告白

文字数 1,356文字

それで……友達に頼んでミチルを試すことを思いついたの。
乱交サークルに参加させて、他の女の子に色目を使うかどうかを確かめてもらおうって……。
(ええええ~!? そこまでする?)
(全く、ぶっとんだことを思いつく女の子だなあ。それとも、やっぱり俺がよっぽどな男だったのか?)
(いや、それは常識的にいって考えにくい)
(そりゃあ美人に鼻の下を伸ばすようなことはあるかもしれないだろうけど、乱交とか、そんな刺激的すぎるテストをする必要がある男なんて世界中探したっていないだろ)
(……と思う)
(記憶喪失だから、そのへん、断言するには少し心もとないけど……)
(まあ、女の子にありがちな猜疑心とか嫉妬ってやつなんだろーな!)
それで……結局、どうだったの? その、乱交パーティで……俺は?
「ミチル君は心配要らない」って、クリスちゃんは言ってた。
クリスちゃんというのは俺を乱交サークルに連れて行き、監視をしていた友人の子だ
その付添人というか、見届け人に認められたというのには少しホッとしたが、当たり前だろうという気もする。
(めっちゃ愛してる感じだもんな~「佳純命」みたいな……ケータイのアレを見るに)
……。
そんなことに思い巡らせる俺の手を彼女はずっと握っていてくれた。
でも、もういいの……結果がどうだったかなんて。私……私、ミチルがいなくなったらどうしようって……。
(この子……石神さんも可哀相に)
俺は彼女をどうすればいいだろう。
彼女との思い出は何もないというのに。
彼女は俺のことをあんなに必死になって泣いて抱きしめるほど愛しているというのに。
俺はどうすればいい?
そんなことを聞いてどうするんだ。悲しませるだけじゃないか。
……とも思ったが、俺は彼女に尋ねてみることにした。
石神さん……俺は……
佳純って……呼んで。
その言葉を聞いた時、何故だか知らないが俺の魂が震えた。
そして悟った。
(なあんだ。心配することなんかないじゃないか。失ったもののことなんて)
(前だけ見ればいいんだ。今、そばにいてくれる人と一緒に)
「佳純」……。
勇気を出して呼び捨てで呼ぶ。
恥ずかしい。
当たり前だ。
今の俺には彼女とつきあっていた記憶がないのだから。それどころか、女の子とつきあった経験だってない。

俺はまだ人生を一日すら生きていない。
あの……変なことかもしれないけど、聞いてもらえますか?
いいよ、ミチル、何でも言って。
その、俺のこと……
(ああ、めちゃくちゃドキドキする……)
(まともに彼女の顔が見られない。勇気だせよ、俺!)
……。
……彼氏にしてもらえますか?
彼女にとっては二度目かもしれないが、俺にとっては初めての告白だ。
不安で胸が苦しくなる。
これが恋ってやつなのか。
俺は彼女の他に女を知らない。
断られたらどうすればいい。
だが、そんな心配はいらなかった。
当たり前じゃない……!
……。
当たり前じゃない!
そして、彼女は俺を優しく抱きしめてくれた。
抱き締められたのはこれで二度目だ。
今度は……俺も、ちゃんと応えた。
ありがとう。愛してるよ、佳純……君だけを。
私も……ありがとう、ミチル。
彼女は俺の知るただ一人の親しい女性。
そばにいてくれるだけで、感謝するべきなのは俺の方なのに。
嬉しい……ありがとう……。
どうしてだか、彼女はそう言って、ぎゅっと強く俺の体にしがみついた。
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登場人物紹介

石神佳純(いしがみ・かすみ)
通称:ジュン

大学三年生。
彼氏ナシ。しかし……?

城戸充(きど・みちる)
通称:ミチル

佳純と同じゼミに在籍するイケメンプレイボーイ。
彼女ナシ。しかし……?

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