第165話 届かせない想い Bパート

文字数 8,360文字


 待つ事暫く。浮かび上がった汗玉をハンカチでポンポンと拭った時、今回の主役、倉本君が現れる。
「待たせて申し訳ない……けどもう一人って空木と一緒にいた奴か」
 そう言って実祝さんの事をチラッと見ただけで、真ん中に座った私だけを見て来る倉本君が、早速誰を期待していたのか分かるような言い回しで、失礼な事を口にしてくる。ただ、倉本君相手に私の窓を開ける必要は無いのだからと、余計な事は一切言わない。
「ううん。私たちも今来たところだし、倉本君も暑い中ありがとう」
 それに今日は優希君からの“好き”も頑張ってもらっているし、この前の私の失敗を取り消そうと動いてくれているのだから、可能な限り我慢するつもりで応対する事にする。
「……話には聞いてたが、やっぱ痛々しいな。俺に出来る事があったら何でも言ってくれたら力になるか――」
「――その手、駄目。馴れ馴れしい」
 私が意識をして口を開かなかった所へ、友達もいる中でまさか初っ端から私の顔へと伸ばされる手にびっくりして、のけぞろうとすると、ぴしゃりとその手を(はた)きながら静止してくれる実祝さん。
「馴れ馴れしいって、同じ役員の顔をやっと見られたから心配しただけだろ」
 そこで改めて実祝さんに視線を移す倉本君。
「だとしても軽々しく女の子の、しかも顔に触れようとするのはおかしい」
 実祝さんの方も、本当に汚名返上のつもりなのか言葉の中にトゲを少し混ぜている気がする。
「おかしいって、さすがは空木と一緒にいただけあって冷た――」
「――実祝さん。私の気持ちを代弁してくれてありがとう。それから倉本君。優希君と私の友達が一緒にいたから何なの? しかもさっきの言葉の先って冷たいって言いかけたんだよね。それってどう言う事? 私の友達が冷たいって事? それとも優希君が冷た――」
「――愛美。あたしは大丈夫だから。今日のあたしの役割」
「――そうだよ愛ちゃん。今日は会長さんの話をちゃんと聞くんでしょ」
 そんな事は分かっているけれど、だからって友達の事を目の前で悪く言われて平気な顔なんて出来るわけない。
「そうは言うけど、空木の奴岡本さんがこんななのに、今日も雪野と昼メシ食ってるし、毎回違う女と一緒にいるのも見るんだ。それっていくら何でも――」
「――会長さんも。ほかの男の人の悪口を陰で言うなんてカッコ悪いにも程がありますよ」
 私の膝の上に手を置きながら、倉本君に注意してくれる蒼ちゃん。
「……倉本君も心配してくれるのは嬉しいけれど、触れられると痛いし、ガーゼも取れたら困るからそっとしておいてくれたら助かるよ」
 このままだと話し合いの前に邪険な空気なってしまいそうだからと、言いたい事を全部飲み込んで建前を口にして、みんなを取りまとめると、
「……」
 蒼ちゃんが苦笑いを見せる。
「それで俺はどこに座ったら……」
「会長はあたしの横に座る」
 倉本君の質問に、再び実祝さんが私とは反対側のベンチに手を置く。
「いや、そっちが横に動いてくれたら、俺が岡本さんの隣に座れるんだが。それに元々今日は三人って言う話で、そっちは部外者だろ」
 私は追加で、もう一人来るってちゃんとメッセージを送っているのに、どうしてこの場で部外者とか言い出すのか。倉本君に話し合いなんてするつもりは無いんじゃないのかって、ないのかもしれない。それが証拠になるのかどうかは分からないけれど、私の前から一歩も動く気配のない倉本君。
「そんな事したら、あたしが友達と離れてしまう。それに簡単に女子に触れようとする男子に、愛美の隣は任せられない」
 そこに実祝さんからの追撃の一言。
 さすがに言い切った実祝さんにムッとしたのか、
「じゃあ俺は立ったままでも良いから岡本さんの近くで話す」
 少し口調が変わる。
「分かったよ。私が立つから、ここまで来てくれたんだから代わりに倉本君が座ってよ」
 私たち三人だけが座って、倉本君一人立っているって言う構図は私は好きじゃない。それなら私が立った方がいくらもマシだ。
「いや、俺は岡本さんの顔を見て話したいから――」
「――会長さん。いくら何でも女の子の顔をジロジロ見ながら話すのは感心しませんよ。それに愛ちゃんへの話はしなくて良いんですか?」
「だったら岡本さん。これから二人で落ち着ける所で――」
 そう言って今度は私の手を取ろうとしたのか、手を伸ばす倉本君を見て
「――会長さん。愛ちゃんのこの顔でそこらに引っ張り回すんなら、私は止めますよ」
 蒼ちゃんの方も少しだけ声に厳しさを込め始める。
「そうは言っても、元々付き添いだけだって話だったのに、これだけ口出されたら話も何もないじゃないか」
「口出しするも何も、話し合いをするだけなのに愛ちゃんに触れたり連れまわしたりする必要ありませんよね」
 もうなんていうのか、私が喋る必要がどこにもない気がするんだけれど、蒼ちゃんが倉本君の言葉を封殺して行く。
 倉本君にとってここまでうまく行かないとフラストレーションが溜まるのは理解出来るから、聞こえた舌打ちは聞こえなかった事にして、倉本君に場所を譲るために立った時に、どういう意味かは分からないけれど、両手を広げて来たから身を(よじ)って倉本君を躱す。


「俺って人としても男としても魅力無いか?」
 私たち女三人に全く動く気配がない事を感じ取ったのか、蒼ちゃんと実祝さんの間に渋々腰掛ける倉本君。
「男としての魅力って……今日って統括会の話なんだよね」
 これで恋愛の相談だったら私はどうしたら良いのか。私には仲の良い男子なんて優希君しか知らないし、私の課題は月末だったとしても、倉本君は雪野さんとの交渉も迫っているんじゃないのか。
「確かにそれもあるんだが、岡本さんに避けられたら教頭先生からは門前払いを喰らって、霧華は俺の話を全く聞いてくれないし、雪野にも俺の言葉は全く届いてない」
 岡本さんの彼氏候補なのに、情けない話だけどなって付け足す倉本君。私は倉本君を決して避けている訳じゃ無いけれど、そう言う事を平気で口にするから、その感情と言うか恋情に困り果てているだけなのだ。大体私がいつ倉本君の事を彼氏候補として見たって言うのか。
「教頭先生からの門前払いって?」
 だけれど、この話は多分平行線のままだからと、今は突っ込むような事はしない。だから今はその事よりも、倉本君に出されている課題に対する学校側って言うか、教頭先生の気になる対応の事だ。
 ちなみに彩風さんの方は、優希君にお任せしたのだから、一旦頭から追い出す事にする。
「雪野議長の事も中途半端。同じ統括会役員で交渉役である総務とも意見のすり合わせも出来ていない。その上今回の校内学力テストの結果も良いとは言えない。最低限何か一つは形にしないと交渉するに値しないと言われたんだ」
 だから倉本君の独り相撲みたいになっているのか。いや、その結果が教頭先生の門前払いなのかもしれない。
「それって優希君は? 今の話の中でどうして同じ統括会メンバーの優希君の名前が出て来ないの?」
 優希君は顔を合わせるだけで、私の事があるから喧嘩になるって言っていたけれど、そんな事を言っている場合じゃないと思うんだけれど。
「何でこんな時にまでアイツなんだよ! そんなに空木の方が男としての魅力があるのか? 俺にだって男としてのプライドはあるに決まってるだろっ!」
 そう言って地面を蹴り上げる倉本君にびっくりする。
 何が男としてのプライドなのか。そもそも男女の話なんてしていないし、自ら言っていた“五人で一つのチーム”は何処へ行ってしまったのか。裏で優希君がどれだけ動いてくれているのか分かった上で、倉本君はプライドとか言っているのか。
 男のプライドの事なんて私は女だから知らないけれど、そんな理由で優希君を弾こうとする意味が分からない。
「優希君がどうとか、男の人のプライドがどうとか言っている場合じゃ無いよね。それに倉本君が自分で言っていた“五人で一つのチーム”って言うのは何処へ行ったの? 優希君は同じチームとして見てくれないの?」
 これが男の人のプライドって言うなら、そんな物理解できる気がしない。だから後でこの事は倉本君の事が知りたい訳じゃないんだから倉本君に聞くんじゃなくて、私が知りたい人である、理解したい人である優希君に聞こうとは思う。
「……同じチームだったのに、岡本さんを盗ったのもアイツだろ! その上毎回違う女を連れて、成績も女も自分の思うままに出来て、女はみんな空木空木……だから俺はあいつが嫌いなんだ――っ」
「――毎回違う女って、その中にあたしも入ってるなら気分悪い――」
「ちょっと待って倉本君。優希君が私を盗ったってどう言う事?! 私は誰かの所有物じゃないし、私は私なの。それに私は自分の意志で優希君を好きになってお付き合いをしているの。決して優希君に無理矢理お付き合いをさせられているわけじゃないの」
 本当なら今日こそは優希君の協力をして、雪野さんの話を進めるなりまとめるなりしないといけなかった。
 だけれど自分の彼氏を悪く言うのも聞きたくなかったし、私の友達まで優希君とそういう関係だってハッキリ言われて気分が良いわけない。それが嫉妬やプライドから来るものならなおさらだ。
 それに私自身の心まで強制されるのなんてさすがに耳にするのすら嫌だ。“人の心は強制出来ない”これは私の信条みたいなものだ。だからこそ優希君が私に釘付けになってもらえるように、私は自分磨きをして成長し続けなければならないと思っているのだから。
「違うんだ! そう言うつもりじゃなくて、少ない人数で協力しないといけないのに恋愛なんて――」
「――会長さん。これ以上の言い訳はみっともないですよ」
 その上、自分の事は棚に上げて恋愛すらもしてはいけないと、彩風さんや雪野さんの気遣い、気持ちも置き去りにしたまま、優希君の事だけをあげつらう倉本君。
 私の意図が全く伝わっていない事を、倉本君が全て露呈してしまう寸前で、蒼ちゃんが言葉を引き継いでくれる。
「言い訳って、俺は事実を言ってる――」 ※だけだろ!
「――今は事実なんてどうでもいい。それよりも愛美が会長のモノみたいな言い方が不快」
 本当に私の親友、友達って優しいなって思う。私の気持ちをしっかりと汲んでくれる二人。
「だからって別に空木の物でもないだろ!」
「そんな事はない。愛美の彼氏が副会長である以上、副会長に委ねられる部分は大きい。何ならその事を愛美に直接聞くのが一番早い」
「言っとくけれど、私は優希君の彼女だからね。それ以上は言わないよ」
 本当ならあの星降る真夜中に、お互いはお互いのモノだって二人で話をちゃんとしたのだから、言い切っても良かったのだけれど、多分それを言った時点で今日集まったこの場自体に意味が無くなってしまうからと、一言だけに留める。
「結局それって、岡本さんは空木の物だっ――」
「――会長さん。そんな話ばっかりしてますけど、愛ちゃんへの相談は良いんですか?」
 私が最後まで聞いてしまったら、完全に話が出来なくなってしまいそうな致命的な一言を倉本君が口にしてしまう前に、ことごとく二人共が止めてくれる。だから話を破談させずに進めることが出来る。
「そんな話って――」
「――それで倉本君としては教頭先生と交渉するために何か考えている事はあるの?」
 私は二人の気持ちを無駄にしない様に、話を元に戻す。
「……考えって言う程でもないかも知れないが、霧華の代わりに岡本さんと交渉に挑みたい」
 ここでようやく前もって優希君から聞いていた話と繋がる。
「でもそれだと、教頭先生の課題の達成は出来ないんじゃないの? 統括会として意見をまとめないといけないんだよね」
 確かにここで私が出てしまうと、倉本君だけじゃなくて彩風さんの居場所もなくなってしまうし、統括会全体の印象も悪くなる気がする。
「でも雪野の件にしても本当に時間が無いんだ」
 だったらよく分からないプライドなんかにこだわっている場合では無いと思うんだけれど。
「じゃあ雪野さんの噂の方は? 統括会残り四人全員で鎮静化を図る?」
 とにもかくにも私と倉本君の二人で交渉に行ったら、ゲームオーバーになってしまう気がする。
「それにしたって月曜日だけじゃどうにもならないだろ。だから土日の間に岡本さんと二人きりでじっくりと――」
「――そうやって理由を作って愛ちゃんと二人きりになろうとするのは、愛ちゃんが嫌がってる以上、彼氏さんもいるんですから駄目ですよ」
「岡本さんとデートって……こっちは真剣なんだから変な横やりは辞めてくれないか」
 さすがに私にも分かった、それを盾にした倉本君からの週末のデートの誘い。優希君にはさすがに言えない、私の色々な部分に視線を移したのも感じたのだから間違いない。
 もちろん私は断ろうとしたのだけれど、私の考えていたよりもかなりキツイ断り方をした蒼ちゃん。ひょっとしたら倉本君の視線にも気が付いたのかもしれない。
「横槍って言いますけど今、愛ちゃんのどこを見て真剣だって言ったんですか?」
「……会長?」
 いや、私よりもしっかりと分かっているのかもしれない。蒼ちゃんの言葉の中にハッキリと怒気が混ざる。
「どこも何も、正面を向いてるんだから意図しない所に視線が行くこともあるだろ。いくら何でも言いがかりすぎるぞ」
「だったら、自分で言ったんですから愛ちゃんの顔を見て話すれば良いじゃないですか」
 その上で、私の気持ちを考えて難色を示してくれる蒼ちゃん。
「だったら俺が岡本さんの家に行ってゆっくり話を――」
「――さっきから気安く愛ちゃんに触れようとしたり、休日に連れまわそうとしたり、女の子の家に平気で上がり込もうとしたり、何考えてるんですか!」
「何考えてるも何も空木の野郎は岡本さんだけに飽き足らず、雪野やそこのおん――岡本さんの友達ともベタベタしてたじゃないか」
 寸前で言葉を飲み込んだけれど、倉本君の内心も垣間見てしまった以上、私の倉本君に対する心象は悪くなるばかりだ。
 よくこれで私の事が好きだなんて言えるなって思う。私とお付き合いをするって言う事は、私の友達ともお付き合いをするって言う事でもあるんだけれど……分かっていないのかもしれない。
「愛美……」
 ただ、それとは別で実祝さんが不安に思ってはいけないからと、実祝さんと手を繋ぐ。
「会長に言っておく。あの日あたしは愛美の彼氏と少しだけ歩いたけど、どこにも触れてない。愛美の彼氏に対する風評は辞めて」
 私の手を握り返してくれた実祝さんが、しっかりと倉本君に意見を添えてくれる。
「それに私も前に言ったじゃないですか。愛ちゃんが了承したら会長さんの事、応援しますって。その愛ちゃんは会長さんの誘いに一回でも了承してくれたんですか?」
 その上蒼ちゃんまでも倉本君に意見を添えてくれる。
「えっと……何? どうしたの?」
 かと思ったら急に倉本君が立ち上がって、私の本当に目の前まで来る――から私は後ろへ二歩後ずさる。のに合わせて二人も立ち上がってくれる。
 気付けば結構な時間が経っているはずなのに、ほとんど本題の話が出来ていない事に内心で私は焦る。
「お願いだ岡本さん! 今は本当に時間が足りなくて頼れる人もいないんだ。空木の事で色々考える事もあるかと思うけど、この週末だけで良いから俺と二人きりで相談に乗って欲しいっ!」
 そう言って私に対して思いっきり――地面に平行になるくらい――頭を下げてくる倉本君。
 不器用なりに倉本君が時間内で何とか状況を打破したい気持ちだけは伝わる。そもそも彩風さんがしっかりと倉本君の話を聞いてくれていたらこんな事にはならなかった話で。
「ちょっと倉本君! ここ公園なんだから顔上げてよ!」
 いくら“タラレバ”の話だったとしても、その誘い文句が私とのデートへの誘い文句としての下心があるのを理解していたとしても、実際彩風さんが倉本君の話を聞いていないのは見聞きしている。
「岡本さんが首を縦に振ってくれるまで、頭は上げられない」
 加えて雪野さんも私たちの静止に耳を傾ける事無く、統括会を降りるの一点張り。
「お願いだから頭を上げてよぉ」
 せめて倉本君が私に恋情を抱いていなかったら、いくらでも協力出来るのに……
「ごめん無理だ! 俺は岡本さんみたいに理解してくれる人が一人でも良いから、側にいて欲しいんだ」
 でも、私は優希君の事が本当に大好きで、その優希君相手に一点の疚しさも持ちたくなくて……でも、たった一人理解者がいてくれるだけで、その心持ちようも随分と違う事は私はここ数ヶ月で何回も経験していて……
「話なら今ここでも出来るじゃない……」
 それでも、何があっても倉本君と二人きりでのお出かけなんて出来ない。どうあっても倉本君の気持ちには応えられない、応えたくないのがしんどい。本当に好きでもない人から好かれるのはしんどい。特に心に決めた人がいるのなら尚更。
 私の声にどうしても涙が混じってしまう。
「ちょっと会長さん。愛ちゃんを困らせないで下さい」
「だから早く顔を上げる」
 私の涙声に気付いた蒼ちゃんが、真っ先に私の背中をあやすように撫でて倉本君を窘めてくれる。
「悪いが少し黙っててくれ。俺は今、岡本さんからの答えが欲しいんだ。俺の発言が気分を害してる事も理解してるけど、俺は俺なりに必死なんだ。そう言うのは一つずつ指摘してくれたら後からでも直せる。でも俺の真剣な気持ちは伝えられる時に全力で伝えたいんだ!」
 それでも尚、周りの事なんてお構いなく、ただ私だけを見て考えている倉本君。本当に彩風さんの言う通り異性に対して失礼だなって思う事も多々あるけれど、それも彩風さんが以前言っていた通り、私たち女の人とお付き合いをした事が無ければ、私たち女の人の気持ちも知らない訳で……それは私が男の人を理解出来ていないのと同じ状態な訳で。
 そう言った中でも私への気持ちだけは一切ぶれていない。
「……」
 こうなると私は本当に何も言えなくなってくる。
 私の気持ちを理解したのか蒼ちゃんが頭を抱えて空を見上げる一方、
「これはマズい」
 一言言ったきり、私の方を見つめて来る実祝さん。周りが全く見えないなりに自分の道を信じてまっすぐ進もうとする倉本君。
 私が倉本君の力になる事によって統括会が一つにまとまるのだとしたら……今も外に出る事に抵抗を感じる顔だけれど、私が今週だけ望まない相手とデートすれば……でも優希君を悲しませることも、不安にしてしまう事も間違っても望んでいないし……私が

なる程の葛藤の中、
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⇒162話:連結器作成開始⇒
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「……私が……今週だ――」
「――ちょっと愛ちゃん?!」
「愛美っ! 駄目っ!!」
 私が何を言おうとしたのか分かった二人が、大慌てで私の言葉を止めようとしてくれるけれど、
「岡本さん! 俺を独りにしないで欲しい。俺にほんの少しで良いから力を貸して欲しいっ! 絶対岡本さんを悲しませるような事はしないって誓う!」
 ただまっすぐに私への気持ちをぶつけて来る倉本君。
「でも私には目の前で困っている人を放っておく事なんて――」
「愛ちゃん落ち着いて! 空木君は良いの? その分、大好きな人との時間は減っても良いの?!」
「副会長の愛美に対する気持ちはもっとすごい! 冷静になって! お願い!」
「――じゃあ俺とこの週末はデー――」
 それでも私から、望む答えを引き出そうと倉本君が言葉を紡いだ時、
「――おい倉本っ! 僕の彼女をこれ以上困らせるな!」
 私が自分の気持ちに全て蓋をして、倉本君に返事をしようとした正にその瞬間、公園の入り口から私の大好きな人の声が聞こえた。

――――――――――――――――――――次回予告―――――――――――――――――――
   ある意味予想通り、実のある話にならずに恋情の話になった二人と二人
   主人公の弱点である押し込みとまっすぐな思いをぶつけられたその時――

     親友からの万一の保険にと連絡を受けていた彼氏の登場に……

      そしてもう一つ以前から主人公だけが知らされていない
          もう一つの秘密が形を帯び始める……

          そしてご機嫌が斜めのお父さんの帰宅と
               もう一つの波乱……

             「おい親父。うっせぇぞ」

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