第1話

文字数 958文字

「美香…、いいだろう…」

「イ、イヤよ…。結婚するまでは我慢してくれるって約束したじゃない!」

舌を絡ませる濃厚なキスを許した美香は、下半身に手を触れようとした俊樹の手を右手で払い除けた。
「後一ヶ月で結婚式なんだから、それが終わればいつでもできるでしょう?
約束だから我慢してよ!」
美香との結婚式を後一ヶ月に控えた俊樹は、美香と付き合う時にセックスは結婚するまではやらないとの約束をさせられていたのであった。
俊樹にしてみれば拷問に近い約束であったが、美香の言うとうりに結婚さえすればいつでも出来るので我慢することにしたのだ。
それほど美香はいい女だった。
俊樹が今まで付き合った女の誰よりも魅力的で、美香とやれないことが余計に結婚への意識を高めさせたのだった。
先週、美香のお父さんと会い、自分の両親も紹介した。
そして来月には結婚式を挙げるところまでこぎつけた。
俊樹の気持ちは体と一緒で昂っていたのだった。

美香と出会ってまだ三ヶ月しか経っていない。
俊樹の常務昇進パーティーの時に知り合いの女性の友人が新川美香であった。
美香は他のどの女性より魅力的で、俊樹は生まれて初めての一目惚れという体験をしたのだ。
女性体験はわりとある方だと自負をしていたが、美香の前だとからっきしダメで、その時から結婚するならこいつしかいない!と、決めてしまったほどだ。
そして猛アタックの連続でようやく結婚にありつくことができたのだった。
だが、最初に約束さされたのは、結婚式までは必ず処女でいさせてくれること。
これは亡くなったお母さんの遺言らしく、それだけは頑なに守ってくれるように頼まれたのであった。
この約束は俊樹にとって、なによりもきついものだった。
いつも女性と付き合う時はすぐに関係を持ち、奉仕のセックスを望む俊樹であったが、この時ばかりは長い長いお預けを食らうことになってしまった。
しかも、当たり前のようにその間の他の女性とのセックスなどあった場合はすぐに婚約解消で、多額の賠償金を払う約束もさせられてしまったのだ。
当たり前といえば、当たり前のことだが、それはセックスマシーン化していた俊樹にとっては、地獄の三ヶ月であった。
しかしそれも後一ヶ月で終わる。
だが、これからの一ヶ月が長いのだった。
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