ジジが背伸びをして覗き込もうとする。
この列では頭一つ分は飛び出ているので目立ち、
すぐに接客係がやってきて、具体的な時間を提示した。もしかしなくとも、面倒な客と認識されたのだろう。
俺の言葉を聞かないで接客係はスカートをひるがえす。
咄嗟に手を伸ばすも、虚しく空を切り――呼び止めようにも、名前がわからなかった。
からぶったとはいえ、躊躇いもなく手を掴もうとするとは!
さすが勇者
そんなことよりも、今のスカートのひるがえり方!
かなり、良くなかった?
自分たちが目立っているって気付いていないのか?
それとも、人の視線なんてどうでもいいと思っているのか、いつものノリで好き勝手に喋りやがる。
はっきり言って、俺は恥ずかしくて居た堪れない気分だ。
涼子先輩。わざわざ、すいません。
けど、俺たちは別に――
ごめん!
せっかく来てくれたところ悪いんだけど、ヘルプ頼める?
秋君が考案したメニューが大人気なの。
あれって結構手間がかかるから、人手をとられちゃって
オーダーを受けてから、卵液にくぐらせてフライパンでソテー。バナナも同様。
添えるアイスも女子の腕力では容易くはいかず、普通に出すだけのケーキより手間が多いのは明らか。
勇者よ。
オレたちが早く座れるように頑張ってくれたまえ
一歩踏み出したのを承諾と勘違いしてか、涼子先輩は前のめりになりかけていた俺の腕を取った。
結構、重要なイベントだと思うよ?
フラグがたつくらいのね
そうっすよ。
トラブル&ヘルプのコンボは決まったも同然っす
アキトとねここは意味不明な言葉を浴びせ、俺を見捨てた。
涼子先輩に引っ張られるまま教室内に入ると、うちのクラスの委員長であろう人が、じぃ~と恨みがましい視線を送ってきた。
それでも、相手に確信が持てなかったので適当な挨拶で誤魔化す。
どうして秋葉君がここに? というか朝礼の時、居なかったよね?
声のトーンが下がる。彼女の目線は繋がれた手に向けられていた。
掴まれている以上、振りほどけはしない。
言葉で煙に巻くしかないと、俺は口を開く。
ちなみにこれが俺の考案メニューで、今から俺が作る奴だ
手を放せばいいものの、涼子先輩はそうしなかったので俺に引っ張られる感じとなった。
そして、そう頼むとみんなが期待の声で迎えてくれた。