第18話 大好きなもの

文字数 800文字

 「簡単な面接です。みなさん、好きなものを言ってください。」
 いきなりの問いに戸惑う。アメリカ人度を試されるのだろうか。
 「ハンバーガー。」
 「チリビーン。」
 「ステーキ。」
 「フライドチキン。」
 「コーラ。」
 いやあ、アメリカ食オンパレードだ。
 「はーい、注目。さあ、日本人はなんていうかな。」
 教官はわざと、俺の前で区切った。畜生。日本人は和食に決まってら。
 「日本人なら、米!」

 一瞬、場が静まり返る。そして、次の瞬間、歓声が上がった。
 「すばらしい。アメリカそのものとは。」
 ああ、漢字でイメージしたから、誤訳されたらしい。

 「ボーナス問題です。一斉に答えてください。みなさんにとって死後の世界は。」
 「神の国。」
 と、みんなが叫ぶ中で、
 「仏の国。」
 と叫んでしまった。こりゃもうだめだ。
 「ははは、日本人ユニーク。フランスですか。」
 本気なのか、馬鹿にしてるのか、とにかく、はずかしい。顔を真っ赤ににしてうつむく。頭は真っ白。話など入ってこない。

 「どうしました。解らないのですか?」
 教官が覗き込む。困った。下手なことを言って機嫌を損ねると大変だ。
 「イエス、イエス。OK。」
 いきなりの外人顔をみて、つい片言になってしまった。

 「ワオ。ジャパニーズ、サイコウ。」
 何だ?どうやら、尊敬する人物を聞かれていたようだ。イエスと聞いて、すっかり勘違いしたらしい。思い込みが激しいアメリカ人。他人の言動を自分たちに都合のいいように解釈する傾向があるようだ。

 なんやかんやで、主席での卒業となった。根っからの日本人。忍耐と空気を読む能力なら世界一。
 「アメリカ人以上のアメリカ人ぶり。さすが、さくらとポチの国。みなさんも日本人に負けないように。」
 セレブの生活もうらまやしかったが、ぼろが出ないうちに、あわてて日本に戻った。
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