part 13 妹の手 親友の思惑
文字数 741文字
剣崎の形相が見る見る険しいものになった。若い客の、つまらない物売りのような言い立てが気に障っただけとは、とても思えぬ激しさだった。
「これは
掴みかからんばかりの剣幕を、客はひんやりと硬い声で遮る。
「それは私が生まれた時に包まれていた卵殻様の膜の一部です。はじめから、人間じゃないんですよ、私たちは」
こん、と薄氷を破るつぶての鋭さで、その声は染み渡ってあたりを痺れさせ、しばらく二人の動きも言葉も、鏡像対称に封じられて止まった。
「私たち、と言ったな」
沈黙を破ったのは剣崎の方だった。
「ええ。私は、親を探しにここへ来ました。あなた方三人の誰かだろうと見当をつけて。
「球が、あんたの親だと?」
「まだ、そうとまでは。ただ、報告すべき相手は、ただ一人自分の使命を記憶している、球さんだとわかったので」
客の声には、誇ると同時に怯えるとでもいう双極の揺らぎがある。背負った重荷を威勢よく放り投げておきながら、いつでも担ぎ上げて走れるよう、しきりと気にする目配りにも似たすわりの悪さが。剣崎の方は、その余波さえ寄せつけぬ鷹揚さで瞑目すると、再び声を閉ざし、無表情を保っていたが、やがて薄く開いた瞼から、粘性の網のような鋭い視線を投げた。