第8話 日常の崩壊
文字数 2,700文字
登校していた俺の下に芳野たちがやって来た。
昼休みに限らず、今日まで俺は一人で過ごしていたのでクラス中の視線が集まる。
勇者? 俺のことか?
そういう気持ちを二文字に込めて睨みつける。
俺の同意も得ずに、芳野たちは無人の机とイスを移動し始める。
心配の言葉はない。
まるで、先日のことなどなかったかのようだ。
だったら、俺から言うべきこともないだろう。
上手くあしらう方法がみつからなかったので、渋々付き合う。
こいつらは俺の恋を笑わなかったんだから、それくらい別にいいだろううと。
だからといって、閣下はないだろ閣下は。
しかし、誰かにあだ名を付けた経験がないので難癖は付けられない。
当然だろ? と言わんばかりに三人が頷く。
どいつもこいつも、俺までふざけた方程式にはめこみやがって……
誰一人として、まともな自己紹介をしやがらない。
結果、呼称は固定される。
一応、芳野だけ知っていて助かった。
閣下なんて、恥ずかしくて言えるはずがない。
どうせ、つながでてくるに違いない。
こんな場所で声を大にして説明されたらかなわないので、俺は釘をさす。
事実、今までの中で一番まともな質問である。
クラスでなにか話し合っていたのは知っている。
が、ここんとこホームルームに出ていないので把握していなかった。
中々に悲惨な状況のようだ。
クレープ屋の遭遇を踏まえると部活はやっていないだろうし、役員はあり得ない。
協力するにも、目的がわからないとやる気が出ない。
一緒になにかをやり遂げるだけでも意味はあるのかもしれないけど、俺には無理だ。
料理部が? と、思うも心当たりはある。
ただ、良く言われていることに若干、刺さる。
全員が好き勝手に口を開いたと思ったら、完結させやがって!
ツッコンでもきりがない。
放置していたら、容赦なく引き込んでくる。
耐え切れず、訊いてしまった。
二人の弁舌に、ねここは簡単に丸めこまれた。疑問点を解決する気を完全に失っている。
かくいう俺も、どうでもいいって思い始めていた。