第165話 届かせない想い Aパート

文字数 7,565文字


宛先:優希君
題名:連絡あったよ
本文:結局倉本君と近くの公園で会う事になったよ。初め私の家に来るとか言った時はびっくり
   したけれど、もちろん全力で断ったよ。それに、会うのも二人きりじゃなくて優希君が
   言ってくれた通り蒼ちゃんと一緒だから。倉本君としては、私との仲を応援してくれて
   いると思っている咲夜さんの方が良さそうだったけれど。それでも、もしもの事があった
   ら連絡するね。

宛元:優希君
題名:連絡あった?
本文:こっちは変わらず雪野さんと昼してるけど、二人とも来ないね。雪野さんの方も香水の
   匂いがあると僕が近寄りすらしない事に気付いたのか、最近は香水を辞めたみたいだけど
   雪野さんと手だけは繋いでないからもし倉本と会う事になっても、そう言うのは辞めて
   欲しい。後、倉本の前で可愛い格好もしないでくれると嬉しい。

 昼から机に向かう前に、優希君だけには全て伝えておかないとと思ってメッセージを送ったら、時を同じくして優希君からも送られてきたメッセージ。こう言うなんて言ったら良いか分からない喜びは女の子にしか分からないかも知れない。
 私はペンを持つ代わりに携帯を手に取って、メッセージを追いかけると
「……」
 何とも久しぶりに見る優希君らしい独占欲に、私の心が喜ぶ。

宛先:優希君
題名:ありがとう
本文:私と倉本君が触れる事なんてないよ。そんな人相手に優希君が気に入ってくれている格好
   なんてするわけないからそこは安心してね。

 だったら優希君も安心して私に“好き”を頑張れるように、独占欲を出してもらえるように恥ずかしいけれど、私なりに優希君に“大好き”を見せてから机に向かう。


 しばらく机に向かって集中していたのだけれど、ふいにかかって来た電話によって何の憂いもなく一時勉強を中断する。
『もしもし、お姉さんですよね』
 電話の相手に何の疚しさを持つ事もない相手だったから。
『やっぱりいつもと声の調子が違うわね。昨日祝ちゃんが目を真っ赤にして帰って来てくれたよ』
『真っ赤にって、ひょっとしてとか思わなかったんですか?』
 蒼ちゃんの家とは反対の反応だ。
『初めはびっくりしたけど、それでもその蒼依って子かな? から貰ったクッキーだって言ってすごく嬉しそうに愛美ちゃんの事と、その友達の事話してくれたよ』
『実祝さん、蒼ちゃんの話をしてたんですか?』
 昨日の部屋での距離感と言い、私より仲良くなりそうなんじゃないのか。
『何? 愛美ちゃんやきもち焼いてくれてるの? 大丈夫よ。祝ちゃんは愛美ちゃんの部屋に入れた事、友達の部屋に初めて招き入れてもらった事、愛美ちゃんが元気だった事も話してくれたし、蒼依さんって言う友達よりも愛美ちゃんの話の方が多かったよ』
 私の話の方が多いって、そんな事でヤキモチなんて焼いてないのに。でもまあ、そこまで実祝さんが喜んでくれて、蒼ちゃんとも仲良くしてくれて昨日の事は、この学校に入ってからのとっても良い思い出にはなりそうだ。
『お姉さんの言う通り、喧嘩しても仲直り出来た時に気付ける事ってあるんですね。本当にありがとうございました』
 お姉さんからの電話が無かったら、実祝さんと仲直りする事は無かったかもしれないし、仲直りしたとしてももっと遅かったかもしれない。
 それに喧嘩する事で得られた、人を赦す事、喧嘩中でも相手を想いやる気持ちを持つって言う事は、このお姉さんが教えてくれたようなものだ。
『私の方こそ……約束を守ってくれてありがとうね。やっぱり愛美ちゃんは私の見込んだ以上の女の子だったよ』
『そんな。私の方こそ酷い態度を取ったりもしたのに、実祝さんがそれでも私と仲直りをしたいって思ってくれたからですよ』
 家での知らない実祝さんの一面を教えてくれるお姉さん。私が知っている実祝さんからは想像できないだけに、心から喜んでくれたのが伝わる。
 それにこの部屋で聞いた話だと、蒼ちゃんの気持ちを理解した上で後悔もしてくれていた。
『その上で愛美ちゃんにヤキモチ焼いてもらうなら、蒼依さんと友達になれた。愛美ちゃんと仲直りして仲良く喋る人が二人に増えたって喜んでもいたわよ』
 それで私がヤキモチを焼くって思っているとしたら、このお姉さんもまだまだ私と蒼ちゃんの仲の良さを分かっていない。
 だけれど、これは私と蒼ちゃんだけの断金に至った関係で、隠すつもりは無いけれど、誰にも言うつもりもまた無い。
 それに昨日は三人で泣き合って、あの放課後の再現でクッキーまでみんなで食べた仲なんだから、それくらいにはなって貰わないと割に合わない。
 そのくらいの大喧嘩をして、大きな遠回りもしたけれどその分、実祝さんがどんな思いをしていたのかも分かった。
 紆余曲折はあったけれど、気が付けば実祝さんとの“ジョハリの窓”で言う“開放の窓”も大きくなっていた。
『本当に喧嘩して仲直りが出来るって、大切な事なんですね』
 つまり喧嘩したらこそ分かる事、知ることが出来た事も多かった訳で。
『そうだよ。もう一つ言うなら、喧嘩するのは相手を意識するから出来るのであって、相手の事を何も考えないのは、言葉による暴力とかイジメと何も変わらないんだよ。それとは逆に相手の事を意識しないとそもそも喧嘩にもならないし、仲直りなんてもっと出来ない。ただ疎遠になって行くだけだよ』
 だとしたら、咲夜さんとも仲直り出来るのかな。少なくとも実祝さんとは仲直り出来た。あの時の自分の心境を思い出すと……
『じゃあ実祝さんも、咲夜さんともっと仲良くなれますよね』
 お互いを想い合えるのなら、信頼「関係」を作れるのなら。
『無理だよ。本当に相手の事を考えて叱れない人とは友達になれないよ。例のクラスメイトはあくまでクラスメイトで知り合いなだけ。それは友達とはまた違うんだよ』
 確かに昨日お母さんと話している時にただ喋る人、顔見知りの人と友達とは違うって言うのは思ったけれど、二人がお互いの事を考えていない事は無いと思うのだけれど。
『でも無関心どころか、お互いが意識し合っていたら喧嘩自体は出来るんですよね』
 そして喧嘩出来るって事は、仲直りも出来るって事になると思うんだけれど。
『前に言ったでしょ。相手の事を、祝ちゃんの事を考えてくれない人は友達だって思わない。ただのクラスメイトだって』
 確かに聞いたけれど、咲夜さんに対して持て余した感情と、実祝さんとの二人の関係も気になる私。揺れ動く自分自身の心が分からなくなる。
『今日はね、そんな事はどっちでも良いの。愛美ちゃんが喧嘩してたにもかかわらず祝ちゃんの気持ちを汲んでくれた事。祝ちゃんを考えてくれたって事。それが嬉しくて電話したんだから。だからまた、祝ちゃんの家に遊びに来て欲しいって事が言いたかったのよ。当然学校で色々あったであろう愛美ちゃんの調子が万全になってからで良いからね』
 そう言えばこのお姉さんは、先週の事をどこまで知っているのか。学校側がどこまで話しているのか。今までの流れからでは全く伝わって来ない。
 伝わって来ないから、咲夜さんもかなり絡んでいる以上これ以上心象を落とせないから、私もどこまで聞いて良いのか、踏み込んで良いのか判断出来ずに
『分かりました。また実祝さんの家にお邪魔させて頂きますね』
 実祝さんとの約束の話だけに留める。
『祝ちゃんの事、本当にありがとうね。それから親って言うのは子供に見つからない様に見守るものだから、今日までの電話は二人だけの秘密ね』
 秘密も何も、万一私が今日までの事で何か一つでも口を滑らせたら最後、今までの事全部実祝さんに言ってしまうクセに。
『もちろんですよ。今日までのお姉さんとの電話はお墓にまで持って行きますって』
 それでも後ろめたい事がある訳でも、誰かを不安に落とすためじゃない秘密。だとしたら私も変に気負う必要なんてない。
『話が分かる()で嬉しいわね。ちなみに今日、改めて祝ちゃんから愛美ちゃんの連絡先を聞くつもりでいるからね』
 今日が11日(金曜日)。お姉さんの事だから週末を盾に実祝さんが教えるまで放さない気がするけれど、それもまた温かい家族の一つの形だと思うと、私の心が更に温かくなる。
『じゃあ次の電話からは実祝さん公認ですね』
 だったら私はその連絡を楽しみに待つだけだ。
『そう言う事。じゃあお勉強の邪魔をして悪かったわね』
 結局、どこまで知っていて学校側が実祝さんのご家庭にどこまで話したのか、咲夜さんの話は出来ないまま実祝さんとの仮約束を取り付けて通話を終える。
 うまく行かない事も多い中、一つずつでも憂いは減っているのだから、少しずつ集中力自体は上がっている中で机に向かう。


 階下にいるはずのお母さんが静かなのも手伝って気が付けば放課後の時間になった頃合い。

宛元:倉本君
題名:ありがとう
本文:今から公園に向かう。何か欲しいものがあったら買って行くから遠慮は無しで。こっちが
   相談に乗ってもらう立場だから何でも用意する。

宛元:実祝さん
題名:汚名返上
本文:蒼依から話は聞いた。初学期の勘違いを今こそ是正する時。愛美には近づかせない

宛先:倉本君
題名:何もないよ
本文:統括会での相談なんだから変な気は使わなくて良いよ。それよりももう一人、私の友達も
   一緒に話を聞きたいって言ってくれたから、四人になるけれど理解してね

宛先:実祝さん
題名:ありがとう
本文:ちょうど同じタイミングで倉本君も学校出たみたいだから、待ち合わせ場所である近く
   の公園の目印送るね。

宛先:蒼ちゃん
題名:倉本君出たって
本文:二日続けてありがとう。それと実祝さんにも声かけてくれてありがとう。その実祝さん
   には公園の目印も送ったよ。

―――――――――――――――――<スピン>―――――――――――――――――――――

 しかし、倉本君からのメッセージには毎回びっくりする。彩風さんの話だと服装チェックの時にも思ったけれど、色々な女子と交流自体は多そうなのに、どうしてこっちがびっくりするくらい、その距離感が近いと言うのか、グイグイ迫って来るのか。しかも私が言った物は何でも用意するって……万一高価な物や、無遠慮な物をお願いしたらどうするつもりなのか。
 本当に用意されたら困るから断りはするけれど、改めて私とは考え方が合わない人なんだなって結論になってしまう。
 その一方で、昨日の今日だからか、蒼ちゃんが早速実祝さんに声を掛けてくれたみたいだ。こう言う抜け目ない所は蒼ちゃんらしいなって思う。
 ただ一つ倉本君の機嫌が悪くなった時、私の友達に酷い事を言わないかどうかなのだ。私の事ならいざ知らず、また私の友達の事を悪しざまに言うなら、やっぱり私の方に我慢するつもりは無い。
 雪野さんや彩風さんには優しく接して欲しいって優希君は言ってくれたけれど、倉本君相手に優しくするつもりは無い。
 そんな事したらまた話が拗れると思うし、優希君とも喧嘩になってしまう上、蒼ちゃんにも叱られる。
 まあ、だからこその蒼ちゃんへのお願いだったとは思うけれど。
 後はメッセージの最後で見せてくれた優希君の独占欲を意識して、私が思い付く限りの可愛くない格好って言うか普段着、膝辺りまでのハーフパンツとTシャツの上に空色のポロシャツと言う服装で、
「お母さーん! 少し出て来るー」
 待ち合わせ場所の公園へと出向く事にする。


 優希君と会うとなると、やっぱり顔の事とかガーゼの事とかは気になるけれど、相手が変わると気持ちの持ちようも変わるのかさほど気になる事は無さそうだ。もちろん優希君の彼女として、最低限の身だしなみは必要にはなると思うけれど。
 それはさておき、前日の実祝さんの時と同じ轍だけは踏まない様にと、今日は携帯を片手に公園までの道を歩く。

 公園にたどり着いた時点では、児童たちが数人遊んでいただけでまだ誰も来ていなかった。
 本当なら夏の暑い日差しの中の昼下がり、木陰に隠れても良かったのだけれど、せっかく久しぶりに出歩いた外。
 他の人もすぐに分かるようにとのつもりで、公園入口付近のベンチに朱先輩に教えてもらった座り方で腰掛けさせてもらう。
 私だって朱先輩のいない所でも、優希君に少しでも喜んでもらえるように自分を磨いてはいるのだ。そう言えば昨日の電話で他の男の人から私を守るのを諦めたっぽい優希君は、彩風さんと話をするって言ってくれていたっけ。私との喧嘩も仲裁してくれるっぽいけれど、雪野さんの兼ね合いもあるからイマイチどんな話をするのか想像が付きにくい。
 本当ならこんな場所で倉本君と話をするんじゃなくて、優希君と一緒に最近全く可愛くない後輩である、彩風さんや中条さんと話をしたかった。
 少しずつマシにはなって来ているから、長くてもあと一週間我慢出来たら私は完治だろうけれど、今はこの顔が恨めしい。
「愛ちゃん。昨日ぶり」
 私が優希君の事を考えていたら、白い長袖のシャツに淡い暖色系で足首くらいまであるストラップ型のロングワンピースに身を包んだ蒼ちゃんが現れる。
「蒼ちゃんこそ昨日ぶり。それに実祝さんへの連絡もありがとう」
 ちなみに私は蒼ちゃんほど可愛い服なんて持っていない。仮に持っていたとしても馬子に衣装が良い所だとは思う。
「それは良いけど、学校からの二人はまだ?」
 蒼ちゃんの方も私の方を見ながら満足げに首を縦に振りながら、私の隣に腰掛ける。
「どっちもまだだけれど、もう少しじゃないかな? 待っている間何か飲む?」
 蒼ちゃんの方が私よりも状態が良くない所を、二日続けて出て来てもらったからと蒼ちゃんに尋ねるも、
「私は大丈夫だけど空木君、愛ちゃんを本当に大切にしてくれてるんだねぇ」
 何故か優希君の話に。
「えっと、どうしたの?」
「どうしたもこうしたも、今日は空木君自身が来れない事が悔しくて、空木君の彼女である愛ちゃんを自分で、会長さんの魔の手から守れないのは悔しいって。だけど、彩ちゃんや理っちゃんと話をするのも愛ちゃんの願いと気持ちだろうから、出来るだけ愛ちゃんの希望は聞きたいから、今日だけは涙を呑んで私に頼んで来たんだよ。だから指一本も会長さんには触れさせないで欲しいって」
 倉本君からの魔の手って……優希君の気持ちにびっくりする。もちろんすごく嬉しいのだけれど、そこまで頑張らなくても優希君からの“好き”はちゃんと伝わっている。むしろそこまで頑張り過ぎて疲れてしまわないかの方が心配になる。
 本当に私の彩風さんへの対処に失敗を帳消しにしようと動いてくれている優希君。しかも今の優希君の気持ちも蒼ちゃんが話してくれなかったら、私は優希君の秘めた想いを知らなかったわけで。
「そうなんだ……教えてくれてありがとう。また私の“大好き”を優希君に感謝と共に伝える事にするね」
 ただ優希君からしたら、私には一切口にする事が無かったかもしれないその気持ち、私には知って欲しくない男の人の気持ちかも知れないのだから、そこはさり気なく自然に。
「“大好き”を空木君に見せる、伝えるかぁ。それが恥ずかしがり屋の愛ちゃんなりの気持ちの伝え方なんだねぇ」
 改めてそんな言い方をされると恥ずかしい。
「でも男の人にも、私たち女側から気持ちを言葉にしたり見せたりするのは、恥ずかしいけれど大切な事だよ」
 その度に嬉しそうにしてくれる優希君。時々優希君が私専用だって言ってくれる腕の中でらしない表情を見せてくれたり、私の“大好き”が少しずつでも伝わり始めたのか、最近は本当に自信もついて来たのか、堂々と格好良くなって頼り甲斐も見せ始めてくれている。
「本当に愛ちゃんも、空木君の事を考えて行動してるんだね。さすがは恋愛上級者だよ」
“あの恥ずかしがり屋の愛ちゃんが立派になって……”なんてしみじみつぶやく蒼ちゃん。
「大好きな彼氏なんだから、一番に考えるって」
 他の誰でもない蒼ちゃんの前だから私も堂々と言い切れるけれど、この一言が言えるようになるまでにお互いたくさんの失敗もして来たし、涙もたくさんして来た。
 だけれどその度に、今も私の隣に腰掛けてくれている蒼ちゃんもそうだし、朱先輩や周りの人たちに助けられて来たのだ。
「だったら会長さんの事、どうにかやり過ごした上で相談だね」
「うん。私から倉本君に触れるとかそう言う事は絶対にしないよ」
 お互いの気持ちと意志を確認したところで、後は二人が来るだけだと待つことにする。


 一度私の家に来た事があるからか、同じ学校から同じ目的地に来るのに実祝さんの方が一足早く姿を見せてくれる。
愛美(えみ)蒼依(あい)お待たせ」
「実祝さんも二日続けてありがとうね」
「……ん。初学期の汚名返上。蒼依(あい)の服が可愛い」
「ありがとう(のり)ちゃん」
 その実祝さんが少しだけ迷う素振りを見せた後、蒼ちゃんとは反対側の私の隣に腰掛ける。これで私の両側には蒼ちゃんと実祝さんの二人が腰かけた状態に。
「蒼ちゃんの隣じゃなくて良いの?」
 昨日仲直りしたばかりなのだから、本当は蒼ちゃんの隣の方が良かったのかなって思ったのだけれど、
「ん。ここで良い。今日は愛美とあの嫌いな会長をくっつけてはいけない。あたしが徹底的に盾になる」
「祝ちゃんがそっちを意識してくれるのなら、私はあの会長さんが愛ちゃんと二人きりになるのを阻止するね」
 いつの間にか二人の間で役割分担が出来ている事に驚く。これで昨日仲直りしたばかりだなんて、たぶん誰も信じないと思う。
 でもまあ、私の知らない所で二人仲良くしてくれているのなら、それもまた願ったり叶ったりだ。
「協力してくれるのは嬉しいけれど、あんまりやり過ぎると倉本君って口が悪くなるから気を付けてね」
「大丈夫。むしろそれが狙い。そうしたらもっと愛美はあの会長を嫌いになる。あの会長も駄目」
 確かにそうだけれど、私は友達の事を悪く言われるのも嫌なのだ。
「違うよ祝ちゃん。愛ちゃんは私たちがあの会長さんからキツイ事言われるのも嫌なんだよ」
 私の気持ちを寸分違わず実祝さんに伝えてくれる蒼ちゃん。
「……むぅ。愛美の事良く分かってる」
 私に微笑んだ蒼ちゃんを見て、実祝さんから不満の一言。
「ありがとう実祝さん。でも私が倉本君に心惹かれる事はないから大丈夫だよ」
「……愛ちゃんは愛ちゃんだねぇ。そう言う一言が愛ちゃんの優しさだね」
 私が優しいかどうかはさておくとして、二人が私の事を考えてくれるのなら、
「二人共ありがとうっ!」
 私なりに二人に誠意を見せて挑もうと、まるで悪の親玉を迎え撃つような布陣で倉本君を待ち構える。

―――――――――――――――――――Bパートへ―――――――――――――――――――

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み