2。

文字数 748文字

なんか……解せない……。
目の前で書類を書いている裕太(ユウタ)を見ながら、抱いた不満をグッとこらえた。
今日、現場での先輩は明らかに不機嫌だった。内輪揉めの末、相手を傷つけてしまった加害者の居所を突き止めたため、逮捕に至った案件だった。突発的な犯行だったようだが、逃げて隠れたため、その隠した者も罪に問われることになる。何があったのかはこれからだが、書類の多さが半端ない……。
「先輩、今日で決着着いて良かったっすね」
「……だな」

 わあ……ダメだ、これ以上は噴火する

光麗(ミツリ)は非常に空気が読める、裕太の後輩だ。風体は(いささ)か自由度高めではあるが、上司がそこを緩く受け止める辺りに、彼の有能さが伺える。まあ、裕太と問題なく組めるのが光麗しかいないっていうこともあるのだが…。
「光麗」
「はい、何でしょう」
「悪いけどさ、15:00から予定あるんだわ。昼飯行ってきていいか?」
時計を見ると、あと20分ほどで15:00だ。
今日は逮捕できたこともあって、裏取りちょい進めたいから、残業するんだろうな。ってことは、とれてない昼食をとっておきたいだろう。
「良いですよ、自宅帰りますか?それなら僕が仕上げときますよ、書類」
「頼んだ。メシ買ってきてやるよ」
「まじで?じゃあ、牛丼がいいです」
「分かった、じゃあ出るわ」
いつもとあまりかわりないやり取りだけど、光麗は気付いていた。
部屋を急ぎ足で出ていく裕太をチラリと見て、呟く。
「二美ちゃんに何かあったな……」
こう見えて、光麗は事務系の仕事にストレスを感じなかった。必要な書類を仕上げることには意味があるし、順序だてて作成することには抵抗は全くない。
書類にペンを走らせながらふと考えた。
「……ん~」
これは…早めに終わらせて動ける体制にしとくべきだな。
光麗の強みは、回転の早さと見通しの良さだ。
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