第164話 人をまとめる難しさ Bパート

文字数 8,391文字


慶を見送った後お母さんが一言。
「お父さんがいない間に先生が家に来た事が、どうしても許せないみたいで先週よりもお父さんの機嫌。ハッキリ言って悪いわよ。だから、お父さんが何言って来ても本当に気にしたら駄目よ」
 お父さんはどうしても許せないって言うけれど、私だって先生がせっかく来てくれたのを無碍に返してしまったお父さんにはまだ納得なんてしていないのに。
 大体お父さんはそう言う説明とかいらない人なのか。その背景にある事情とかは知りたくないのかなって疑問に思う。
「それは分かったけれど、お母さんの方は大丈夫なの? 疲れてない?」
 お母さんはお父さんの事が今でも十分好きなのに、そのお父さんと一週間も喧嘩しっぱなしなんだから、気持ち的に滅入っていても不思議じゃない。仮に私が優希君と一週間喧嘩したらって言うかその前に朱先輩か蒼ちゃんに泣きつくような気がする。
「愛美は気にしなくても大丈夫よ。今日は病院へ行く日でしょ」
 確かに今日は病院へ行く日なのだ。
 腫れは引いてきているとは言え、まだ人前に出るには抵抗があるから送迎はお願いしたいけれど、お母さんにもまた無理はして欲しくない。
「それだったら良いけれど、今日一回くらいなら私一人で電車乗り継いで行くよ?」
 だからお母さんを気遣うも、
「大丈夫よ。ただ今日の夕方お父さんが帰って来る事を考えるとつい……ね」
 お父さんの事はお母さんにお任せしたから、その詳細は分からないけれど、お父さんがお母さんから元気も笑顔も失くしてしまうって言うのなら、やっぱりお父さんとは大喧嘩になる気がする。
 私は心の中で何か事が起こった際には、お母さんの味方になろうと決めてしまって、病院に行くまでの間だけでも机に向かおうと、一度自室へと向かう。

宛元:優珠希ちゃん
題名:佳奈はわたしの友達
本文:アンタみたいなじゃじゃ馬と違ってそこら中で喧嘩なんてしないわよ。
   アンタこそわたしの心配なんてしてないでこのままお兄ちゃんと仲良くしなさいよ。
   なんか知らないけど、昨日からお兄ちゃんがちょっとだけカッコ良いのよ。でもまあ、
   佳奈の事はお礼言っとく。

宛元:蒼ちゃん
題名:お母さんと喧嘩中
本文:昨日愛ちゃんの家で泣いた事を誤解したお母さんと喧嘩中。でも、昨日は久しぶりに
   愛ちゃんの顔も見られたし、祝ちゃんの元気な姿も見られたし、何より仲直りの場に
   居合わせる事が出来たから嬉しかったよ。だから愛ちゃんは変な気なんか使わなくて
   良いからね。

 立て続けに二件の返信があったメッセージに目を通して、優珠希ちゃんは私と優希君の仲の応援に昨日からの優希君の様子が伝わるし、蒼ちゃんに至っては心から喜んでくれているのが伝わって心が温かくなる。

宛先:優珠希ちゃん
題名:ありがとう
本文:優珠希ちゃんの気持ち嬉しかったよ。いつもカッコいい優希君だけれど、優珠希ちゃん
   の前ではまた違ったカッコ良さがあるんだよね。それと御国さんの事だけれど、優珠希
   ちゃんの友達としてまた元気な姿を見せたいなって思っているから、今は元気だって
   事だけ伝えておいてくれると嬉しいな。

 もう授業も始まっているからと、優珠希ちゃんにはメッセージで返信した後、蒼ちゃんは今日も家にいるだろうからと喧嘩中って言う蒼ちゃんが気になった私は、電話を掛けてお互いの近況を確かめる事にする。
『おはよう愛ちゃん』
『おはよう蒼ちゃん……こんな時間に電話するのは初めてだね』
 学校のある平日に二人して休んで電話するなんて事、こんな事態じゃ無かったら絶対しない。
『さっきのメッセージで電話して来てくれたの?』
 やっぱり蒼ちゃんだから全部分かってくれる。
『蒼ちゃんは気にしなくても良いってメッセージくれたけれど、私からしたら大切な親友だもん。ほっとけないよ』
『……やっぱり愛ちゃんは愛ちゃんだねぇ。大丈夫だよ。祝ちゃんからもメッセージも貰ったし』
 驚いた事に、実祝さんがその日の内に蒼ちゃんにメッセージを送ってくれたみたいだ。二人の関係が急速に進むのは嬉しくもあり、裏返すと私が二人の仲を阻害していたのかもと思ってしまうと、もう少し早く素直になっておけば良かった気もする。
『みんな蒼ちゃんを大切にしてくれて嬉しいよ。だからこそごめんね。もしなんだったら私が蒼ちゃんのおばさんに話しようか?』
 あの涙は悲しい涙じゃない。みんなが嬉しかった言わば喜びの涙なのだから、誤解されるって言うのは寂しすぎる。
『さすがにそこまで心配しなくても大丈夫だよぉ』
 蒼ちゃんが恥ずかしそうな声で恐縮する。
『私の家も今日の夕方お父さんが帰って来たら喧嘩は確実だけれど、お母さんが理解してくれているから寂しいとか心細いとかは無いけれど、蒼ちゃんは一人っ子だし……』
 やっぱりそう言う時って、分かってはいても近くにいて欲しい物だと思う。
『いっつも愛ちゃんの事すっごく可愛がってたのに、あのおじさんが怒るなんて珍しいねぇ』
 私は蒼ちゃんの心配をしていたはずなのに、いつの間にか私のお父さんの話に変わっている。
『何でも自分で追い返したくせに、お父さんがいない間に先生の説明を聞いたのが気に入らないんだって、お母さんが言ってた』
 自分勝手なお父さんには呆れてため息しか出て来ない。
『私の親も、もう謝って済む問題じゃないから聞いても聞かなくても同じだって言ってたよ』
 まあ蒼ちゃんは特に酷かったから、蒼ちゃんの両親が言う事は分からないではないけれど、
『やっぱり話ぐらいは聞いて欲しいよね』
 その結果が納得出来ても、出来なくても。
『だから私も徹底抗戦。大体私の話も聞いてくれないで、まだ私の事を泣かせる人がいるのかって怒ってばっかり』
 やっぱりどこの家でも形は違えど、答えはよく似たものになるのかもしれない。
『だから二人で連絡取り合ってお互い親に分かって貰おうね』
『そうだね。愛ちゃんがそう言ってくれると心強いよ』
 それでも、私たちはもう三年間同じ学校で一緒に過ごそうねって約束したのだから、やっぱり気持ちは同じなのだ。
『そう言えば、今朝空木君から連絡があって、会長さんと愛ちゃんが、今日の放課後辺りに二人きりで話をするだろうから、会長さんから愛ちゃんを守って欲しいって連絡あったよ』
 そっか。昨日話をして早速動いてくれたんだ。私としては蒼ちゃんを巻き込んでしまう事に申し訳なく思う気持ちもあったのだけれど、
『ありがとう蒼ちゃん。昨日に続いて今日も外に連れ出してごめんね』
 私と優希君を応援してくれる蒼ちゃんだから。どうあっても私の中で倉本君と二人きりで会うのも嫌だから、蒼ちゃんの好意に甘えさせてもらう。
『私の事は気にしなくて良いよ。それに先生以外の男子から愛ちゃんを守るのは親友として当然だし、あれ以来空木君も愛ちゃんを大切にしてくれてるのが分かって私も安心なんだよ』
 本当に蒼ちゃんは……私にとって断金の親友だって言えるから、私も蒼ちゃんの力になれる事があれば、どんな事でも頼って欲しいと思う。
『ありがとう蒼ちゃん。まだ倉本君からは何も無いけれど、連絡があった時には素直にお願いするね』
『愛ちゃんが素直にならないといけない相手は空木君でしょ? でも会長さんと会う事になったら場所と時間をまた教えてね。私相手でも変な遠慮は駄目だよ』
 やっぱり蒼ちゃんは私相手だと、厳しくて優しい。
『ありがとう蒼ちゃん。それじゃあまた何かあったら連絡するね』
 その蒼ちゃんの想いを受け取った私は、病院へ行く時間もあって蒼ちゃんとの通話を終える。


 お父さんの事は気になったけれど、お母さんだけでも先生の話を聞いて理解してくれている事が伝わっているからか、病院へ行くまでの時間、一日一日確実に迫りつつある朱先輩と同じ学校の受験対策は進んだ気はする。
 もちろん今日一日の事でどうこうなる事は無いと思うけれど、それでも日々の積み重ねが大切な事には変わりない。
 ひとしきり集中して区切りがついたところで、そろそろかと思いリビングに顔を出すと、既にお母さんが準備を終えて待っていてくれてた。
「呼んでくれたら途中で切り上げたのに、待たせてごめん」
 お母さんが疲れているのなら今回くらいは一人で行っても良いと思っていたくらいなのに。
「何言ってるのよ。今まで集中して勉強してたんでしょ。愛美が自分で立てた目標なんだから、お母さんは協力するに決まってるじゃない」
 お母さんだって時間の都合、家にいるからこそやりたい事もあるはずなのに、それでも私の受験の応援と言うか協力をしてくれるお母さん。
「ありがとうお母さん。すぐに用意して来るね」
 お母さんが私の進学先に対して、国立にこだわっていた時、本音で話しておいて良かったと思う。
 理想でしかないのかもしれないけれど、お父さんにも正面からぶつかって話して分かって貰えたらなってどうしても思ってしまう。


「愛美は何も後ろめたい事はしてないのだから、堂々としてたら良いのよ」
 病院から帰る途中お母さんと二人きりの車内。さっきの家での話の続きみたいだ。
「それはそうかも知れないけれど……そんなにお父さん酷いの?」
 病院の先生からは、経過としては良好だって言ってもらえて、今回顔に貼ったガーゼが取れたら以降は塗り薬と自然療養に入るとは言ってもらえはしたけれど、昨日から明らかにお母さんの元気が無い。
「酷いって言うか、愛美が自分の目標を持って努力してる姿を見て会社で自慢したり、結果が出る度に喜んだりもしてたのに、こうも変わった姿を目の当たりにしてしまうとね」
 私は家でのお父さんしか知らないから、外で色々私の事を話してくれているのを今更に知って、やっぱりお父さんなりの気持ちもあるんだなって分かる、伝わる。
「でも今日の病院の先生の話を聞いてくれたら、少しは冷静になってくれたりしないかな」
 そんなお父さんだったら、顔の腫れが引いた事を伝えれば学校の先生の話にも耳を傾けてくれそうな気がするけれど。
「さっきも言ったけど、お父さんがいない間に愛美とお母さんに話に来たのが小賢しいやり方だって言って許せないのよ」
 小賢しいって……自分から追い返しておいて、結局そこに帰って来てしまうのか。
「だったら今日は私もお父さんとしっかり話すよ」
「良いわよ。愛美は自分の目標の為に取り組んでくれれば、それだけでお母さんは十分だから」
 お母さんが寂しそうに言う。やっぱりお父さんと喧嘩している今がしんどいのかもしれない。もちろん私を応援してくれているのもお母さんだけれど、お父さんが大好きなのもまた、お母さんなのだ。
「ううん。私の気持ちを自分でお父さんに伝えたいから、今回も自分で言うよ」
 だからこそ、お母さん一人でお父さんと喧嘩して欲しくないし、私たちの気持ちも分かって貰わないといけないと思う。
「本当に愛美は……ありがとう。だからこそ愛美は私たちなんか気にせずに目標に向かって頑張りなさいね」
「ありがとうお母さん」
 そしてこの会話を最後に母娘(おやこ)二人だけの車内での会話は幕を降ろした。

――――――――――――――――――<スピン>――――――――――――――――――――

 家に帰った私はお昼ご飯もそこそこに、たくさん心配をかけてしまっていた朱先輩と優希君に良い知らせが出来ると思って、病院に行くからと家に置いたままにしていた携帯を手に取ると彩風さんと倉本君の二人から電話があったみたいだ。
 時間的に見ても昼休みも半分くらいは終わっているだろうから、どっちかにしか電話をする時間は無いけれど……昨日の優希君との電話を思い出した私は、
『倉本君? 珍しく電話くれていたみたいだけれど何かあったの?』
 ワザとらしくならないように私の方からかけ直す。
『電話繋がらなかったからどうしようかと思ったけど良かった。そう言えば岡本さんと電話で喋るのは初めてかな』
 ごめんではあるけれど、イチイチ倉本君との電話なんて意識していない。それに優希君だったらまず初めに私の容態を気にしてくれる。まあ、倉本君だから心配されてもされなくて私的にはあまり変わらないけれど。
『ごめん、そうだっけ。それよりも用件は大丈夫? そろそろ昼休みも終わるんじゃないの?』
 そもそもこの電話って、昨日優希君からの話だったら来週月曜日に学校側と雪野さんの交渉をするための何かしらの話じゃないのか。
 もちろんこの相手が優希君ならいくらでも声を聞きたいし、些細な事でも喋りたい。
『確かにそうなんだが……それは会った時に話すとして、今日岡本さんにどうしても相談したい事があって、無理は承知の上で何とか俺の為に時間を用意して欲しい』
 だけれど、私の友達を大切にしてくれない倉本君と喋ったって、いつまた私の友達の事を悪く言われるのか分からないのもあって、あまり喋りたいとも思っていない。
『俺の為にって……倉本君と二人で会って相談を聞くって事?』
『ああ。出来れば誰の邪魔も入らない形で相談に乗って欲しい』
 邪魔って……
『その相談事って、統括絡みの事?』
 それ以外では倉本君の相談に乗れるような事なんて何も無いし、誰の邪魔も入らないって事は私と二人きりが希望なんだとは思うけれど、それだけはたとえ統括会絡みでもダメに決まっている。
『もちろんだ。だから岡本さんと二人っきりでゆっくりと相談に乗って欲しい』
『私と二人でって……なんで統括会の事なのに、優希君や彩風さんは駄目なの? それに雪野さんだって倉本君自身が交代させないって言うくらいには立派に役員やってくれているじゃない』
 もしこれを邪魔って言ってしまうのなら、倉本君が常から言っていた“五人で一つのチーム”って言うのは何だったのかって言う話になってしまう。
『雪野は今回当事者だから相談なんて出来ない。霧華に関してはいつも反対ばかりするから最近では口も利いてない。それに岡本さんには悪いけど、統括会がこんな状態なのに、更には岡本さんを放って学外を含めた色んな女と遊んでる奴には相談したくない。俺は岡本さんに対しても雪野を守る事に関しても真剣なんだ』
 私が初めに優希君や彩風さんから話を聞いていなければ、不安になったり驚いたりしていたのだろうけれど、私と雪野さんが原因で彩風さんと倉本君が喧嘩した話は知っているのだ。
 それに学外を含めた色んな女の子って、間違いなく朱先輩と優希君の話だと思うし。私にとって本当に特別な存在である朱先輩と、私の大切な彼氏である優希君の二人をそんな目で見られていたって言うのが、たまらなく不快だったけれど、今度こそは優希君に協力するって自分で決めたのだから、今回は無碍にしてしまわない様に気を付ける。
『相談に乗るのは良いけれど今、私は外に出られる状態じゃないしどうしたら良い? それに私は優希君とお付き合いをしているのだから、他の男の人と二人きりなんて浮気みたいな事は出来ないよ』
 その上で私の希望をハッキリと倉本君に付き突ける。
 それでも私が好きだって言ってくれる優希君なら私のワガママを聞いてくれるけれど、果たして倉本君は――
『じゃあ俺が岡本さんの家まで行くから場所を教えて欲しい』
 ――結局は自分の事ばかりで、面倒臭い私の事なんて何も考えてくれない。
 倉本君の提案だと、私が倉本君と二人きりは嫌だっていう話も、優希君に対して浮気になりそうだって言う希望も聞いて貰えていない上、私は簡単に男の人を家に上げると思われているのかと勘繰りたくもなってしまう。
『さすがに女の子の家に簡単に来るとか言うのは良くないよ』
 本来なら倉本君相手に、私の“秘密の窓”を開けるなんて事はしたくなかったのだけれど、私の家に倉本君を上げるなんて冗談じゃなかったからこれだけははっきり伝えておく。
 優希君はこうなる事を分かってくれた上で蒼ちゃんに声を掛けてくれたのかもしれない。そう考えると、私の性格や想いを分かった上で、守ってくれているんだなって分かる。
『そう言うつもりまでは無かったんだが……それじゃ二人では会ってもらえないか?』
『ごめん。二人で会うのは無理かな。だから公園で私の親友も混ぜての話だったら、協力出来るよ』
 結局私が倉本君に案と言うか、条件を口にしてしまう。これでも統括会絡みの話ならば、だけれど。
『岡本さんの友達って事は、部外者も話を聞くって事になるのか……』
 部外者って……確かに役員では無いけれど、同じ学校の生徒なのにどうしてそうやって切り離そうとするのかが理解出来ない。 
 倉本君からの反応で統括会の話だって言質は取る事が出来たけれど、同じ役員同士なのに優希君も駄目、彩風さんも駄目、そして同じ学校の生徒なのに蒼ちゃんも渋る。どう考えても私と二人きりになりたいだけの口実にしか聞こえない。
『確かに役員じゃないけれど、何回か私たちの話を聞いてくれている私の親友蒼ちゃ――防さんだよ』
 昨日までの私なら、私への下心が明け透けなのを盾に断りたいところではあったのだけれど、彩風さんの事があって、優希君からもその想いを受け取って、今度こそ協力をしようと決めて、トドメに蒼ちゃんとの電話のやり取り。私は電話を切ってしまいたいのを寸前でこらえて話を進める。
『それって俺と岡本さんの仲を応援してくれてたあの友達だったりするのか?』
 倉本君が言っている女の子とは絶対違う。それに私の想像が正しかったら、以前優希君と一緒にいた女の子じゃないのか。
 つまり咲夜さんの事を言っている気がするけれど、私はちゃんと“親友・防さん”って言ったはずなのだ。
 しかも咲夜さんも応援と言うより、どちらかと言えば恋バナ好きが高じただけの話に近い。
『だったら何? 倉本君が考えている女の子なら部外者でも良いって言う事?』
 だとしたら統括会の役員であろうが、一般生徒であろうが、倉本君のさじ加減一つで決まってしまうんじゃないのか。
 こんな男の人に蒼ちゃんを付き合わせないといけないのが、今更になって嫌になって来る。
『違う! そう言う事じゃないんだ。分かった。岡本さんの友達同伴で良いから今日話を聞いて欲しい。俺はどこに行けば岡本さんに会える?』
 最後まで私は親友って言っているのに、全然聞いてくれない倉本君。何でみんな好きだって言う人の話を聞かないのか。
 それなのに私への気持ち一つで倉本君がここまで周りが見えなくなってしまうのなら、いっそ私が抜けた方が倉本君の為にも、彩風さんの為にもなる気がする……もちろん倉本君の為にって言うのは、以前優希君からきつく辞めて欲しいって言われているから、私からは絶対に辞める事はしないけれど。
『分かった。取り敢えず待ち合わせ場所をメッセージで送るから、もう昼休み終わるんじゃないの?』
『あ。ああ。ありがとう岡本さん。いつもなんだかんだ言いもって俺の話を聞いて俺の力になってくれる優しい岡本さんに感謝してる。じゃあメッセージ待ってる』
 最後まで私の気持ち、言葉を理解しないまま、聞かないまま統括会のみんなが様々動いたり悩んだりしている事にも気付かないまま通話が終わる。
 今日の話は全部優希君の計らいと優しさだし、本来今の会話自体同じ交渉役の総務である彩風さんとするべきなのだ。
 どうして頭も回って、どう考えても同じ学年とは思えないほどの知識や考え方を持っているのに、周りだけが見えないのか、見ようとしないのか……それとも学校側の課題があるとは言え、余裕がないのかが分からない。
 私は倉本君の事を考えようとして――好きでもない、どちらかと言えばあまり好きではない倉本君の事なんか考えるのを辞めて、

宛先:蒼ちゃん
題名:今日の放課後
本文:今度は家の近くの公園で話をすることになった。また時間については連絡するから連日
   無理させてごめんね。それから初めに私の家に来たいとか言って来た時はびっくりした。

 蒼ちゃんにメッセージだけを送って、放課後の事を考えると少しだけでもと思って机に向かう事にする。
  ―――――――――――――――――次回予告―――――――――――――――――
   何とかごまかそうとも、結局優希君に洗いざらい喋る事になった主人公
    結局彼氏からはお小言を貰う事になり、同じ轍は踏まない様にと
    会長との電話は根気強く聞き続けて、会う約束を取り付ける事に

           ただ二人できりでは会えないからと
         先日仲直りをしたメンバーを巻き込むことに

          だけれどその話し合いも当初とは違い……

             「愛美っ! 駄目っ!!」

            次回 165話 届かせない想い
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