ぼくが考えた最強の作戦
文字数 2,755文字
本当は、この『パイ☆パニック』も『湯けむり女将のナントカ』も巨乳好きな飯倉和亮にあげるつもりでいたが、梱包してしまい飯倉に渡せなかった。最初は相澤にあげようかと思ったが、相澤は清楚系一択だから女将のおっぱいに食指は動かなかったし、こう言っていた。
『俺、松永さんのお父さんとの思い出をAVで上書きされたくないです』
ごもっともだなと俺は思い、飯倉に出処は伏せて話すと『見ます! 欲しいです!』と元気に言っていた。飯倉は本当にいい子だ。
何と答えようかと考えていると、優衣香は少しだけ意地悪そうな目に変えて口を開く。この目は見たことがある。何かを企んでいる時の目だ。イヤな予感がする。優衣香は俺の左手を取るが……。
「痛たたたたっ!! やめっ! 優衣ちゃ痛たたたっ!!」
優衣香は俺の小指を手の甲に向けて押している。護身術か。いや、これは逮捕術でもある。
――チンパンジーめ。ロクでもないことを教えやがって。
だが小指がダメならと、喉輪、目潰し、金的と段階を踏むはずだ。さすがに目潰しと金的はしないと思うが、どうしよう。
「優衣ちゃん! ダメなのっ!」
小指から手を離した優衣香はまた頬を膨らましていた。可愛いが、絶対に『パイ☆パニック』は見せられない。だが――。
「おっぱい揉みたい?」
「うんっ!!」
何をやっているんだ。俺はまた条件反射でうっかり元気よく答えてしまった。
「なら見せて」
「ダメなの」
「ならおっぱいダメ」
そう言って優衣香は両腕を組んでおっぱいを押さえてしまった。モミモミ出来ない。だが、『パイ☆パニック』は見せられない。
俺は頬を膨らまして『ダメ』と言い、また片付け始めた。優衣香は諦めたようだ。
その時、ダイニングテーブルに置いた俺のプライベート用のスマートフォンが震えた。優衣香はすぐに気づき、俺に視線を寄越す。少し不安そうな表情の優衣香に胸が痛む。仕事ではないと伝えると安心したのか笑顔になるが、俺の電話が鳴ると嫌な気持ちになるのだろう。
スマートフォンを確認すると、兄からのメッセージだった。電話したい旨が書かれている。
優衣香に伝え、リビングを出て玄関で兄に電話をした。
着信音は二度鳴ることはなく、兄の声が耳に流れ込む。普段はメッセージのみで電話をすることは稀で、久しぶりに聞く電話越しの兄の声は焦っているようだった。
「バニーガールのAVが無いんだよ」
――お父さん、お兄ちゃんがロクでもないことを言ってるよ。
「ほら、お父さんの部屋で見つけたバニーガールのAV。団地妻はあるんだけど――」
タイタニックに擬態した『パイ☆パニック』を持ちながら、弟の俺は唇を噛んでいた。何と答えるか考えているが、ロクでもない言葉は続いている。
「――バニーガールがあったとこに逆バニーのエロアニメがあってさ、敬志か中山が忍び込んですり替えたのかなって思って」
――俺らはそんなロクでもないことはやらないよ。
「逆バニーのニプレスと前貼りって何?」
「えっと、ハート型」
「ハートか……星じゃないんだ」
「敬志、それは関係あるの?」
「多分無い、かな」
兄の家は玲緒奈さんが家中に様々なトラップを仕掛けていて、忍び込んだ奴は玲緒奈さんに捕獲されて酷い目に遭っている。中山は九割五分侵入に成功しているが、捕獲された時はメンタルをエグられているようだ。俺はだいたい失敗しているから、だいたいは物理攻撃されている。とても辛い。
「お兄ちゃん、バニーガール見ようとしたの?」
「うん。今、玲緒奈はいないし、拓志 はバイトで剛志 も麻里奈 も夏期講習でいないんだよ。家に一人なんて久しぶりでさー」
「そうなんだ」
俺は兄の家に侵入していないし、中山もしていない。残るは玲緒奈さんだが……兄は怖くて聞けないのだろう。気持ちはわかる。
「とりあえず逆バニー見とくわ」
「そう」
「じゃあなー」
よくわからない兄の電話は終わり、俺はリビングに戻る。リビングに入ると、優衣香は俺を見て目を輝かせて口を開いた。
「こういうの敬ちゃ……好きなンフッ……」
優衣香が手に掲げていたのは『湯けむり女将のナントカ』のDVDだった。男性客数人にご奉仕する若女将の湯けむり女将のナントカだ。ジャケ詐欺でもなかったし、おっぱいも敬ちゃん好みで何度か見た湯けむり女将のナントカだ。
――忘れてた。
優衣香は涙目だ。肩を震わせて俺を見ている。優衣香の笑顔は大好きだが、笑いすぎて可愛いとも言えないギリギリのラインだ。そんな優衣香を見つめていると、ロクでもないことを言い出した。
「でも敬ちゃんって女教師モノが好きなんでしょ?」
――なんで知ってるのっ!
「いや、それは……」
「玲緒奈さんが言ってたよ?」
――あのモンスターめ! 余計なことを!!
俺はその目をじっと見つめると、優衣香は笑った。そして俺の警戒をよそに、何かを隠すように笑顔のまま微かに視線を彷徨わせながら、俺に近づいて小さな声で囁く。
『ねえ、女教師モノで、する?』
――しないわけがないだろう。
「いいの? 優衣ちゃん……」
「うん。今日、飲みに行って、それからホテル、行かない?」
「……いいね」
酒に酔って、そのままか……。
ヤバいな、楽しみすぎて敬ちゃんの敬ちゃんが反応してる。無理もない。女教師モノの優衣香だ。Tバックの優衣香だ。黒ストは穿いてくれるのだろうか。優衣香の黒ストを破きたいと言ったら、優衣香は許してくれるだろうか。
――ヤバいな、敬ちゃんの敬ちゃんがもっと元気になってきたぞ。
俺は優衣香を引き寄せ、唇を重ねた。優衣香は気づいて、指先を下腹部へと動かしている。
唇を重ねたまま、目が合う。
優衣香はそっと唇を離して、甘えた声で囁いた。
「タイタニックの中身、見せてくれたら、ね」
――セコい! 優衣ちゃんセコい!
だが俺は思った。
すでに『湯けむり女将のナントカ』を見られてしまったのだ。『パイ☆パニック』を見られても問題無い。エグい性癖のモノでもないし、南国のビーチではしゃぐ女の子のおっぱいがいっぱいの『パイ☆パニック』だ。問題無い。しかし、このまま圧力に屈したままなのは嫌だ。どうしようか。
「じゃあ、いいよ、一緒に見ようよ」
「……中身はタイタニックなの?」
「うん、タイタニック、だよ」
「じゃ、早く片付けちゃおうねー」
――敬ちゃんが考えた最強の作戦、初動は成功だ。
優衣香と『パイ☆パニック』を見ながら優衣香のおっぱいをモミモミする。ぼくが考えた最強の作戦はおっぱいがいっぱい――敬ちゃんは頭いい。
明日、三十八歳の誕生日を迎える俺は、幸せを噛みしめながら片付けを再開する。
おっぱいモミモミしながらパイ☆パニック、そしてラブホで女教師モノだ。
最高の誕生日前夜祭に向けて、俺の心は高鳴っていた。
『俺、松永さんのお父さんとの思い出をAVで上書きされたくないです』
ごもっともだなと俺は思い、飯倉に出処は伏せて話すと『見ます! 欲しいです!』と元気に言っていた。飯倉は本当にいい子だ。
何と答えようかと考えていると、優衣香は少しだけ意地悪そうな目に変えて口を開く。この目は見たことがある。何かを企んでいる時の目だ。イヤな予感がする。優衣香は俺の左手を取るが……。
「痛たたたたっ!! やめっ! 優衣ちゃ痛たたたっ!!」
優衣香は俺の小指を手の甲に向けて押している。護身術か。いや、これは逮捕術でもある。
――チンパンジーめ。ロクでもないことを教えやがって。
だが小指がダメならと、喉輪、目潰し、金的と段階を踏むはずだ。さすがに目潰しと金的はしないと思うが、どうしよう。
「優衣ちゃん! ダメなのっ!」
小指から手を離した優衣香はまた頬を膨らましていた。可愛いが、絶対に『パイ☆パニック』は見せられない。だが――。
「おっぱい揉みたい?」
「うんっ!!」
何をやっているんだ。俺はまた条件反射でうっかり元気よく答えてしまった。
「なら見せて」
「ダメなの」
「ならおっぱいダメ」
そう言って優衣香は両腕を組んでおっぱいを押さえてしまった。モミモミ出来ない。だが、『パイ☆パニック』は見せられない。
俺は頬を膨らまして『ダメ』と言い、また片付け始めた。優衣香は諦めたようだ。
その時、ダイニングテーブルに置いた俺のプライベート用のスマートフォンが震えた。優衣香はすぐに気づき、俺に視線を寄越す。少し不安そうな表情の優衣香に胸が痛む。仕事ではないと伝えると安心したのか笑顔になるが、俺の電話が鳴ると嫌な気持ちになるのだろう。
スマートフォンを確認すると、兄からのメッセージだった。電話したい旨が書かれている。
優衣香に伝え、リビングを出て玄関で兄に電話をした。
着信音は二度鳴ることはなく、兄の声が耳に流れ込む。普段はメッセージのみで電話をすることは稀で、久しぶりに聞く電話越しの兄の声は焦っているようだった。
「バニーガールのAVが無いんだよ」
――お父さん、お兄ちゃんがロクでもないことを言ってるよ。
「ほら、お父さんの部屋で見つけたバニーガールのAV。団地妻はあるんだけど――」
タイタニックに擬態した『パイ☆パニック』を持ちながら、弟の俺は唇を噛んでいた。何と答えるか考えているが、ロクでもない言葉は続いている。
「――バニーガールがあったとこに逆バニーのエロアニメがあってさ、敬志か中山が忍び込んですり替えたのかなって思って」
――俺らはそんなロクでもないことはやらないよ。
「逆バニーのニプレスと前貼りって何?」
「えっと、ハート型」
「ハートか……星じゃないんだ」
「敬志、それは関係あるの?」
「多分無い、かな」
兄の家は玲緒奈さんが家中に様々なトラップを仕掛けていて、忍び込んだ奴は玲緒奈さんに捕獲されて酷い目に遭っている。中山は九割五分侵入に成功しているが、捕獲された時はメンタルをエグられているようだ。俺はだいたい失敗しているから、だいたいは物理攻撃されている。とても辛い。
「お兄ちゃん、バニーガール見ようとしたの?」
「うん。今、玲緒奈はいないし、
「そうなんだ」
俺は兄の家に侵入していないし、中山もしていない。残るは玲緒奈さんだが……兄は怖くて聞けないのだろう。気持ちはわかる。
「とりあえず逆バニー見とくわ」
「そう」
「じゃあなー」
よくわからない兄の電話は終わり、俺はリビングに戻る。リビングに入ると、優衣香は俺を見て目を輝かせて口を開いた。
「こういうの敬ちゃ……好きなンフッ……」
優衣香が手に掲げていたのは『湯けむり女将のナントカ』のDVDだった。男性客数人にご奉仕する若女将の湯けむり女将のナントカだ。ジャケ詐欺でもなかったし、おっぱいも敬ちゃん好みで何度か見た湯けむり女将のナントカだ。
――忘れてた。
優衣香は涙目だ。肩を震わせて俺を見ている。優衣香の笑顔は大好きだが、笑いすぎて可愛いとも言えないギリギリのラインだ。そんな優衣香を見つめていると、ロクでもないことを言い出した。
「でも敬ちゃんって女教師モノが好きなんでしょ?」
――なんで知ってるのっ!
「いや、それは……」
「玲緒奈さんが言ってたよ?」
――あのモンスターめ! 余計なことを!!
俺はその目をじっと見つめると、優衣香は笑った。そして俺の警戒をよそに、何かを隠すように笑顔のまま微かに視線を彷徨わせながら、俺に近づいて小さな声で囁く。
『ねえ、女教師モノで、する?』
――しないわけがないだろう。
「いいの? 優衣ちゃん……」
「うん。今日、飲みに行って、それからホテル、行かない?」
「……いいね」
酒に酔って、そのままか……。
ヤバいな、楽しみすぎて敬ちゃんの敬ちゃんが反応してる。無理もない。女教師モノの優衣香だ。Tバックの優衣香だ。黒ストは穿いてくれるのだろうか。優衣香の黒ストを破きたいと言ったら、優衣香は許してくれるだろうか。
――ヤバいな、敬ちゃんの敬ちゃんがもっと元気になってきたぞ。
俺は優衣香を引き寄せ、唇を重ねた。優衣香は気づいて、指先を下腹部へと動かしている。
唇を重ねたまま、目が合う。
優衣香はそっと唇を離して、甘えた声で囁いた。
「タイタニックの中身、見せてくれたら、ね」
――セコい! 優衣ちゃんセコい!
だが俺は思った。
すでに『湯けむり女将のナントカ』を見られてしまったのだ。『パイ☆パニック』を見られても問題無い。エグい性癖のモノでもないし、南国のビーチではしゃぐ女の子のおっぱいがいっぱいの『パイ☆パニック』だ。問題無い。しかし、このまま圧力に屈したままなのは嫌だ。どうしようか。
「じゃあ、いいよ、一緒に見ようよ」
「……中身はタイタニックなの?」
「うん、タイタニック、だよ」
「じゃ、早く片付けちゃおうねー」
――敬ちゃんが考えた最強の作戦、初動は成功だ。
優衣香と『パイ☆パニック』を見ながら優衣香のおっぱいをモミモミする。ぼくが考えた最強の作戦はおっぱいがいっぱい――敬ちゃんは頭いい。
明日、三十八歳の誕生日を迎える俺は、幸せを噛みしめながら片付けを再開する。
おっぱいモミモミしながらパイ☆パニック、そしてラブホで女教師モノだ。
最高の誕生日前夜祭に向けて、俺の心は高鳴っていた。