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文字数 1,596文字
あれ…
目覚めたところは、見慣れた病院のベットの上だった。
ああ……
頭の中に「またかー…」と諦めたような私の思いが響く。
いつものやつだ。蛍光灯…白いカーテン…心電図の“ピッ”ていう音、今回は酸素吸入器がないだけマシかも…。
少し深く呼吸をしてみる。うん…平気だ。
横になったまま辺りを確認する。
何だか…変だな?どうして私は個室にいるんだろうか……。
身体をゆっくりと起こして、再び回りを確認する。
一人部屋だ……
ベッド横には二人掛けソファとローテーブル。その向こうには軽食が作れるようなスペースもある。
わあ……絶対高いやつだ……
やだやだ…どうしたのよ……。今まで個室に入ったことなんてなかったじゃない。1日通常+数千円別途徴収されるんだよね? いやいやそんな余裕ないってば。
脳内でわちゃわちゃ思ってるところに入り口がガラッと音を立て開いた。
「あ…え…ミコ……?」
ベット周辺のカーテンは閉めてなかったので、入り口から直で起きているのが見えたのだ。見えた相手の名を呼ぼうとする。
「た…」
喉に引っ掛かりを感じて、眉間にシワがよる。
声を出そうとして気づく。
何だか…声が出づらい……。
喉の奥が固くなっているような、声を出そうとすると抵抗感がある。力を結構入れないと前に向いて声が飛ばない……。
「た、け、る…にいさん」
これだけを言うのに手間取っている自分に驚いた。
何……これ……
私が戸惑っているのとはまた別次元で狼狽している者がいた。
尊、今、目の前で起こっていることが本当に起こっていることなのか?と疑心する。
何度来ても、何度触れてもピクリとも動くことのなかった愛しい妹が、今、からだを起こして、あろうことか……言葉も発した。
自然に手から離れた扉が、それはゆっくりとしたスピードで閉まっていく。尊はゆっくりと彼女の方へ歩みを進める。
「ミコ……おまえ………おまえ、ほんとに……目が開いてる…?」
え、何その質問…
尊の反応に混乱する二美子。
目が開いてるって…起きたら開きますよ。どういう心配?
私が起きたらおかしいのかな……?
混乱しているなか、近づいてきた尊にそっと抱き締められる。フワッと尊兄さんの匂いが鼻をくすぐる。自然に目頭が熱くなってくるのを感じる。
「良かった……ミコ…」
つまったような感じで言葉が聞こえる。
え…? 泣いてるの…?
訳が分からない……。
でも……
優しく包まれている感じが、とてもほっとする。ゆっくりと自分の腕を尊の背中に回す。ぎゅっとしてるつもりだが、一向に力が入らない。
「はは……無理するな」
尊、少しづつ離れると私の顔をじっと見つめる。
「夢……じゃないよな。二美子……」
「た……」
“尊兄さん、どうしたの?”と言いたいところだが、息の出し入れがうまく行かなかった。。
ヒュッと空気だけが漏れていき、音は形を成さず…。
「ミコ……」
尊、潤んだ瞳を拭いもせず、愛おしそうに妹を見つめながら、頬に手を添える。
尊のあふれんばかりの思いが手を通して二美子に注がれていく。それはまるで春の日差しのような。その様子を見た者たちはほぅ…っとため息をつくだろう。胸がきゅうっと締め付けられるような…そんな相手を想うまどろっこしい空気感…のような…。
「無理しなくていい。ゆっくりと回復すればいい」
ベット横のナースコールを押す。
『どうされました』
「妹の目が覚めたんだ。先生を頼む」
『え…。すぐに伺います』
いつも優しい尊兄だが、今日は殊更穏やかで……。
ちょっとした違和感はどうでもよくなっていた。
再び尊の腕の中に包まれ、目を閉じる。ほっとする。なぜだか涙が止まらない……。
そんな妹を壊れないように優しく抱く尊。
こうして腕の中にいる二美子が信じられない気持ちもありながら、ぬくもりを肌で感じて、まるでこちらが赤子のように安心している。
目覚めたところは、見慣れた病院のベットの上だった。
ああ……
頭の中に「またかー…」と諦めたような私の思いが響く。
いつものやつだ。蛍光灯…白いカーテン…心電図の“ピッ”ていう音、今回は酸素吸入器がないだけマシかも…。
少し深く呼吸をしてみる。うん…平気だ。
横になったまま辺りを確認する。
何だか…変だな?どうして私は個室にいるんだろうか……。
身体をゆっくりと起こして、再び回りを確認する。
一人部屋だ……
ベッド横には二人掛けソファとローテーブル。その向こうには軽食が作れるようなスペースもある。
わあ……絶対高いやつだ……
やだやだ…どうしたのよ……。今まで個室に入ったことなんてなかったじゃない。1日通常+数千円別途徴収されるんだよね? いやいやそんな余裕ないってば。
脳内でわちゃわちゃ思ってるところに入り口がガラッと音を立て開いた。
「あ…え…ミコ……?」
ベット周辺のカーテンは閉めてなかったので、入り口から直で起きているのが見えたのだ。見えた相手の名を呼ぼうとする。
「た…」
喉に引っ掛かりを感じて、眉間にシワがよる。
声を出そうとして気づく。
何だか…声が出づらい……。
喉の奥が固くなっているような、声を出そうとすると抵抗感がある。力を結構入れないと前に向いて声が飛ばない……。
「た、け、る…にいさん」
これだけを言うのに手間取っている自分に驚いた。
何……これ……
私が戸惑っているのとはまた別次元で狼狽している者がいた。
尊、今、目の前で起こっていることが本当に起こっていることなのか?と疑心する。
何度来ても、何度触れてもピクリとも動くことのなかった愛しい妹が、今、からだを起こして、あろうことか……言葉も発した。
自然に手から離れた扉が、それはゆっくりとしたスピードで閉まっていく。尊はゆっくりと彼女の方へ歩みを進める。
「ミコ……おまえ………おまえ、ほんとに……目が開いてる…?」
え、何その質問…
尊の反応に混乱する二美子。
目が開いてるって…起きたら開きますよ。どういう心配?
私が起きたらおかしいのかな……?
混乱しているなか、近づいてきた尊にそっと抱き締められる。フワッと尊兄さんの匂いが鼻をくすぐる。自然に目頭が熱くなってくるのを感じる。
「良かった……ミコ…」
つまったような感じで言葉が聞こえる。
え…? 泣いてるの…?
訳が分からない……。
でも……
優しく包まれている感じが、とてもほっとする。ゆっくりと自分の腕を尊の背中に回す。ぎゅっとしてるつもりだが、一向に力が入らない。
「はは……無理するな」
尊、少しづつ離れると私の顔をじっと見つめる。
「夢……じゃないよな。二美子……」
「た……」
“尊兄さん、どうしたの?”と言いたいところだが、息の出し入れがうまく行かなかった。。
ヒュッと空気だけが漏れていき、音は形を成さず…。
「ミコ……」
尊、潤んだ瞳を拭いもせず、愛おしそうに妹を見つめながら、頬に手を添える。
尊のあふれんばかりの思いが手を通して二美子に注がれていく。それはまるで春の日差しのような。その様子を見た者たちはほぅ…っとため息をつくだろう。胸がきゅうっと締め付けられるような…そんな相手を想うまどろっこしい空気感…のような…。
「無理しなくていい。ゆっくりと回復すればいい」
ベット横のナースコールを押す。
『どうされました』
「妹の目が覚めたんだ。先生を頼む」
『え…。すぐに伺います』
いつも優しい尊兄だが、今日は殊更穏やかで……。
ちょっとした違和感はどうでもよくなっていた。
再び尊の腕の中に包まれ、目を閉じる。ほっとする。なぜだか涙が止まらない……。
そんな妹を壊れないように優しく抱く尊。
こうして腕の中にいる二美子が信じられない気持ちもありながら、ぬくもりを肌で感じて、まるでこちらが赤子のように安心している。
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