17。

文字数 1,062文字

目を開けたとき、見たことのある風景と状況に感情が抜け落ちていく。

ああ……またこんなになっちゃった……。

天井を見上げるこの景色……。目を開けると、人工的な“白”が瞳を突き刺す勢いで降り注いでくる。
どのぐらいここでこうして寝ていたのかな。手を動かしてみる。

うん…動く。

口元にある酸素マスクを少しずらして息をする。あまり深くは呼吸できないが、苦しくはない。
「ふぅ…」
腕に点滴が刺さっていない。
あまり長くは寝ていないみたいだ。
「ん……」
ゆっくりと上半身を起こす。服は

のままだ。
喉の奥がキリリっとして、変な感じだ。胸に痛みはない。頭も…うん、たぶん大丈夫。
でも……
「ここって…どこ?」
私って4人部屋にいたよね?ここって私ひとりしかいないし…それに何だか殺風景だ。まあ、病院の病室自体殺風景なものだが、ここは見た限り、私が横になっているベット以外はない。窓もなくて…。何の部屋だろう……? よく見ると病院なのかな?
そう考えたとたん、急に寒気がした。
確か…私、光麗さんに助けられて、光麗さんの車に乗って、で、殴られた彼を見て頭の中の電灯がパキンって割れて、景色が突然見えなくなって、真っ暗になって……
「真っ暗に…なって……」

で…どうした……?

一気に“まさか”が駆け抜けていく。動いていた手が強ばる。その後どうなったかの記憶が……ない。

コンコン

右方向にこの部屋の扉があった。そこがノックされたということは、その向こうに人がいるということで……
思わず体が

から逃げようと、扉から少しでも遠ざかろうと左へずれようとする。

どんっ  がしゃっ

ベットには広さの限界がある。つまりは幅が限られていて、病院ベッドの幅なんてたかがしれており……落ちてしまった。
「……った……」

ザァー……っ

勢いよく扉があく。引き戸のそれは、力を加えられたまま、勢いよく横滑りして開いた。
「二美さんっ!」
開いた扉からは勢いよく尚惟(ショウイ)が飛び込んできた。体を起こそうとしていた私と視線が合う。
「大丈夫?!

あっ……とう

この場合は、ベットから落ちてることだよね?
「ご、ごめん。驚いて落ちちゃっ……」
言い終わる前にぎゅっと抱き締められた。
「…………たの」
「うん…、分かった」
ふわっとレモンのようなハーブのような…尚惟の匂いが香ってくる。急に心が緩くほどけていく。尚惟の胸の中にいる、そういう実感が一気に駆け巡った。抱き締め返す手に力がこもる。
「……安心する」
「うん…俺も…」
ああ……良かった。私はあの場から解放された、助かった、もう大丈夫なんだ。
ホロホロと涙が溢れた。
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