13。
文字数 1,555文字
なんだ?! なんだあいつは!誰だ!
先だって出会った女性は二美子さんといって、内科病棟に入院していると言っていた。ワタシは、この間のお礼をしようとお見舞いに来たのだが、病室を訪ねるも、そこにはいなくて。退院していないことを確認したから、どこかにいるはず、と探していたら……
ふと見えたあのパジャマは二美子さんだ。でも……
「一緒にいるのは誰だ?」
二美子さんといっしょにランチルームにいて、なにかを食べている!何を食べてる?そして、なに話してる?
ワタシも話しかけたいけど…………無理だ。
ランチルーム入り口で中を覗いたり、右から左へ行ったり来たり…。これじゃあ不審者じゃないか!
…………出直そう。
ワタシは気持ちを切り替えて、その場を立ち去ろうとした。だいたい、向こうは覚えていないかもしれない。それなのに、ワタシは何で来てしまったんだろうか。
頭の中で、翼希 1号が囁けば、2号が別の意見を発案する。3号が疑問を投げ掛ければ、またそれに別の翼希が答える。
外から見ればなんの変化もないが、実のところ、翼希の脳裏は忙しく考えまくっていた。そんなキャパオーバーになりかけてた時、声をかけられる。
「あれ……」
あ……ん……?
振り返るとそこには見たことのある男がいた。こいつって確か……
「…君は、この間の」
「そうか、じゃあ…やめとくか」
声質が重なる。
「この間の家庭教師っ……」
「やっぱり…。確か翼希 くん。こんなとこで何してんの?」
お前が何でここに?といいたいとこだが、ワタシもそれを問われる状況だと察した。
参った……こんなとこで知ってるヤツに会うなんて思ってなかった。通りかかっただけってのも…ムリがあるよな……。
「ちょ、ちょっと……」
「え?風邪でも引いた?」
「え、あ、ま、まあ……」
病気にされてしまった……まあ、いいか。視線をずらしてこの場を去ろうと、後ずさる。
「ん?でもここって病棟に近いから外来とはちょっと縁遠い場所だよね」
……なんて鋭いんだ。どうでもいいことに引っ掛かるなよ。
「道、間違えちゃって……じゃあ、ワタシはこれで……」
「すみませんっ!気分悪くなったみたいで、来てもらっていいですか?」
すぐ近くを歩いていた看護士が呼び止められた。
「その方、どこにいますか?」
「ランチルームのあそこに座っている女性です。僕、車椅子持ってくるんで」
「分かりました」
にわかにバタつく。目の前が騒がしくなって、鋭い家庭教師の意識もその騒動にそれた。今のうちにこの場を離れようと、体の向きを変えようとした。普段ならすんなりとそうしただろう。けど、今回は違った。
「え……二美子さん……?」
目の前にいたはずの家庭教師の男は、あっという間にランチルームの中へ入っていき、ワタシがさっきまで見つめていた女性のもとへ駆けつけていた。
一瞬、なにも理解できていないワタシの脳みそは、隠れるよう体に指示を出した。わワタシは、慌ただしく出入りする数人をしりめに、近くの購買へ入り、そっと様子を見つめた。何がしたかったのかは自分でも分からない。ただ、頭は混乱していた。
え、どうしたの?何があった?
え、何であいつが二美子さんの名を知ってる?
え、駆け寄るってどう言うこと?
え、どうして看護士が呼ばれた?
え、がオンパレードになっていて、頭の中が酸欠状態だ。最大のなぞは、何でワタシは隠れたのか。
慌ただしくなっていくなか、ワタシは、何人かのギャラリーと同じように、じっと成り行きを見つめていた。
そのうちに、医者が現れ、ストレッチャーにのせられた彼女が、目の前を通りすぎていく。ざわつきは、彼女がいなくなった後は波が引いてくようになくなり、通常の病院内風景となった。ワタシは、そこに立ち尽くしていた。取り残されたように。
先だって出会った女性は二美子さんといって、内科病棟に入院していると言っていた。ワタシは、この間のお礼をしようとお見舞いに来たのだが、病室を訪ねるも、そこにはいなくて。退院していないことを確認したから、どこかにいるはず、と探していたら……
ふと見えたあのパジャマは二美子さんだ。でも……
「一緒にいるのは誰だ?」
二美子さんといっしょにランチルームにいて、なにかを食べている!何を食べてる?そして、なに話してる?
ワタシも話しかけたいけど…………無理だ。
ランチルーム入り口で中を覗いたり、右から左へ行ったり来たり…。これじゃあ不審者じゃないか!
…………出直そう。
ワタシは気持ちを切り替えて、その場を立ち去ろうとした。だいたい、向こうは覚えていないかもしれない。それなのに、ワタシは何で来てしまったんだろうか。
頭の中で、
外から見ればなんの変化もないが、実のところ、翼希の脳裏は忙しく考えまくっていた。そんなキャパオーバーになりかけてた時、声をかけられる。
「あれ……」
あ……ん……?
振り返るとそこには見たことのある男がいた。こいつって確か……
「…君は、この間の」
「そうか、じゃあ…やめとくか」
声質が重なる。
「この間の家庭教師っ……」
「やっぱり…。確か
お前が何でここに?といいたいとこだが、ワタシもそれを問われる状況だと察した。
参った……こんなとこで知ってるヤツに会うなんて思ってなかった。通りかかっただけってのも…ムリがあるよな……。
「ちょ、ちょっと……」
「え?風邪でも引いた?」
「え、あ、ま、まあ……」
病気にされてしまった……まあ、いいか。視線をずらしてこの場を去ろうと、後ずさる。
「ん?でもここって病棟に近いから外来とはちょっと縁遠い場所だよね」
……なんて鋭いんだ。どうでもいいことに引っ掛かるなよ。
「道、間違えちゃって……じゃあ、ワタシはこれで……」
「すみませんっ!気分悪くなったみたいで、来てもらっていいですか?」
すぐ近くを歩いていた看護士が呼び止められた。
「その方、どこにいますか?」
「ランチルームのあそこに座っている女性です。僕、車椅子持ってくるんで」
「分かりました」
にわかにバタつく。目の前が騒がしくなって、鋭い家庭教師の意識もその騒動にそれた。今のうちにこの場を離れようと、体の向きを変えようとした。普段ならすんなりとそうしただろう。けど、今回は違った。
「え……二美子さん……?」
目の前にいたはずの家庭教師の男は、あっという間にランチルームの中へ入っていき、ワタシがさっきまで見つめていた女性のもとへ駆けつけていた。
一瞬、なにも理解できていないワタシの脳みそは、隠れるよう体に指示を出した。わワタシは、慌ただしく出入りする数人をしりめに、近くの購買へ入り、そっと様子を見つめた。何がしたかったのかは自分でも分からない。ただ、頭は混乱していた。
え、どうしたの?何があった?
え、何であいつが二美子さんの名を知ってる?
え、駆け寄るってどう言うこと?
え、どうして看護士が呼ばれた?
え、がオンパレードになっていて、頭の中が酸欠状態だ。最大のなぞは、何でワタシは隠れたのか。
慌ただしくなっていくなか、ワタシは、何人かのギャラリーと同じように、じっと成り行きを見つめていた。
そのうちに、医者が現れ、ストレッチャーにのせられた彼女が、目の前を通りすぎていく。ざわつきは、彼女がいなくなった後は波が引いてくようになくなり、通常の病院内風景となった。ワタシは、そこに立ち尽くしていた。取り残されたように。
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