灰色のイケメン・ブレイン

文字数 969文字

飲み会が終る頃には、女の子たちは俺の周りには寄りつかなくなっていた。
明日からキャンパス内に変な噂が立ったら……そのときはそのときだ。
……。
(ああ、そうとも。そのときは、そのときだ。畜生、佳純め!)
しかし、そこまでの犠牲を払ったにも関わらず、田所君を知ってる子はいなかった。
うーん、この場にいないのかな。
ハイ、それではここらで一次会を終わりま~す♪
赤坂先輩がタイムアップを告げる。
俺は近づけないなりにも一応、目を配っていたクリちゃんの傍らへ、周りの男どもをかいくぐって辿り着き、ようやく口をきくことができた。
どうする?
えへへへぇ……知っれまひたぁ? りろる・そるじゃーって、えっちな意味があるんれすってえ……
(げ!)
(飲まされているとは思っていたけど……こらあかん)
ケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラケラ♪
(完全にデキ上がっとるやないか~い!)
しかも笑い上戸みたい。
二次会に参加の人はこっちへー!
いきます! いきますぅ~♪
(ええ~っ……)

上機嫌でクリちゃんが参加の意思を表明すると、周りの野郎どもが色めきたった。一斉に狼の目つきとなる。一匹狼ではなく、群れる狼が獲物を見る目つき。慌てたのは俺だ。
(カッコイイなんて思ってたけど、一匹ってなんかすっごく心細い……)
ね、ねえ、クリちゃん……。
(あ。口に出しちゃった!)
なあにぃ?
(……でも、気にしてないみたいだしまあいいか)
今日はもうやめとこうよ。田所君って、いなかったんだよね?
だぁろころくぅんはぁ~いなかったかもぉ……
じゃあ今日はもう帰ってさ……
……いたかぁもしれなぁい♪
(ダメだこりゃ)
(しかたねー。田所君捜索は一旦あきらめて、あとは護衛の任務だけに専念するか)
(この後、飲ませないようにすれば、酔いがさめてそこのところが確認できるかもしれないし)
俺の灰色のイケメン・ブレインが方針を切り替え、後はもうクリちゃんから離れない事にする。
ミィチィルくぅんは私のものお~♪

……そう言ってクリちゃんは俺の腕にしがみつき、こうして俺たちは二次会へと向かう集団の中に入った。
狼の群れの中に。
(ううっ……頑張れ、俺)
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登場人物紹介

石神佳純(いしがみ・かすみ)
通称:ジュン

大学三年生。
彼氏ナシ。しかし……?

城戸充(きど・みちる)
通称:ミチル

佳純と同じゼミに在籍するイケメンプレイボーイ。
彼女ナシ。しかし……?

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