第22話 入れ替わり

文字数 903文字

 内閣で顔を合わせるたびに、入れ替わっている。担当の大臣が代わることもあれば守護霊が代わっていることもある。やらかしちゃった担当の更迭はともかく、それでも踏みとどまれた者には、栄転が待っている。担当を守りきるという守護霊の使命を全うしたからだ。
 「また、副総理の守護者代わりましたね。あの方の守護はいいわよね。どんどんやらかしてくれるから。で、ほっといても誰も攻めないし。」
 「それに比べて、総理の守護は大変よ。私人のお身内に背中から撃たれますもの。」
 「それでも、見返り天使がバックについてるからお得よね。」

 「おぼっちゃまは何だかすっかりおとなしくなったわね。守護霊がまだお若いからあまり強気になれないんでしょ。前任者はどんどん強気で焚きつけてらっしゃったから。」
 「しかたありませんわ。地上で人気者でも、あの世ではほとんど誰も知りませんもの。」
 「取り入るならやはり大物でなきゃ。安倍といえば清明様。菅原といえば道真公。加藤清正に武田信玄。あの世でも一目置かれる存在よね。」
 さすがに歴史を感じる。

 「ハゲルダじゃなかった。誰じゃたかな。民間の力を利用するとかいって、本当はあのがけっぷち十位の大学に補助金をつけたかったんじゃないのか?」
 「でも今は食事もろくにのどを通らないほど厳しくて、かけそばが恋しいとか言っとる。」
 「どうせ、前任者の責任にして逃げさせるだけだから。そのための組閣ですもの。」
 「しかし、これ以上入れ替わりがあるとこちらも覚えるのが大変で。わしらも記憶力が衰えてくるでな。」
 「本気で研修してハワイに行こうかしら?担当だって大統領のイエスマンなんだし。」
 「あっちも大変。色んな門が断崖に建ってるらしい。」
 「間違ったら最後、転落ってわけね。」
 「担当が更迭されれば、わしら守護霊も左遷させられるだろうかならな。」

 この世界もなかなかきびしいようだ。善人か悪人かではない。担当者を守りきれるかどうか。この一点に守護霊としての力量が問われている。
 「あ、およびがかかったわ。今度は私の番かしら。」
 そういって、また一人退席していった。
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