第5話 再会、今度は戦闘
文字数 1,889文字
通学途中。
発音が某所みたいでイラつくが、呼び止められた。
男は芝居がかった動きで俺を指さす。
見た目はいわゆる不良。茶色い長髪にきちんと着れていないシャツ。
通りすがる生徒たちの視線など気にも留めていない。通学路の真ん中で平然と握手を求めるなんて、どうかしてる。
人は忘れやすい生物であると同時に自分勝手である。
前言撤回。
それどころか、漫画の台詞を真似るくらいの余裕。へらへらとしていた顔つきが一瞬で引き締まり、まるで別人のよう。
背は俺より低いものの、体格はあちらのほうが引き締まっている。
けど、靴の踵を踏んでいるので、機動性はこちらが上のはず。
更に強く睨みつけるも、怯む様子はない。
むしろ、張り詰めていく。今までにない展開に、不思議と口元が緩んでしまう。
俺は一気に踏み込んだ。
視界に肌色がチラつき、反射的に目を閉じるも止まらない。体が密着。顔面に微かな衝撃があったが、気にせず手を伸ばす。
この状態からでは、首は動かせない。掴んだ! と思ったら腹部に圧迫感――構わず、押し切る!
相手の首を殴る勢いで掴み、そのまま押し倒す――首刈り。
後頭部から落とすと本気で殺しかねないので、途中で支えなければならいのだが――
予期せぬ反撃を食らい、俺は一緒に倒れこんでしまった。
結果、俺は相手の膝に鳩尾からダイブする形になり、相手は後頭部からアスファルトに落ちた。
意外にも返事があった。
こちらは嘔吐感が残っているものの、動けないほどではない。立ち上がり、見下ろす。
どうやら、後頭部からの直接落下は避けていたらしい。
その代わり、背中を強打したか。
しかし、あのタイミングで膝蹴りだけでなく防御までするなんて、大した奴である。
いつの間にか、芳野がいた。
更には女子たちが携帯のカメラを向け、無配慮に撮影している。
周囲から、怒涛のシャッター音。
なのに、二人は微塵も気にしていなかった。
俺の気にしていないふりとは……違う。
今回はやり過ぎたと思うので、素直に従う。
遅い歩み。後ろから、沢山の生徒が追い越す。
校門までつくと、今まで以上に注目を浴びる。ひそひそと声も聞こえる。