第1話 退屈な日常

文字数 544文字

 「あああ。うっかり極楽なんてくるもんじゃあない。座ってボーとしている毎日。凡人には耐えられない。」

 ホームに落ち老人を助けに行って、死んだ僕は、地獄ではなく極楽へと連れて行かれた。
 「2人とも死ぬまたは助かる。老人が死ぬ。僕が死ぬ。4択だったんですがね。まさか、唯一の狭き門である極楽行きを引き当てるとは、お客さんも強運だ。」
 案内人が移動がてらに説明してくれたが、実際には何も無い退屈なところだった。
 「天国なら、楽しいことが一杯あるんですけど。それぞれ仕切っている、釈迦とキリストの考えの違いですね。」
 天国ということろは、パンとワインの飲み放題。肉も食えるらしい。しかし、極楽は肉も酒も禁止。娯楽無し。
 「イスラム経も似たようなものですが、毎日祈りの時間があるので大変です。キリスト教なら毎週ミサに出席です。その点、極楽はいいですよ。毎日、座ってるだけ。」
 年寄りが縁側で日がな一日、猫でも抱いて座っているような生活だ。さすがに3日といわずに飽きてしまう。

 「しかたないですね。それでは、職安にでも行きますか。日本人に多いんですよね。サラリーマン症候群。忙しく働いくことでしか自分の存在意義が見出せない人。そういった人をほっとけないのも仏の教えですから。」
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