第17話 アインザッツ
文字数 1,053文字
トラブルはあったものの、料理部のカフェは無事に開店された。
俺は忙しない部員たちの姿に胸を撫で下ろす。
ぶらついていると、ジジが現れた。
焼き鳥を始め、串に刺さった食べ物を手にしている。
肯定すると、ジジは串に刺さった唐揚げを頬張った。
それを咀嚼し、飲み込むまでの時間を沈黙に使い――
本心なのか、ジジは歩き出した。
俺は小走りで追いかける。
並ぶと、紙袋からはみ出ている串を抜き取る。
タコさんウインナーが五匹突き刺さっていた。
俺はタコさんを一匹噛みちぎる。
安っぽい味だが、何故か二匹目と止まらなかった。
耳を澄ますと、ピアノの音が聴こえてきた。
つまり、騒がしかった喧騒が前方からは聞こえてこない。
ジジは懐かしいと、頬を緩ませていた。足取りも軽くなっているようだ。
徐々に、音が旋律として耳に届く。
聴いたことのない曲。
だけど、いい曲だと思う。
講堂に貼られた様々な展示物。
俺たちを含め、誰もそんな物には目もくれずに芳野のピアノに集中していた。
手が、指が意思を持っているかのように動いている。
あんな狭い鍵盤の上で飛んだり、跳ねたりと、様々な動作が行われていた。
芳野が首を振る。それが合図だったのか、傍にいるねここが楽譜をめくる。
俺が来てから三十分間。
鳴りやまぬピアノは様々なメロディーを奏で、多くの人々を魅了していた。