第八章(二) 激闘、お笑いバトル

文字数 1,630文字

 ハリセンは仙人のお宝で、間違いなかった。とはいえ、いくら仙人のお宝でも、ハリセンで戦えるとは思えなかった。
 アポカリプスの目が光った。予知できなった。
 即死級の光線が天笠を襲う、と感じたときには、すでにハリセンを持つ手が勝手に動いた。ハリセンは光線を弾き返した。

「無礼である」ハリセンから声がすると、天笠の体がハリセンに引きずられて動いた。
 ハリセンがアポカリプスBの頭を叩くと「パン」と、いい音を立てた。アポカリプスBが膝を突いた。
 戦車砲を受けても、地対空ミサイルを浴びても、微動だにしなかったアポカリプスBは、ハリセンの一撃で膝を突いた。

 追い討ちを懸けようすると、ハリセンが拒否するように天笠の体を引っ張った。
「無粋である」ハリセンが天笠の頭を打った。上から砂袋が落ちてきたような衝撃を受けて、天笠は両膝を突いた。

 今度はアポカリプスBがチャンスと見たのか、大きな腕を天笠の頭に振り下ろした。
「非礼である」ハリセンが自動的に動いて、アポカリプスBの拳を打った。アポカリプスBが大きな衝撃を受けたように仰け反った。

 今が好機と、アポカリプスBの顔をハリセンで打とうした。
「野蛮である」ハリセンが天笠の手を操って、再び天笠の顔を打った。痺れるような痛みが顔に走った。
 轟音(ごうおん)が聞こえてきた。空を見上げると、千体を超える光る物体が加速して突撃してくる姿が見えた。
 アポカリプスBの上空で待機していた手下の全てに、落下攻撃を仕掛けさせた。避けようがないと、覚悟した。

「無駄である」ハリセンが自信満々に発言した。ハリセンが天笠の体を操って、大きく振りかぶらせて、フルスイングをさせた。
「キーン」と高い音が響くと、千体近いアポカリプスBの手下は、空中で全て、あっさり燃え尽きた。
 アポカリプスBは静止した。天笠も動きを止めた。

 互いに理解した。どんな攻撃をしても、ハリセンに止められ、逆にハリセンに攻撃をされる。下手に動けば、墓穴を掘る。
 動きを止めたまま、ハリセンに丁寧に頼んだ。
「屍解仙をやっております天笠庵と言いますが、お願いがあるんです。アポカリプスBを倒すために、力を貸してもらえませんか。人類の滅亡を回避したいんです」

 ハリセンは、なぜかアポカリプスBに声を掛けた。
「確認する、アポカリプスB。其方(そのほう)は人類を滅ぼしたいのか?」
 急に話を振られたが、アポカリプスBは素直に「YES」と口にした。
 得心が行った口調でハリセンが発言した。

「そういった事情なら、あい、わかった。それでは、この勝負、笑福満漢扇が仕切らせていただく。天笠が勝ったなら、アポカリプスBには手を引いていただく。アポカリプスBが勝った時は、天笠が潔く下界から身を引く。よいな」
「ちょっと待ってください。なんで、そんな話になるんですか」

「何を小生意気な言葉を口にする、屍解仙風情が。お前の力では、アポカリプスBが止められない。アポカリプスBにしても、たとえ最下級の屍解仙とはいえ、仙人を殺せない。ならば、両方を止められるワシの言い分が、通るに決まっておろう」

 無茶苦茶な言い分だと思った。でも、成り行きがどうなるか、ハリセン次第なのは明白だった。
 ハリセンさえ邪魔しなければ、どうとでもなると踏んだのか、アポカリプスBが先に質問した。
「それで、勝負の内容とは?」

 ハリセンが勝手に話を進めた。
「これより、互いにボケ合い、突っ込む。ボケきれなくなるか、突っ込み違いをした時点で、相手の負けとする。あ、いざ、尋常に勝負」
 言っている意味が理解できないのか、アポカリプスBが天笠を見る。だが、天笠にしても、首を傾げるしかなかった。

 上空に謎の光る物体が出現した。光る物体は辺りを真昼のような光で照らした。
 よくわからない勝利条件で、どう戦えばいいのか理解に苦しむ戦いが始まった。
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