第八章(四) 激闘、お笑いバトル

文字数 1,057文字

 大黒真人が帰ってゲームが終わった頃には夜が明けかかっていたので、そのまま眠った。
 昼ごろになり、黄昏園に帰ろうとしたところで、玄関のチャイムが鳴った。誰かと思って出ると、大波がいた。

 大波が爽やかな表情で伝えた。
「ご苦労様、天笠くん、今日は、一言、お礼を言いに来たわ。アポカリプスBが停まったことで、私の任務も終わったわ」
「管理派が黄昏園から一掃されたんですか」

 大波は首を振って他人事だというように答えた。
「黄昏園の内紛は終わっていないわ。でも、黄昏園がどうなろうと、私には関係ないわ。世界の終末の回避が、私に与えられた任務だから」
 全ての始まりは大波の料理からだった。大波はアポカリプスBについても知っていた。世界の終末についても予期していたと見ていい。

 だが、大波は仙人でもなければ、黄昏園の人間ではない。
「貴方は、いったい何者なんですか」
 大波が曖昧に笑って答えた。
「世の中は平和になって、幸せな日常が流れる。それでいいでしょう。近くのテレビ局で料理番組の収録があるから、駅まで送っていくわ」

 家の外に出ると、リムジンが停まっていた。運転手は叔父だった。
 大波は不思議な人間だが、叔父の職業も、よくわからない。ただ、大波と叔父の間には接点があるので、大波も叔父も同じ職場で働いているのかもしれない。

 テレビ局へ向かう道で、外を眺めていると、大波の料理番組の看板スポンサーである保険会社の看板が目に留まった。
「日本って保険大国ですけど、世界終末保険を扱っている会社って、あるんですかね」
「あるわよ」

 大波を見ると、そっけない態度だが、ハッキリと言った。大波の正体が朧げにわかった気がした。大波は世界終末保険を売った保険会社の人間ではないだろうか。
 どこの会社かはわからないが、保険会社は支払いを避けるために、世界の終末を回避させたかった。
 世界終末保険を売るぐらいだから、世界の終末について正確な情報を持っていてもおかしくない。正確な情報があるから、どうすれば回避できるかも対策を立てられる。

 保険会社と訴訟は切っても切れない。とすると、冥府の裁判官の秦広王と保険会社との間にも何らかの面識があっても、不思議ではない。
「別に、どうでもいいか」

 裏で誰がどんな駆け引きをしていても関係なかった。仙人をやってみて楽しかったのは事実だし、現在の仙人生活も悪いものではない。
 天笠が送ってくれた礼を大波に述べると、黄昏園に戻るべく歩き出した。
【了】
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