第18話 天才の道標
文字数 1,772文字
それが先ほどと同様――
いや、下手をすればそれ以上の演奏を披露する
そして、本当に楽しそうにピアノの旋律に耳を傾けていた。
先ほどと入れ替わった光景が広がる。
大事な話を邪魔しては悪いと思ってか、
すごかった。どうしたらあんな音が出せるのかって不思議に思った。
気付けば目は芳野先輩の指を追って、聴き入っていた。
それまでは早く帰りたいって思っていたのに……もうピアノなんてやらないって泣いていたのに……
おかげで、芳野たちは気兼ねなく話ができていた。
その為、俺は悪いと思いながらも二人の会話に耳を澄ませる。
そして、芳野との会話は終わったのか、そのまま人混みに流れていく。
芳野はいきなり懺悔した。
どうやら、盗み聞きしていたのはバレているようだ。
ただ、それでも言わなければならないことがあった。
二人の馬鹿を引き連れて、逃げるように講堂を後にしたのだった。