第18話『ジ・オリジン・オブ・ラブ(ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ)』

文字数 447文字

藤井の次に尾崎が歌をかけた。
「お前、いい歌を知っているな」とスマートフォンで歌詞を検索しながら藤井が言った。
「この歌って元になっている神話があるんだよ」と尾崎が言った。
「神話? 」
「うん。アンドロギュノスの神話。君も聖書の授業の時間に習ったはずだろ」
「聖書の授業の時間は睡眠時間にあてているから」
 しょうがねえな、と言うと尾崎は言った。
「プラトンの書いた「饗宴」という本の中の「アリストファネスの話」に出てくるんだけど、昔、男男と女女と男女の三種類の生き物がいたんだそうだ。二人の人間がくっついて一人になったアンドロギュノスって生き物だったんだとさ」
「ふーん」
「ところがある日、ゼウスの怒りをかってそれぞれ二つに引き裂かれてしまった」
「かわいそうに」
「それから、人間は引き裂かれた自分の片割れを探して、地上をさまよう羽目になった。それがこの歌の歌っている愛の起源ってわけさ」
「自分の片割れか。ロマンチックだな。そんな人が見つかるかなあ」と藤井が言った。
「いつか見つかるといいね」と尾崎が言った。

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