第4話 失敗は成功の母

文字数 601文字

 守護霊というのは年中ついているわけではない。緊急時の呼び出しはあるが、普段は録画された担当者の行動を早送りしながらポイントをチェックしていく。大きなイベントがなければ、毎日一時間もあれば終わる仕事だ。あまりに暇なので担当者のことを調べてみた。
 成田功(なりたいさお)。略して成功。しかし、人生での成功は未だに訪れない。というのも、母親の悪徳と引き継いでしまっているからだ。
 「うちの子がお世話になります。」
 ある日、功の母親が会いに来た。
 「これは、ご丁寧に。痛み入ります。」
 「わたしが、こうして自由でいられるのもあの子がポイントを引き継いでくれたから。最後の最後に親孝行をしてくれました。」
 いい話にも聞こえるが、子供に借金を残して逃げ回っているだけのようにも思える。

 亡くなる際に、遺産相続よろしく、徳の相続もある。俗に運がいいとか悪いとかは、親族の引き継いだ徳がプラスかマイナスかによる。
 「安心して極楽へ行ってください。」
 なんて、葬式でうっかり言おうものなら、負の徳を引き継いじまう。
 「あの世で夫婦仲良く暮らしてください。」
 これも、徳の調整が必要だ。遺族の願いは極力聞き入れる。これが守護霊の大事なお仕事。
 「地獄で、しっかり禊を行ってください。」
 これなら、負の徳は引き継がない。いい格好をしたいばかりに心にも無いことを思うこと自体が、不徳なのである。
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