第八章(一) 激闘、お笑いバトル

文字数 1,640文字

 黄昏園の近くに着いた時には夜だった。遠めには無事に見えた。だが、入口ゲートにいつもいる守衛の人間がおらず、ゲートは高温の熱により熔解(ようかい)した痕跡があった。
 ゲートを潜ると、いつもの夜の町並みがあった。しかし、元から人気のない町並みだったが、今は完全に死んだように感じた。

 黄昏園の本館に向かって慎重に歩を進めて行った。ゲート以外に施設破壊の痕はなかった。アポカリプスBの姿も見当たらなかった。
 本館に到着すると、本館の建物が消えて、グラウンドになっていた。建物が建っていた場所には形跡もなかった。まるで、建物が最初から建っていなかったかに見えた。
 地下に入れる場所に向かった。ところが、最初から地下空間など存在しないように、壁や地面になっていた。

「どうなっているんだ?」
『第六感ソース』を舐めて、蓮村の位置情報を探すと、蓮村のいる場所はわかった。
 蓮村のいる場所は、地下で合っている。もう一度、本館のあった場所に移動すると、先ほどには気づかなかった小さな社のような建物があった。
 社の中に入ると、目立たない場所に下に続く扉があった。扉は頑丈な金属製で開かなかったが地下への入口だと悟った。黄昏園は敵の攻撃を避けるために、偽装して敵をやり過ごす作戦を採っていた。

 アポカリプスBの位置を確認すると、黄昏園から南に十㎞の位置にいた。アポカリプスBは偽装を見破れずに、黄昏園の位置を探している。
 下手に黄昏園の中に入ると、アポカリプスBに入口を教える可能性があるので、社に偽装された入口から離れた。
 社から出て、アポカリプスBがいる場所に移動しようとすると、アポカリプスBの気配が消えた。
 次の瞬間、背後に気配を感じた。

 振り返ると、アポカリプスBが立っていた。アポカリプスBは、瞬間移動ができた。対超能力者用兵器は、超能力も使えた。超兵器アポカリプスは仙人が作った兵器。人間の常識なんて通用しない。
 アポカリプスBは攻撃してこなかった。静かに、眼球に当たるセンサーで、天笠を見つめていた。
 ジェット機が飛んでくるような音がした。

 音のした方向を見ると、新たに一体の青く光るアポカリプスBがやってきた。新たに現れた青いアポカリプスBの目が光った。
 攻撃の予知画像が脳内に浮かんだので、回避した。次々と攻撃してくる青いアポカリプスBの攻撃を回避しつつ、激動のソースを舐めた。
 念動力で攻撃した。金属が軋む音がした。青いアポカリプスBが捻れた。アポカリプスBは青い光を噴き上げて消えた。

 アポカリプスBは手下として、コピーを量産する能力があった。試しに、アポカリプスBの手下を意識して、『第六感ソース』を口にした。
 すると、上空一万mに千体以上の気配を感じた。 
 アポカリプスB自身も超能力を使うのに、天笠の超能力は無効。現代兵器も無力なうえ、手下もつぎつぎ量産できる能力を持っていた。世界を滅ぼすために作られた兵器なだけの性能があった。

 果たして、そんな超兵器に脇差一本で勝てるかどうか、怪しい。だが、やるしかない。
 脇差を取り出すと、アポカリプスBの額にもう一つ目が現れて、脇差に向いた。天笠が手に持つ脇差が、アポカリプスBにも警戒すべき武器だと伝わったと見ていい。
 アポカリプスBを警戒させるほどの武器なら倒せるかもしれない。行き込んで気合いと共に脇差を抜いた。

 脇差には刃がなかった。刃の代わりに、段々に折れた紙があった。脇差に見えた武器は、実は、ハリセンだった。
 現実を疑った。ハリセンはアポカリプスBにとっても予想外だったのか、数秒ほど固まった後、第三の目は元に戻った。

「こんなんじゃ、役に立たねえよ」
「失礼な。ワシを誰だと心得る」
 ハリセンが喋った。ハリセンは凛々しい男の声で語った。
「我こそ、仙界八扇の内が一つ、笑福満漢扇なるぞ。そなたのような下位屍解仙が手にするのも畏れ多いと知れ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み