁に申請し事実上倒産した。関連会社を含むグループ全体の負債総額が2兆円を超える大型倒産。

 10月にもバブル期の過剰な不動産投融資で失敗した千代田生命や協和生命など倒産が相次いだ。その後も奈良の腹水が貯まる頻度が増えてきて入院が必要かもと医者に言われた。やがて、2001年を迎えた。

 奈良の体調不良は、上司の山崎所長と梅島課長の配慮で、何とかしていたが、新人の中では、なぜ、奈良先輩が,会社に出社してこないのかと言う話をしていた。これに対して、山崎所長が、会社の研修に行ってもこの話はするなと言明。

 しかし、夏が過ぎ、10月に本社の東山専務が、札幌営業所を訪ねてきて、奈良君は、今日、休みかと聞かれ、体調不良で、休んでいますと答えた。珍しいね、奈良君は、無遅刻無欠席になっていたのにねと、不思議だと語った。

 そして、事務の女性達を昼食に誘って出かけた。奈良の週に3回の人工透析の話が明るみに出てしまった。その話を知った東山専務が、山崎所長を呼んで会議室で、その理由を問い詰めると、以前から奈良君の活躍で新規の上顧客を獲得していた事。

 その顧客が、自社の高級車を継続し買い続ける事などを説明した。しかし、本社の東山専務は、そんな事は、認められないと突っぱねた。これからは、実際の勤務状況を書くようにと、強く訴えた。そのため、その後、週2日の出勤となった。

 この話を山崎所長が、奈良君に伝えると仕方ないです。僕が悪いのですからといい、ご迷惑をかけて申し訳ないと陳謝した。そして、今年、有給休暇が、なくなり次第、退職始末と告げた。

 これを聞いて、力になってやれなくてゴメンと告げると、僕の方が悪いのですから仕方ありませんと言った。そして、2001年12月末に、奈良が、勤続49年4ヶ月で退職し、早期退職となり通常の2倍の退職金4000万円を手にした。

 この頃、伊勢は、体が疲れると激しい耳鳴り、突然のめまい発作が起き立っていられない状態の連続の毎日が、続いた。もちろん車の運転もできずで買い物は、全て奥さんが、買い物かごで近くの商店に買いに行く状態。

 退職したの年は、寝たり起きたりの生活が続き1年間は,休日は、廃人同様の生活だった。その頃、伊勢は、通院する耳鼻科の先生に、耳鼻科だけでなく自殺発作でも起こしたら大変だから大きな病院の心療内科も受診するように言われた。

 とにかく、全く集中力が持続できないのが、自分自身、情けなかった。耳鼻科の先生からは、寒いのが良くないと言われ、沖縄、グアム、ハワイなどを旅行した。そして2002年となった。初詣に行って、苦しいときの神頼みの様に、体調の回復を祈願してきた。

 しかし、願いもむなしく、復調の兆しが見えなかった。それでも何とか営業活動をしていたが、体調が悪いと、家に帰ってきて、1,2時間、寝てから営業活動に出かける日々が,始まった。

 その後、9月、遂に、めまい発作で、倒れて、近くの救急病院に運ばれた。そして入院し、担当の先生から、何度こんなになるまで無理したと言われ、交通事故を起こさなかった方が不思議なくらい、ひどい状態だと言われた。

 数日後、耳が聞こえが、通常の半分以下だと言われ、重度のメニエール病だと診断された。強いステロイド内服薬を4週間飲む治療を受けた。しかし、難聴が回復されなかった。そのため、重度自律神経失調症であり入院が必要と診断された。

 そして、2週間の入院後、4週間の休暇を取るように言われた。これを知った、T自動車の東村山営業所の勝田所長が、見舞いに来て早期退職した方が良い告げた。そこで、病気休暇と残っていた有給休暇を使い果たし2002年12月初旬、T自動車を退職。

 その結果、伊勢は、通常の退職金の倍額、3800万円を手にして退社した。ちなみに預金は、2千万円あり合計資産が5800万円であり奥さんの実家の離れに住んでいた。退職後は、家で、寝てばかりの日々が続いた。そのため食料品の買い物は、奥さんがしていた。
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