第9話

文字数 836文字

美香が旅行に行ってから俊樹への連絡はもちろん毎日あった。
そしてついに二週間目の最終日となり明日の夕方美香が関西方面から帰る日となった。
「今夜で終わりだね、私との関係は…」
俊樹は、今日はユイとの契約の最終日ということで、ホテルのスイートルームを取って泊まることにした。
スイートルームを取ったわけはユイと最後の夜と言うよりも、ユイに対しての感謝の気持ちを込めた意味での俊樹の計らいであった。
美香との結婚を知りながら関係を持ってしまって,体だけの関係と割り切りながら二週間も付き合ってくれたことに感謝したのだ。
もちろん約束の百万円も封筒に用意していた。
部屋に入り最後になるユイとの夜を惜しむかのように、俊樹はユイの身体をむさぼった。
まるで初めて会った夜のように激しく求めた。
ユイとの最後のセックスだと思うと何度も何度も求めてしまう。
やはり少し後ろめたさがある方が燃えるのかもしれないと、ふと考えた俊樹だった。
ユイの最後の夜は甘い香水をつけていた。
その匂いがまた俊樹の感情を昂らせる。
結局その日も朝までほとんど寝ることも惜しんで身体を求め合うのだった。

「じゃあ、元気でね…」
ユイの最後の言葉に俊樹は頷き、それを見たユイは少し微笑みながら手を振った。
美香と出会わなければ、ユイと一緒になっていたかもしれない。
そんなことを考えていた俊樹だったが、ユイが去った今、美香の事を考えなければならなかった。
まず、ユイから浮気の話が漏れることは無い。
そのための口止め料だったし、ユイの気性からして何も話さないだろうと俊樹は確信していた。
いよいよ今日の夕方美香が帰ってくる。
やりたいムードの二週間前の感じに戻す必要が俊樹にはあった。
ギンギンにぎらついている感じを醸し出さないと、感のいい美香は他の女と交わったことに気づくだろう。
自分を問いただす可能性は充分にある。
それをすり抜けなくてはいけない。
俊樹はツバをゴクリと飲み、夕方の戦いにそなえた。
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