第14話 とある昼休み

文字数 1,421文字

連載

【虹のカップとリズムと】

第14話 とある昼休み

「わぁ!」
「なんだ、みつきか」
「ゆのん、ちょっとグランドに遊びに行かない?」
「ぐぇ」
「お願い!お願いお願いお願いお願いお願いお願い」
「しょうがない……か・わ・ち・い・みつきちゃんの頼みなら」
「さすがゆのん!」
「でっ、何やんの?」
「ボール遊び」
「ボール遊び?まあいいかぁ」
「まあいいのよ、ゆのん」
 
何!?グランドに見えるあの御光は。
わたし、気がおかしくなっちゃいそう。
いや、もう、わたしは、すでにおかしい。
だって、こんなにも
胸に何かが集まってくる……
頭も働かない。ただ
唯一働いているのは……

「っていうかさぁ、みつき……グランドでサッカーやってるあの男子知ってる?」
「あ、ゆのん!もしかしてもしかして!?」
「な、なによ。そんなんじゃ……ないけど」
「ないけどぉーーおん!みつきさまの勘を誤魔化そうたって、そうわいかないわ」
「わ、分かった……わたし、気になってるの」
「ふっふるー!ふっふふる」
「何、その謎の語彙力の無さ」
「はははっ!こんなに面白いことは、他には無いわ!!……ゆのん、宇佐美くんのこと気になってるのね」
「こ、声が大きいわよ!もう少し、小さな声で話して!!……うっ、う、宇佐美くんって名前なんだ……なんでみつきが知ってるの?」
「だってわたし宇佐美くんと小学校同じだったし、六年の頃、クラス同じだったから」
「へぇ」
「宇佐美くんかぁ~~、宇佐美くんは小学校の頃からモテたからな~~」
「そうなんだ……何、そんな顔近づけて!?」
「わたしが今度、紹介してあげよっか」
「みつき……そ、それは……絶対ダメ絶対ダメ」
「な~ん~で~~、ゆ~の~ん~ちゃん」
「わ、わたし!う、宇佐美くんの前で……何しゃべればいいの……。ダメなんだって、それだけは」
「はい~~行くよ~~善は急げ」
「行くって?」
「決まってるでしょ?」
「み、みつき!!?」

みつきヤバいっしょっ!?ま、まじありえないパリピ……、御光が迫ってくる……グランドの土をローファーで蹴り上げているみつき、その先に見えるのは……御光がぁああああ!!

「何、みつきかぁ、どうした?」
「久しぶり」
「久しぶり。制服まだブカブカだな」
「何よ、宇佐美だって、着せられてる感ハンパないんだから」
「はははっ!!」
「知ってる?この子のこと?」
「ああ、ええっと……高野さん?」
 
 なんで御光がわたしの名前知ってるの!!?
まさに落雷!……はぁ、ゼウスさま!!
ディオニュソースさまのお母さまであられた
セメレーさまが
ゼウスさまの真の姿を見て
亡くなられたように
わたしは宇佐美くんに、焼かれ、死ぬ。

「ほら、ゆのん!ぼぉ~としてないで、何とか言ったら!!」
「は、はい!は、はじめまして!!わたしは、高野ゆのんです!!」
「高野さん、声大きいんだね」
「あっ、あ、すいません、宇佐美さん。あ、あ、勝手に宇佐美さんと呼んでしまって、申し訳ありません」
「いいよ、俺なんかに、そんな緊張しないで。ハルでいいから」
「は、ハルさん」
「ハルでいいよ」
「ハル」
「はははっ!高野さん、面白いね」
「あ、ありがとうございます。ハルさんじゃなくて、ハル。よろしくお願いします」
「おお!よろしくね、高野さん」

ここまで、きたならば
背水の陣、不可逆
倒れても前のめり
ゆけ、ゆのん!!

「ゆ、!」
「ゆ?」
「ゆ、ゆのん、と、呼んでください」
「はい、かしこまりました……ゆのん」
「あ、ありがとうございます!!」
「はははっ!よろしくね」


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