あなたが一番愛しているのは私

王子様の苦渋

エピソードの総文字数=1,010文字

……。
フリーザ。
ドラゴンボールのボスキャラだ。
俺はアニメは見ない。女子供の見るものだからな。
だが、俺にも子供の頃はあった。
小学生の時、TVで初めてフリーザ様を見た時ははっきり言ってビビッた。
普通、こういう強い敵っていうのは体がデカイものだ。それまで見た他のアニメでは全部そうだった。
だが、フリーザは違った。
小さい。しかも怒鳴ったりとかしない。
それどころかもの凄く丁寧な、お願いするような言葉を使う。たとえば、部下に対して、
もしこのままおめおめと逃げられてしまったとしたら、あなたに責任をとって死んでいただきますからね。
敵に対してすら、
大サービスでご覧に入れましょう。わたくしの最後の変身を……わたくしの真の姿を……。
それが恐ろしい。
余裕たっぷりでめちゃくちゃ強そうに見える。
白に紫色の小柄な体(このカラーリングがまた冷酷な感じだ)で、後ろには強そうな部下を従えて、ふわふわ浮かぶ椅子みたいなのに悠然と座っている。
あんときゃブルッたね。マジで。
変身して第二形態になったときは巨大化してムキムキになっちまってムカついたのを憶えている。「小さいから良かったのに!」そう兄貴と文句を言い合ったもんだ。
しかし、フリーザが最終形態になったとき、俺たちは二人でワッと叫んだね。
また小さくなったのだ!
しかも今度は角とか余計なものがない、もっとシンプルなデザインだった。
スーパー・フリーザだ。
前にも増してめちゃくちゃ強そうに見えた。
あのとき、フリーザは俺と兄貴の中でフリーザ「様」になったんだ。
そのフリーザ様が俺の前にいた。
……。
一番強い形態だ。
あのとき見たのと変わらない、白と紫のあの姿。
殺るか、殺られるかの大ピンチ。
ベジータの気持ちがよくわかる。
(かなり分が悪い。一発外せば終わり……)
(いや、そんな弱気でどうする。当たらなきゃ当たるまで何回でもブチ込めばいい)
(……しかし当てたとして、そのあとどうする?)
(いや、当てりゃいいんだ。とにかく当たりさえすれば……)
ベジータの奴、こういう気持ちだったのか。
ただのデコハゲじゃなかったんだな。さすがは惑星ベジータの王子様。
イケメンはイケメンを知る、だ。
俺はキミの王子様、なんちて。
……と、余裕をかますことでもできればキマったのだが、俺の胃袋の辺りから聞こえてきたのは「ぎゅるるる」という緊張の音。
ゴクリ……。
(行くしかない。それしか活路が開けないのなら……)
ミチル!
うわっ……か、佳純!?

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