第17話 悪魔のダイアモンドコース

文字数 904文字

 研修の最後には、それぞれが感想を発表する。当然、もういやだと思いながらも、有意義だったとかいうものだ。後になるほど、感極まってくる。
 「とても、きつかったですけど、楽しかったです。またこのような機会があれば参加したいと思います。」
 最後に回ってきたために、つい余計なことまで言ってしまった。
 「そうか。じゃあ、このままダイアモンドコースに行ってみよう。」

 魔女のほうきに乗せられて、やってきたのはアメリカの砂漠。正確には、キリスト教の地獄のある場所。
 「エリア0へようこそ。君たちは世界中から選び抜かれた精鋭だ。」
 霊は国籍にかかわらず、すべて共通語。
 「ここで、認められれば、平民霊の君たちでもハワイでダイアモンド・ゴーストとしてセレブ霊の暮らしができる。」
 うまい話には裏がある。多くの霊が行きたがらないんだから。
 「ここで学ぶことは、体力も知力もいらない。ただ一つ。わが祖国の利益になることだけを考える。他には、何もいらない。」
 ほら出た。○○ファースト。とにかく、この国はファーストが好きだ。
 レディファーストに始まりファーストフードまで。

 周りを見ると、白人ばっかり。思わず尋ねてしまった。
 「君は、日本人だな。ああ、君たちは実に運がいい。君たちの首相はいつでも自分の国民より、われわれのことを考えてくれている。実にすばらしい国民だ。十分に資格がある。」
 喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。
 「で、落ちたらどうなります。」
 「われらの祖国のために活躍してもらう。君たちには選択の自由がある。地獄で働くか、地獄で働かされるかだ。」
 こういうのを選択の自由というのだろうか?
 「どこが違うんでしょう。」
 「ホコリをもって働くか、ホコリまみれになって働くかだ。」
 「働く意外には?」
 「ない。寄付するものを持たない庶民にとって労働は義務だ。それがいやなら、この国から出て行け。」
 えらいところへ、来てしまった。
 「心配ない。卒業して、日本に戻る道もある。われわれの利益のために。」

 卒業してしまえば、こっちのものだ。悪魔のささやきが聞こえてきた。
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