第12話 魔物の棲む文化祭
文字数 1,641文字
乱暴な声と揺れに、意識が引っ張られる。
そして、目を開けて最初に映るのがジジの顔。
しかも、無駄に上手い裏声付き。
ジジは人差し指を突きつけてきた。
相変わらず、いちいち動作が大きくて鬱陶しい。
俺は言い訳するように答える。
幼馴染のジジが確信を持って言いあてたところからして、芳野とピアノの問題は思っていたよりもずっと大きいようだ。
と、言いつつも目がしらに触れ、その温度を確かめる。
うん、涙は出る気配すらない。
顔をあげると、ジジが口元を手で覆っていた。
しかし、にやけ顔が隠し切れていない。
ジジはころころと表情を変えていく。
その口調までもが変化するから、わかりやすく伝わってくる。
間違っても、妹には会って欲しくない。
こんな奴らと仲良くしていると誤解されたら、兄としての沽券に関る。
俺の言葉を遮って吐き出された台詞は、疑問点にかすりもしない。
それでどこからツッコンでいいか悩んでいる間にジジのペース。
加え、嫌なことを思い出してしまった。
ジジは言い切った感まるだしの表情をしているものの、意味がわからない。
ジジとねここは爽やか過ぎる笑顔で去っていった。
俺の返事など、聞く耳も持たずに――
溜息が沈黙によく響く。
こんな静かな昼休みは久しぶりだった。