第78話 横槍と解放の窓 ~独占欲と嫉妬~ Aパート

文字数 7,731文字


 気が付くと最近体がだるかったのは、やっぱり疲れていたのが原因なのか、いつのまにか寝てしまっていたみたいだった。どのくらい寝ていたのかはすぐには分からなかったけれど、公衆の面前での図書館内。
 私はヨダレを垂らしてはいないかを慎重に確認しながら顔を上げると、
「あ……優希君?」
 目の前に逢いたくて逢いたくて仕方が無かった人が座ってこっちをじっと見ながら……
「おはよう愛美さん」
 穏やかに挨拶をしてくれ……って……え、あれ。
「ゆ、優希君?!」
 思わず大好きな人の名前を呼んでしまう。図書館内だとかはこの際少し多めに見て欲しい。
 だって何で……なんでまたよりにもよってこんなところを見られてしまうのか。
 私の中の混乱と喜びを他所に
「少し、外で話せるかな?」
 優希君に連れられるように立ったスカート姿の私を本当に嬉しそうに見て、私を外に連れ出してくれる。


 この感じだと一時間も寝てはいないと思うけれど、逆に言うとあと少し起きておけば、優希君にあんな姿を見られなくて済んだのは間違いなかった。
 私がそんな後悔と言うか、隙だらけな自分を恨めしく思って外に出ると、久しぶりに小雨が降っている。
「えっと優希君。今何時くらい?」
 しかし、何で優希君の前でだけいつもいつもあの手この手で痴態を晒してしまうのか。
 もしこれでヨダレでも垂らしていたら、さすがにお嫁さんに行けない。
「今は14時くらい……遅くなってごめん」
 しかも傘すらも今日は持ってきていないし。
「ううん大丈夫。今、私の目の前に優希君がいてくれるから……ゴメン嘘ついた。昨日からメッセージの返信もしてくれなかったし、金曜の放課後の返事もしてくれなかったから、今日は来てもらえないかとすごく寂しかったし、不安だった」
 私は優希君に安心してもらおうとして、やっぱり自分の本音を伝える事にする。
 つい今しがた降り始めた雨を示すように、ペトリコール漂う中、私の正直な気持ちを伝えて、優希君の言葉を待つ。
「ごめん……僕に愛想尽かせた?」
 だけれど優希君は謝るだけで自分の気持ちを口にしてくれない。
「私は謝って欲しい訳じゃ無いよ。前に優希君が私の気持ちを知ろうとしてくれたように、私にも優希君の言いたい事、気持ちを教えてよ」
 ――ひょっとして純粋に優希君も不安なのかな?――
 ――愛さんは自分が可愛い事を理解しないと駄目なんだよ――
 倉本君が優希君の目の前で押し込んで来た私に対しての握手の申し出。
 私とその倉本君の間に割り込んできてくれた優希君。
 ――倉本と二人きりだけは辞めて欲しい――
 一昨日の優希君が私に息苦しいと思われたくないと言ってくれた言葉。
「愛美さんを待たせて寂しい思いをさせてしまった事を謝りたいのは僕の言いたい事だよ」
 それは言い換えれば、何らかの形で私を束縛したい、私に言いたい事があるって言う事でもあって。
 一人で考えている時は優希君からの連絡が無くて、寂しいとか辛いとかいう気持ちばかりが出てきて全く考えがまとまらなかったはずなのに、優希君が目の前にいてくれるだけで、すごい勢いで頭が動き思考がまとまって行く。
「優希君はそう言ってくれるけれど、それが全部じゃないしメッセージの返信も連絡もしてくれなかった理由じゃないよね?」
 金曜日の帰り間際に確かに言ってくれていたのだ、言いたい事はあるけど我慢すると。
 だからその優希君が我慢している事を、思っている事を私に教えて欲しい。
「……」
 その理由を思い浮かべているのか、再び優希君の機嫌が悪くなる。
 そして優希君は機嫌が悪くなると無口になる。これは優希君自身も気が付いていない優希君の癖……“盲目の窓”かもしれない。
 そう言えば妹さんも
 ――お兄ちゃんが昨日から拗ねてて、口も利いてくれ

のよ――
 って言ってたっけ。
 本来なら口を閉ざす優希君に対して悲しくなったり、涙が浮かんだりしても不思議ではないのだろうけれど、あの私

大切にしている妹さんと同じ反応だと思うと、嬉しくなってしまう辺り、恋は盲目。
 私の中では優希君ならもう何でも良くなっている気がする。それに、私自身も十分に面倒くさい女だと思っていたけれど、そう言う意味では妹さんからの電話の事も踏まえると、決して優希君も完璧じゃない。
 私と同じ面倒くさいって言ったらまた拗ねられそうだけれど、そう言う一面もあるんだなって、優希君に対して、無意識ではあるだろうけれど “盲目の窓” を開けてくれたのかなって、開けられたのかなって嬉しくなる。
「もう一回言っておくけれど、倉本君とは一回も手を繋いでいないからね」
 私は優希君のたった一人の彼女なのだ。もちろん今の立場に甘んじているつもりはない。それは今まで何度か言っている通りだけれど、今の話はそれとは別だ。
 妹さんと同じような態度を取ってくれる優希君に勇気を出してもう一歩踏み込む。
 だから今日は妹さんとの電話での約束なんて関係なく、意地でも金曜日の話を続きを聞こうと、こっちから話を切り出す。
「……」
 私の言葉に無言ではあったけれど、目が驚いてくれた事に手ごたえを感じる。もうそうなればこっちの物だ。
 伊達に三年間、朱先輩に人の心に寄り添う事、話を聞く事について教わっていたわけじゃない。
 私はそう言う事を積み重ねて、蒼ちゃんや男子児童との信頼「関係」を築き上げて来たのだ。
 ただ今までと違うのは、そこに男女としての気持ち・感情が混じっているかどうかだ。もちろん男女の情が混じるのは初めて、
――僕もここからは初めてだから――
 そして優希君の言葉を思い出す。
 それは私の希望である優希君と共に歩んで行きたいと願った、私の気持ちにも合致するもので、
「優希君は私のこと信じてもらえない?」
 優希君に私の事を聞きながら、テーブルの上に両手の平を上にして置きながら問いかける。
「……倉本との事は信じたいけど……」
 しばらくしてやっと重い口を開いてくれるけれど、どうも優希君の言葉が思っていたのと違う気がする。
 だけれど、だからこそと言うのか、私は優希君の思っている事、考えている事が知りたいのだ。
 もし優希君の中で私に対して信じるに値する何かが足りないのなら、そこは私の言葉ではなくて行動で信頼を勝ち取らないといけないのだ。
 そこは妹さんと話して納得させられた、教えられた部分だ。
「良いよ。私に対して不満とか不安とかあるなら教えてよ」
 妹さんに言えなかった理由。倉本君の話の事、優希君の気持ちを聞こうと言葉を重ねる。
「……愛美さん。僕以外に好きな人、出来た?」
「……え?」
 そのつもりだったのに、あまりにも有り得ない、考えてもいなかった事を言われて冴えわたっていたはずの頭の中が完全に思考停止する。
「いやちょっと待って? 私、倉本君の事なんて何とも思ってないし、好きじゃないよ! それに優希君以外に好きな人なんて出来るわけも無いよ!」
 ちゃんと倉本君の誘いも優希君の前で断っているし。握手だって、手だって握っていないのに。
 二人きりでの食事をしてしまった事は悪いとは思ってはいるけれど、私の気持ちに倉本君との事をそこまで疑われている事にショックで、たちまち目に涙が浮かぶ。
 男女の情が入るだけでこれだけ寄り添うのが難しくなるなんて、本当に好きって気持ちはままならない。
「私、優希君の事が好きなのにどうしてそんなにひどい事言うの? あんまりだよ……」
 今日だって私の気持ちを少しでも優希君に伝えようと、優希君の前で以外は見せて欲しくないと言ってくれていたスカートにして優希君に喜んでもらおうって事だったのに。

「でも、愛美さんがクラスの男子にフラれたんだって聞いた」
 だけれど、次に優希君が口にした言葉を私は聞き逃すことが出来なかった。
「クラスの男子にフラれたって――」
 ――岡本さんがそんな乱暴な人だとは思わなかった。俺との事は忘れて欲しい――
 そうか! 倉本君じゃなくてあのメガネの事か!!
「……やっぱり愛美さん

告白したんだ」
 私がどの事かに思い当たって途中で止めてしまった言葉に、私にとっては最悪の想像をしたであろう優希君が、大きくため息をついて目を潤ませる。
「ちょっと待ってよ! 私、他の男の人に告白なんてしてない! 優希君以外を好きになる訳もない!」
 言ってて思う。優希君以外の人に告白するわけ無いけれど、フラれたのだけは本当だから、信じてもらうのは大変かもしれない。
 そして私の手を繋いでくれなかった理由も分かる。と言うか手を繋ぐとかそんな事を言っている場合じゃない。
「じゃあ告白もしていないのに、フラれたって事?」
 もう不機嫌を通り越したのか、優希君が力なく私の方を見つめてくる。
「そうだよ。そのメガネ男子には勉強で分からない所があるから、何回か教えた事はあるけれど、一緒に帰るとか、一緒にお弁当食べるとか色々誘われたけれど、もちろん全部断ったよ」
 もうこうなったら全てを隠さずに喋った方が良いのか、それともこれ以上余計な心配と言うか、不安は与えない方が良いのか、私もどうしたら良いのか分からない。
「じゃあ何でそれからフラれるとか告白の話に『私! 告白なんてしてない!』――じゃあどうしてフラれたの?」
 してもいない話をして欲しくなくて、優希君の言葉を一旦は止めるものの、続く言葉に返す言葉を持たない私。
「……愛美さん答えてくれないんだ……」
 まさかあの時の意味不明のやり取りが、巡り巡ってこんな事になるだなんて思いもしなかった。
「まあ愛美さん可愛いし、気配りも上手だし、その男子と言い倉本と言い、愛美さんに夢中になるのも分かるよ」
 本当なら優希君から言ってもらって嬉しいはずの “可愛い” も全然嬉しくないし、優希君の言い方だと、メガネからフラれたんじゃなくて、告白したみたいな言い方になっている。
 ただそれどころじゃない。このままなら優希君の心が私から離れてしまいかねない。
「――何かあったら俺が――」
 そうか! ひょっとしてあのメガネ! 私と優希君を別れさせようって事か! いや違うのかもしれないけれど、それで私に近寄って来たとかそう言う事なのか。
 それで私がひょっとしてなびくと思っているのか、冗談じゃない!
 万一本当にそう言う事なら、到底許せる話じゃない。

「私! 倉本君の事なんて本当に何とも思ってないし、二人きりにもなりたくないし触れたいとも思ってないっ!」
 その相手は何度も思うけれど、彩風さんなのだ。
「それにメガネ男子の事なんてこれっぽっちも思ってない! どうしたら信じてくれるのっ?」
 でも取り急ぎしないといけないのは、今できそうになっている優希君との隙間を埋める事だ。私と優希君の間には男女問わず誰一人として入れたくはないのだ。
「……」
 降り始めた雨が時間が経ったことを教えてくれるように、雨に流されてペトリコールが霧散する中、
「そもそもどんな理由で私がフラれた事になってるの?」
 言いたくないのか、どうしたら私の事を信じることが出来るのか分からないのか答えてくれない優希君に、別の質問をぶつける。
「愛美さんが

使

のが嫌になったって聞いたけど」
 何かがかみ合っていない。優希君の答えに疑問を持った私はもう一つ質問をする。
「それって私のクラスの女子から聞いたりする?」
「うん。愛美さんの

を含めた何人かから聞いたけど」
 あのメガネじゃなくて私の友達か……間違いなく咲夜さんだと思うけれど、私の質問に対して少し不安そうな表情に変えて聞いてくれる優希君。
 中間の時の順位表の前でのやり取りを思い出す。そう言えば優希君と咲夜さんも仲良かったっけ。
 もちろんそんな事を言ってる場合じゃないって分かってはいるんだけれど、もう何度思ったか分からない、人に言えない気持ちが心の中に広がる。
 そしていつかの昼休みに咲夜さんが隠しきれない動揺の中、優希君の役職名を呼んでいたのを思い出す。
 あの日を境に私のお気に入りの水筒とお弁当箱が無くなったのだから、この日の出来事も忘れられない。
「優希君が咲夜さんを含めた女子から聞いたのは分かった。優希君も咲夜さんと仲良かったよね?」
 それでもあの日、仲良さそうに喋っていた優希君と咲夜さんの事を思い出す。
「いや仲良くはないよ? ただ愛美さんの友達

仲良くしたいなって思っただけで」
 そっか。あの時から私の事、ちゃんと意識してくれていたんだ……少しの勇気を優希君からもらえる。
「じゃあ優希君に聞きたいんだけれど。咲夜さんから聞いた噂話と、私の今の気持ち、どっちの方を信じてくれるの?」
 ちょっとずるいかもしれない。優希君が私に気持ちがあるのなら答えなんて一つしかないに決まってる。
 だけれどどんな手段を使ったとしても私はやっぱり優希君には信じて欲しい。
 そして私の事に関しては私自身が “悪者” になってしまえば良いと思った手前、咲夜さんに我慢すると言ったのだから、この件で私が咲夜さんを悪者に出来ない上に文句を言う事も出来ない。
 だったら、たとえみっともなくても私自身の “秘密の窓” を開けて
「私自身、雪野さんとの事があるから優希君の不安に思う気持ちは分かるけれど、私より友達の咲夜さんの事を信じてる優希君を見て私、今咲夜さんに対してどうして私よりも優希君に信じてもらってるのってものすごく嫉妬してるから」
 私の思ってる事を知ってもらって、優希君が息苦しいと感じるまで思う、私に対する気持ちと言うか要望の内容を、言わば “秘密の窓” を開けて欲しいと思う。
 案の定私の本音を伝えると優希君が嬉しそうにしてくれるけれど、次の瞬間には申し訳なさそうな表情に変わる。
 でも私は優希君を責めたいわけじゃない。私だって優希君の友達から雪野さん以外の女子に告白したとか聞いたらどうするか自分でも分からない。
 ただ優希君の思ってる事、倉本君との間に割って入ってくれたあの気持ちを教えて欲しいのだ。
「私、あのメガネに勉強を教えてる時、私自身に向けられた視線を感じてすごく不快だったし、好きでも無い男子に気軽に肩とか背中とか触れられて気持ち悪かったんだから」
 だから半分は優希君の気持ちを煽るつもりで、もう半分は優希君に全部を打ち明けて秘密を作りたくないって気持ちを分かって貰おうと、隠すことなく過分なく伝えると、優希君の雰囲気が明確にイライラに変わる。
 その雰囲気は妹にほとんどそっくりで、それだけで私から気持ちが離れてないって事も分かって安心できる。
「それにあのメガネと頼んでもいないのに私に仲介したのは、メガネのお願いを聞いた咲夜さんだからね」
 そんな優希君の雰囲気を感じながら、もう一つ忘れそうな事実も併せて伝えておく。
「その上でどうしたら私のこと信じてもらえる? それとも私のこと信じてもらえない?」
 これだけ包み隠さず話して信じてもらえなかったら、咲夜さんを信じるって言われたら私は立ち直れないと言うか、ショックで明日からのテストは棒に振る事になると覚悟しながら、優希君に聞く。
 それに私だって雪野さんとの事で優希君に色々とお願いをしているし、今度は雪野さんの事で身勝手なお願いをしないといけない今、これが信頼「関係」のおかげかどうかは分からないけれど、優希君に対して遠慮なく言えるようにはなっている気がする。
「……ごめん。謝って済む事じゃないけど謝る事しかできないから」
 優希君がまだ何か言いたい事を我慢しているのは何となくわかる。
 だけれど私が聞きたいのは優希君が思っている事であって、何度も言うけれど謝って欲しい訳じゃない。
「私は優希君に対する自分の気持ちはさらけ出したよ。

優希君の気持ちも教えてよ」
 なにも自分の秘密を全部さらけ出して欲しいって言ってる訳じゃ無い。たとえ恋人だったとしても人にいたくない事だってあるだろうし、私と優希君の信頼「関係」が足りなくて言ってもらえない事もあると思う。
 でも、他の誰でもない。私に対しての気持ちならそれは教えて欲しいのだ。
 もちろん言葉を使わずに以心伝心の仲になれれば理想だけれど、優希君も私も恋愛初心者なのだから、たとえ周りから不器用だと言われても、お互い分からないところだらけなのだから、言葉で伝えて行くしかないと思うのだ。
 だから今回は “私は” なんて言わない。
「……だったら、そのメガネの前で僕が愛美さんの彼氏だってハッキリ愛美さんの方から言って断って欲しい。後、クラスの中でもそうだけど、男子と喋るのは辞めて欲しい。男子から愛美さんの話を聞く度にイラついて仕方がないし自信もなくなる。それに男子と触れ合うのはどんな理由があっても許せそうにない」
 そしてやっとの思いで聞けた優希君の言葉は、嫉妬と言うより完全に独占欲だった。そしてまだ止まらない。
「出来れば僕のいない所では男子とは一切喋って欲しくないし、特に倉本だけは辞めて欲しい。倉本と行動する時はせめて雪野さんを連れて欲しい。それと僕以外の男から物を貰うとか言うのも絶対やめて欲しい。特に倉本から何か貰ったら愛美さんに対して絶対怒る自信がある」
 そして続く言葉は私……と言うか女子が考えるよりさらに強い独占欲と言うか

に近い感情だった。
 確かにこれだけの気持ちを相手に伝えるのは勇気が必要なのはわかる。それに統括会で決まった来週からの組み合わせを意識しているのは明白だ。
 私自身も雪野さんと喋るのも嫌、匂い一つで嫌、挙句の果てに優希君との待ち合わせに遅れた私が悪いのに、その間に帰りのあいさつを交わしていただけの、名前すら知らない女生徒にも嫉妬していたくらいなんだから。
 そんな醜い私の気持ちに対しても、私の事を知ることが出来て嬉しいと言ってくれた優希君。
「ありがとう。優希君の気持ちを教えてくれて。それと今まで気付けなくてごめん」
 改めて男女の考え方の違いに驚かされる。
「やっぱり僕の気持ちに引いた? 別に僕の事――」
「――優希君。私、嬉しいからありがとうって言ったよ? 後ね優希君。女ってたとえ嫌いじゃなかったとしても、好きじゃない男の人に触られるのは嫌なんだよ。逆に好きな人からはもっと触れて欲しいって思う生き物なの」
 だからこれで優希君の事を嫌いなるとかそう言うのは無いって事を先に伝える。
「それと、倉本君の事だけれど、金曜の日に何かあったんだよね? 彩風さんと戻って来た時、殺伐とした空気を感じたよ」
 思えばあの時の優希君の機嫌も相当悪かったと思うけれど、
「……」
 言いたくないのか、優希君が口を開かない。どころかまた機嫌が悪くなってる。
 私はもう一度よく考えてみる。
 私に本音を喋ってくれた優希君が閉ざした口。
 そして優希君と彩風さんの前で、押し込んできた倉本君。
 そしてそれと割り込んで止めてくれた時の優希君。
 ……ひょっとしたら倉本君は最悪に近い事を言ったんじゃないのか。

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