第20話

文字数 1,294文字

デュークは丹念にターゲットを選んだ。
まずは場所選びが一番重要な事項だった。
今回詐欺をするのは志保としてみれば五年以上ご無沙汰だったが、デュークはその五年の間に三度地面師の仕事を敢行していた。
金額的には三億円から五億円の土地の価格の仕事が大半であった。
地面師は何人かのメンバーでの仕事になる。
一人ではとてもできる詐欺ではない。
首謀者がいて参謀が一人から三人はいる。
あるいはそれ以上人を使う時もある。
それを全て首謀者が手配師となり誰が何をするのかを決めていく。
デュークはパープルのママに志保を据えた後にまずは一年以上かけて凛を信用させた。
それと合わせて上客の中から、志保に好意を持っていてしかも金を自由に動かせる人物をターゲットにするつもりだった。
当初デュークは一年経ったら動くつもりでいたが、なかなかめぼしい土地が見つからなかったのも半年以上行動が遅れてしまった原因だった。
二年で志保のママとしての契約がキレるので出来るだけ早めに行動を起こさなくてはならなかったが、クラブの売り上げがデュークが思っていたよりも遥かによかったので焦る事なく、ターゲットを探すことができた。
それも全て志保のお陰だった。
デュークの思っていた以上に志保は動いた。
デュークの得た情報で塩松建設も利益を出したことがターゲットの窪田のハートに火をつけたのも事実だった。
窪田はまさかクラブのママが詐欺師のメンバーであるなどと思うことなど、1ミリも無かったに違いない。
それはそうだ。
仮にも銀座のクラブのママである。
それにどうしても一度は絡み合いたいと思っていたし、出来ることなら一緒になる事まで考えている女性である。
デュークは今回土地の所有者、斉藤大作について調べ上げた。
1946年2月18日生まれの戌年
子供はいなく五年前に女房を亡くしてから一人暮らしで近くに親戚はいない。
近所付き合いはあまりなく、先月から老人ホームに入る事を調べ上げた。
その事を知る人は周りにはほとんどいない。
後は斉藤大作のダミーを用意すればよかった。
デュークは二ヶ月前に斎藤の年と同じくらいでうまく話のできる男を探した。
最終的に二名に絞り、最後は学生時代演劇部だったという小坂部という七十代前半の男を選んだ。
小坂部は五十代までは大阪でクリーニング店を何件かやっていたが、博打好き故、全てを失って離婚をして、東京に知人を頼ってやってきた。
だが、ギャンブル好きは治らず、今は警備会社でその日暮らしの生活をしていた。
デュークが競馬場で放心状態の小坂部を見つけて、酒を飲ましたのが知り合うきっかけだった。
「干支は?」
「1946年生まれの戌年です」
デュークが不躾に質問したことに瞬時に答えた。
「聞かれた質問にだけ答えたらいい。
今聞かれたのは干支だ。
何年生まれかを聞かれたのではないぞ」
デュークは聞かれてもいないことに答えた小坂部にすっぱく言い聞かせた。
出来るだけ話は簡潔に済ませるに越した事はない。
いらない事を話してしまうと必ずボロが出る。
デュークはそれを何度も経験しているのだ。
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