第23話 痛恨の一撃

文字数 624文字

 俺は自己嫌悪で一杯だった。
 思い返してみると、自分の罪に気づく。俺は調子に乗っていた。

 その気はなかったとはいえ、完全に上から物を言っていた。

(何様だよ……)
見事に地雷を踏み抜くなんて、さすが勇者と言っておこうか
 俺とは裏腹に、アキトは平常運転の様子。
地雷って?
――自分じゃないと駄目だって場面
 狙わないでこんな言葉が出るなんて、と茶化してからアキトは教えてくれた。

マキナはね、そこから逃げたことがあるんだ。

つまり、勇者はそのトラウマを見事に抉ったってわけ。

まさしく、痛恨の一撃ってやつだね

ぐっ……
お互い様だから、そこまで気にする必要はないよ?
あん?
保健室での一件
そういやそうだな

 あの時は、こいつらが俺に痛恨の一撃を与えた。 
 けど、そのあとの手当てもしてくれた。
 それに比べて俺は……なにもできなかった。こいつみたいに、気遣ってやれなかった。


まぁ、僕たちはそこまで落ち込みはしなかったけど
別に落ち込んでねぇよ
勇者は優しいね
閣下! 勇者!
 俺が反論する前に、ねここの呼び声。

酷いっすよ、閣下。おれを囮にするなんて……あれ? 

ジジはどうしたっすか?

 ねここの質問には答えられなかったので、アキトにツッコむ。
沸いて出たと思ったら、不法侵入だったのか
ナイスタイミングだったでしょ?
どうせ、見計らってたんだろが
一度、ああいうのをやってみたくてね
ちょっ! おれだけ仲間外れにしないで欲しいっすよ
 ねここは空気を呼んだのか、ジジの消息には触れてこなかった。
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登場人物紹介

主人公、秋葉(あきば)

諸事情により名前は黙秘。作中でさえ語られないものの推理は可能。

ちなみに母親などから「しーくん」と呼ばれている。

両親がパティシエなこともあり、お菓子作りが得意。

高校1年生だが友達はおらず、クラスで孤立している。


芳野アキト。友人たちからは何故だか「閣下」と呼ばれている。

人を食ったような性格で、何を考えているのかわからない。

ピアノの腕前は天才と称されるほどだが、とある事情から距離を置いている。

秋葉と同じ高校1年生で、彼とは別の意味で浮いた存在。

十文字マキナ。友人たちからは「ジジ」の愛称で親しまれている。

見た目はチャラいものの、発言の多くが著作権に触れかねないほどのオタク。

元天才子役だが、とある事情から舞台を去っている。

秋葉と同じ高校1年生で、アキトとは幼馴染の関係。

猫田。下の名前は誰も知らない。友人たちからは「ねここ」と呼ばれている。

アキトやマキナと共にいるのが不思議なほど、特徴のない少年。それを自覚してか、語尾で頑張ってキャラ付けをしている。

秋葉と同じ高校1年生で、アキトとは同じクラス。

四宮初菜(しのみやはつな)、小学1年生。

秋葉の母親の後輩である、和佳子の娘。

年齢に見合わない仕草や影があり、見る人が見れば歪な少女。

江本祥子、小学6年生。初菜にとって、おねーさん的存在。

アキトたちと面識がある様子だが、その関係性は不明。

年齢の割に大人びていて、手が大きい。

四宮和佳子。初菜の母親で年齢は内緒。

秋葉父の教え子であり、秋葉母の後輩。現在は秋葉両親が営むカフェの従業員。

曰く、元キャリアウーマンらしい。旦那とは離婚している。

秋葉の母。女性の菓子職人パティシエール。

夫とは年が離れているからか、年齢の割に少女の面影を強く残している。

秋葉の父。元教師、元彫刻家。現在はパティシエ。

妻との出会いは学校の教師と生徒だが、関係を持ったのは卒業後。

涼子先輩。料理部の部長で高校3年生。

中高一貫なので、中学時代から秋葉のことを知っている。

だが、高校生になってからは一度も会っていない。


 秋葉のクラスの委員長。

 孤立している秋葉を気にかけている。

保険医。サボり癖のある秋葉とアキトが一番お世話になっている先生。

なのに、2人からは名前すら憶えて貰っていない


増田先生。

数学を教えている高校教師で、生徒からは嫌われている。

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