百戦練磨の男
文字数 1,440文字
その夜。すなわち、ファミレスを出てすぐに直行することになったのは、「リトル・ソルジャー」の飲み会だった。
「リトル・ソルジャー」とは、ウチの大学の非公認サークルで、男女の会員たちの自由かつ奔放な交際を目的とする。佳純がそう教えてくれた。
そんなサークルがあるなんて全然知らなかった。
会長は俺たちの一コ上の赤坂ナントカとかゆー先輩。
↑この人だ。
家が金持ちらしく、豪華なマンションに一人住まい。そして、そこで定期的にムフフな会合を開いているのだそうだ。
赤坂と城戸っていったらウチのガッコの二大ヤリチン君だからねえ……
(……っていうか、ファミレスみたいな公共の場でヤリチンとか口にするのってどーかと思う。俺だって、クリちゃん我慢してんのに)
一匹狼の俺はあまりそういうヤリ的なサークルのことなど詳しくなかった。
俺が普段付き合ってきた女の子って、あんまりそういう子いないんだよね。赤坂先輩なんぞ、名前すら知らなかったし。
その赤坂先輩は、先ほどの挨拶のときにパッと見た感じ、そんなにオンナにモテそうとも思えなかった。フツーの大学生の兄ちゃんて感じで、とてもヤリサーを主催してるなんて雰囲気じゃない。
クリスちゃんの好きな人がね……リトル・ソルジャーに勧誘されちゃったみたいなんだって。
それでね、その人がもし入会してたら、連れ戻して欲しいの、ミチルに。
佳純がクリちゃんに尋ねる。あ、これはファミレスでの会話ね。
最初はクリスちゃんが自分で行くって聞かなかったんだよね。
で、私は危ないからそんなのやめときなって意見なんだけど、どうしてもって……このままにしたら一人で行っちゃいそうで……
そこでキミに白羽の矢が立ったというわけなのだよ、ミチル君!
(よーするに、田所君がいないかどうかクリちゃんが確認して、もし居たらサークルを抜けるよう説得する、その間、俺がついてボディーガードをしてろってことか……)
プレイボーイだしな。そう言われれば悪い気もしない。
(クリちゃんに何を話した───────っ!!!!!)
俺と佳純の間で視線がスーパーボールのようにバウンドしたが、お互いその話題をこの場でこれ以上広げないほうがいいという判断に落ち着いた。
まっ! とにかくちゃんとエスコートするんだよ、ミチル! 奴らの会合は今夜これからだからね!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)