第13話 仲間になりたそうにこちらを見ている
文字数 2,364文字
文化祭まで、一週間を切った放課後。
芳野の件が気になった俺は、あいつの教室へと足を運んでいた。
といっても、クラスを把握していなかったので教室を一つ一つ覗いていく。
一人が声をあげ、一人が親しみの籠った口調で俺の知らない名前を呼んだ。
そう告げると、去っていった。彼女のあとを追うように、他の二人が続く。
ご丁寧に、俺なんかに頭を下げて通り過ぎる。
そして、すぐに甲高い声が上がった。
賑やかで、楽しそうな話し声。
俺は彼女たちが見えなくなるまで見送ってみるも、誰も振り返りはしなかった。
文化祭のこの時期、見知らぬ誰かに声をかけるのも、かけられるのも。
それに対して、答えるのも答えられるのも――皆にとっては当たり前なんだ。
今まではすぐに帰っていたから、気づきもしなかった。
あの校舎には調理室もある。
最悪を考慮すると、放課後に近づくわけにはいかない。
なんとなくこのまま帰るのが嫌で、一応芳野のクラスに顔を出してみる。
彼女の言う通り、あいつはなかった。
けど、代わりに無理な買出しを頼まれているねここを発見した。
教室には他にも生徒がいるが、誰も止めようとしない。
むしろ、遠巻きに見て楽しんでいるふしさえ感じられる。
だからこそ、男たちは更に脅しつけようとして手を振り上げ――
俺は助けに入る。
男二人の振る舞いは、どう見ても悪役でやられ役。
どうして、自らその位置に立とうとするのだろうか理解に苦しむ。
そして、いつも口から。二人揃って、キャンキャン騒いでいる。強そうな言葉を吐くだけで、一向に動こうとしない。
二対一。
当然、俺は不利なので先に攻撃を仕掛ける。
相手の顔を睨みつけ、視線が合わなかったほうの鳩尾へと蹴りを入れた。
それでもなお、荒げるのは口だけ。
つまらない。
やはり、ジジの時みたいにはいかないようだ。
吐き捨てる男には攻撃せず、床に平伏せさせたほうの頭を踏みつける。ただの見せつけで、力はほとんど込めていないのだが効果覿面。
俺もこのまま晒されるのは辛かったので場所を変える。
ねここは何も言わず、後ろに続く。
けど、何処を歩いていても喧騒が耳に入る。
賑やかな、響き。
文化祭に向け、皆は本当に楽しそうだ。
その音色に追いやられるように、俺たちは昇降口まで行く羽目になった。
ねここはまだ帰らないのか、靴に履き替えはしない。
――きつくないか?
本当に訊きたいことは呑み込んだが、こいつになら伝わるはず。
しかし、開口一番意味不明。
どこかで聞いたことのあるフレーズだが……
理解が及ばず、俺は尋ねた。
すると、ねここは会心の笑みを浮かべて言いやがった。