第18話

文字数 972文字

その日の夜、パープルに窪田はいた。
志保に今日の報告をする為だ。
「あら、いらっしゃい。
どうだった?お気に召した?」
席について何分もしないうちに志保が席についた。
明日会議を開きそれで問題がないようだったら、夕方に宮本の携帯に連絡を入れることを志保に話した。
「そう、よかったじゃない。
その土地でマンション建てるんでしょ?
立地もいいし、分譲だったらすぐに埋まるわね。
なんならルイ13世だそうか?」
「いや、それは商談がちゃんと決まってからだな。
ここでそれ入れたら今日の支払いが百万円じゃあ効かなくなるよ」
ルイ13世は銀座のクラブで頼めば
百万円かかると言われていた。
志保がこのパープルをやり出してからも何本も出てはいなかった。
「ルイ13世くらい何十本でも入れれるわよね。
クーさんがこの商談まとまれば…。
冗談よ、冗談。
クーさんにそんなお金使ってもらおうなんて思ってないから……」
あながち冗談とも言えない志保の発言に、商談が成立した日にはそれ以上のお礼はもちろんするつもりの窪田だった。
次の日会議でゴーサインが出た。
後は売買契約を締結して決裁を迎える日を待つだけだった。
窪田は会議の後すぐに宮本の携帯に連絡を取った。
「もしもし、宮本さん?
窪田不動産の窪田です。
昨日の話、会議でオッケイが出ましたのでよろしくお願いします。
斎藤さんとの本人確認と売買契約の書類等のこともありますので、いつがよろしいか後で連絡いただけますか?」
と宮本に聞くと、「こちらは三日あれば書類を揃えられますので金曜日はいかがですか?」
宮本の言う三日あればこちらもいろんな段取りはできる。
「では、その時に登記申請書類などの全ての書類を用意していただけると言うことでよろしいですね」
「はい、もちろん全て用意して持ってまいります」
「契約する場所はこの前最初にお会いしたホテル、プリンスの会議室を借りますので、午後一時丁度でいかがでしょうか?」
「それで結構です。
ではその時までに必要書類を用意しておきます」
宮本は窪田の話に全て合意をして、金曜日の一時に決済を行うことを了承した。
窪田はその事を志保にも伝えて、決済が終了したら店に顔を出してパーっと祝杯をあげる事を約束した。
それが甘い罠だとも知らずに窪田は浮かれていたのだ。

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