第3話 変わった関係
文字数 933文字
チャイムが鳴り響く。
俺は目を覚まして、帰り支度をする。
もちろん、ここは保健室ではなく教室。午後の授業は出て、こうして眠っていた次第だ。
ホームルームは残っているが、ここ最近はお決まりの内容なので帰って構わないだろう。
目敏く、委員長が注意をしてきたが俺は結果的に無視を選ぶ。
何を言っていいかがわからず、黙って鞄を背負って教室を出た。
昇降口で今更なことを呟き、俺は帰路に付いた。
自分の部屋に荷物を置いて、制服のまま店に向かう。
店に入るなり、和佳子さんが出迎えてくれた。
白のカッターにエプロン。以前はバリバリのキャリアウーマンだったらしいが、その面影を見ることはかなわない。
普通はそうかもしれないが、一人でやれることはそんなにない。
なので、店の手伝いをしているのが一番有意義だと思う。
大きなコンテストに出るらしく、ケーキを作ったあとも隣の工房に篭っている。
俺はつなを見下ろし、浮かんでくる感情は妹に対するモノとは微塵も一致しない。
惹かれているのは確かだけど、それは決して――微笑ましい感情なんかじゃなかった。
俺は学校で吐き出す機会のない笑みを零し、暗い感情に蓋をする。
手渡された紙を見る限り、小学校で使うモノのようだ。