仲直りとエッチ

文字数 1,649文字

……。
一時間後、情け容赦なく片付けられてすっからかんになった部屋のベッドの上で、俺は一人いじけ、背を向けて寝転んでいた。
(なんだよ、断捨離って! 頭オカシーだろ! なんで物捨てたら人生が良くなるんだよ、意味わかんねえ。非科学的にもほどがある。)
要らないモノが沢山あると、それに気を取られて時間や気力が奪われていくのよ。
……佳純はそう言ってポイポイと、ガサーッと、俺の大事な小物を捨てて行った。「古着屋に売る」と、クローゼットの中身まで。
(要らない物なんてないんだよ。全部必要なんだよ)
(明日発売の号に書かれたラッキーアイテムがその中にあったらどうしてくれるんだよ!)
こうして重荷を捨てることで、快適な人生を取り戻すのです!
(今までも充分快適だったっつーの!)
(それに人生の支えなんだよ、全部。俺にとって!)
(うわ、ヤバイ。なんか泣きそー)
メソメソしていると、片付け終わってシャワーを浴びていた佳純がバスから出て来た。
んー? 元気ないぞー、ミチル。
(オメーのせーだ)
元気出させてあげよっか?
佳純がベッドに上がって俺に跨る。
部屋置きのTシャツ一枚で、下はパンツ一枚だ。
薄い布越しに彼女の温もりが押し付けられる。
しかし、俺はふてくされて相手にしない。
……俺、今日はもうEDだから。
ED?
(あれっ? EDって言うんじゃなかったっけ?)
ホントかなー?
(合ってた。よかった)
ホッとしたのも束の間、ヒンヤリとした感触が、俺の下着の中に忍び込んできた。
(あ……)
ホントにED?
い……EDだって……んっ……
じゃあコレはなんなのかな?
ば……やめろって……
怒ってる?
……別に怒ってねーよ。
(すねてるだけだ。それはわかってる)
ねー、こっち見てよ。
お前が見れば?
ヤダ。
……じゃあ知らね。
やっぱ怒ってる。
怒ってねーって。
でもココは怒ってるよ?
ん、あっ……か、佳純……
ね……もっと怒って?
あ……やめ……
ベルトが外されて、怒りん坊の俺を慰める優しいキス。
(やめてくれ……ああっ……そんなことされたら)
ああっ……佳純……
(すねてごめん……。うっ……ああっ!)
ね……して?
そう言って、彼女は腰を浮かすと自分の下着を降ろした。
黙って身を起こす俺。
見て……
佳純が自分から見せつける。そんなの初めてのことだ。
イヤなんじゃなかったの? そーゆーの。
イヤだよ……だっ、だから、そんなこと言ってないで早く……
じゃあなんで……
だって、ミチルもイヤだったんでしょ?
でも、私、どうしても、断捨離をして欲しくて。
新しい私たちの関係を始めたくて……だから……
(そんな風に思っていたのか……全然気づかなかった)
(恋人の気持ちも知らずに一人でいじけてたなんて。俺って小さいな)
(なんて男だ、俺は)
(そうだよ、未来に目を向けろ。過ぎたことにクヨクヨするなんて、らしくなかった)
……馬鹿だな。
つい口を衝いて出た言葉は、自分に対するものだった。
俺はめったに人に向かって馬鹿とは言わない。
言われる気持ちがわかるから。
俺は女の子が好きだし、気持ち良いことも好きだ。この二つは一緒だ。優しい気持ちになれるんだ。
俺は優しい気持ちをもう一度、今度は佳純に対する言葉として口にした。
……馬鹿。
は、恥ずかしいよ。ねえ、早く……
恥ずかしがりたいんだろ?
ああんっ……言われただけで……
言われるの、嫌?
いいよ、ミチル、何でも言って。
見られて、感じる?
うん……
全部見えてるよ。
いやあ……
佳純、愛してるよ……
ああ、ミチル……私も。
もっと見せて……自分で。
ダメぇ……
そう言いながら、彼女はもっと見せてくれた。
俺たちは繋がって、それから手を繋いで、しばらく並んで、キスとかして、また繋がって、絡まって、そんな風に愛し合って、それから、それからで。
……っ
キスじゃなくてちゅーをして、気がすむまでいっぱいして。何回も気持ち良くなって、小さく叫んだり、抱き締めたり、確かめ合って。もう一度、そしてもう一度。
……! ……!!!
それから、ようやく……ぐったりとして、軋むベッドを休ませることにしたんだ。
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登場人物紹介

石神佳純(いしがみ・かすみ)
通称:ジュン

大学三年生。
彼氏ナシ。しかし……?

城戸充(きど・みちる)
通称:ミチル

佳純と同じゼミに在籍するイケメンプレイボーイ。
彼女ナシ。しかし……?

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