第17話『ザ・ローズ(ベット・ミドラー)』

文字数 394文字


藤井と尾崎は二人で文芸部室を整理していた。部室の隅に積まれていた段ボール箱を一つずつ開けていく。箱を開ける度にそこに閉じ込められていた時間が解放され、細かな埃が雲母のように部室の中を漂う。段ボールの中身はたいてい意味不明な文書だったが、その中の一つから埃をかぶったミニコンポが見つかった。あつらえ向きに接続コードまでついている。そこで、二人はお気に入りの歌をかけることにした。
「俺が普段聞いている歌の中でお前が好きそうな歌って言ったらこれかな? 」
 ミニコンポから歌が流れ始める。英語の歌だった。
「洋楽じゃないか。藤井君、洋楽を聞くんだね」と尾崎が言った。
「馬鹿にするな。俺は英語の点数は良いほうなんだ。ハリウッド映画が好きだったら、英語のリスニングも何とかなる」
二人は三分半ほど、何もしゃべらずにその歌を聞いた。
歌が終わると尾崎が言った。「いい歌だね、これ」
「そうだな」と藤井が言った。
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